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こんにちは、まつりさんです
次回から、このゴミみたいな前置きなくします。言いたいことがない限り。
行ってらっしゃいはつけようか迷っています。
いないとは思うが、前置きほしいよ!って方はぜひコメントしていただければ(アトストのほうで!)
行ってらっしゃい😎😎😎
タヨキミメンバーがキビアイアジトに侵入する、少し前。
「…………ねえ、もう、嫌だ………………」
いつもの玉座に座っているユヅルが、今日はずいぶんとみずぼらしく見えた。泣きそうな声で、両手で顔を覆う。
「イヌイも、ハルカも…………俺を見捨てた。部下になるって、守るって言ってくれたのは、あっちなのに………どうすればいいの、俺、なにもわからない………………」
ハルカとイヌイがタヨキミに取り込まれ、キビアイは今までにない危機に陥っていた。
数ヶ月前まで十数人の少年少女で賑わっていたこの会議室も、今となっては、ユヅルとルナの二人だけ。
「……………ムニカの自殺を皮切りに、キビアイは壊れていった。セツナが救われるところまでは良かったんだ……そしてハルカ。あいつが、キビアイを完全に崩壊させた。まんまとハメられたんだ、あの腹黒野郎に」
腹を立てるユヅルに向かい、ルナが疲れたように言った。
「……………いいから、落ち着けって。シノを行かせたよ……気休め程度にしか、ならないだろうけどな」
口調こそいつも通りだが、どこか動揺しているような雰囲気がある。
ユヅルはルナを一瞥すると、下を向いて顔をしかめた。
「…………ねえ、ルナ。ルナのその行動は…………俺のため、なんだよね?ルナが俺を裏切ったら、俺、もう…………」
突然の問いに、ルナは返答に困る。
「…………何が言いたいかは知らねえが……ボスのためとか、考えてねえよ。やりたいことやって、巡りめぐってボスの利益になったなら、そりゃ万々歳だがな」
「そうなの?そうなの、じゃあ…………もっと、俺のために行動してよ」
「は?」
「ルナ、いつもいつも、あの子ばっかりじゃん。おかしいよ、俺はあの子より、ルナのこと、愛して……」
急に様子がおかしくなったユヅルをなだめつつ、ルナは苦笑した。
「おいおい、落ち着けって。あの子って誰のこと言ってんだ?俺のこと愛してる人間なんて、いてたまるかっつうの」
ユヅルは一呼吸置いてから、幼子のように、声をあげて泣きはじめる。ルナがぎょっとしたのもつかの間、ユヅルは大きく息を吸って、小さな声で言った。
「…………────……、ルナ、好きでしょ。おかしいよ、ルナの最愛は俺だよね?」
その名前を聞いたとたん、ルナは表情を変えた。細い目がぱっちりと開き、まるでゴミでも見るかのような眼で、ユヅルを睨む。
「その名前…………俺の前で、出すんじゃねえよ」
ルナの圧に、ユヅルはまた、肩を震わせて泣きはじめた。
それも見ぬかのように、ルナはさらに畳み掛ける。
「気ぃでもおかしくなったんか?マジでなに考えてんの、ボス、お前今日おかしいよ。なんで泣く?長だろ、お前がどうにかしろよ…………タヨキミがなんだ?それこそボスなら、タヨキミぐらい余裕で潰せるだろぉ?そいつから俺を奪った時のように、何もかも奪って見せろよ!なあ!」
普段の温厚な姿と違い、怒りに身を任せて発言する彼の姿は、どこかトオンに対するハルカを彷彿とさせた。
「なんで…………ッ、なんでそんなこと言うの!!なんでそんなに怒ってるの!?うぅう…………怖いよ、やめてよぉお…………!」
「泣いたら許されるとでも思ってんのか!俺は、ボスのために…………」
ルナが言いかけたとたん、部屋の扉がばんっ、と開いた。
「ボス、ルナ…………っ!」
ソラだ。走ってきたのか、肩で息をしている。
ソラは二人の顔を見て、ぎょっとした。号泣して目が赤いユヅルに、いつもと雰囲気の違うルナ……あのルナが、ユヅルを泣かせたのか。
事情を訊くべきか迷ったが、ただごとではなさそうなので、取り敢えずルナに訊いてみる。
「そのDV彼氏みてぇな面やめろよ。なにか、あったのか?」
ルナはソラの心配に気がつくと、いつもの調子でけろっと笑った。
「なぁに、なんもねぇよ。ボス、ハルカもイヌイもいなくなっちまって、寂しくて泣いちまっただけらしい」
絶対に嘘だ。でも今は、二人の事情を掘り下げている暇はない。
「そうだ……ボス、ルナ。大変なことになって………………」
「そんなに急いで、なにかあったの?」
鼻をすすりながら訊くユヅルに、ソラは深刻そうな顔で頷いた。
「この、アジトに……タヨキミが、侵入してきたんです」
キビアイアジト、3階。
これでもかと言うほど、広い廊下。シャンデリアにレッドカーペットと装飾はかわらないものの、下の階よりも古くて、今にも崩壊しそうな雰囲気がある。
長い廊下の先にある、ひとつのエレベーター。それを眺めながらぼーっとしていると、急に、フォンっとエレベーターの扉が開いた。
一瞬タヨキミかと焦ったが、降りてきたソラの顔を見て、セイサはほっとする。
「…………報告してきたよ」
「どうだったの?ボスの様子は」
「いや、それが泣いててさ。ルナ、めっちゃ怒ってた」
そうか…………それくらいの感想しか、思い浮かばなかった。
セイサはユヅルに向けて、並々ならぬ信仰心を抱いている。
あの日、ユヅルは、セイサのことを救ってくれた。
いけないことだって、人を殺めるのは犯罪だって、じゅうぶんわかっている。
それでもセイサの心の中にはいつだってユヅルがいて、そうすると、善悪の判断がつかなくなってしまう。
ユヅルに尽くすことは、自分を救うこと。いつまでも子供部屋に籠ったままのしょうもない大人が、唯一、自分を騙せる方法。
「───ルナ、寂しいだろうな」
「……どうして?」
「そりゃあ……自分と同じくらい落ちこぼれてた奴らが、自分だけを残して、こぞって光に救われたんだぞ。自分を騙すために光を見ぬふりして、やっとの思いで正しいと錯覚していたのに、みんな悪夢から醒めていく。もう善悪の判断くらい当たり前にできる年齢なのに、どうも可哀想だ」
ソラのこういう話が、セイサは嫌いだ。正しくて、悔しい。
ソラはわかっているんだ。自分たちがやっていることの愚かさ、しょうもなさ。わかっていて、こんな皮肉を言う。
セイサよりも、一歳若いのに。だいぶ大人びていて…………いや、セイサが、子供らしいだけか。
ソラの横顔を眺めていると、急に、エレベーターが動き始めた。
「…………来たか、タヨキミ」
「ええ、そうね」
今、この感情を抱えたまま戦うだなんて、あまりに虚しすぎる。
この人生の中、タヨキミメンバーと直接戦うのは、きっと最初で最後だ。
「オレたちも…………救われんのかな」
「……縁起でもないこと、言わないでちょうだい」
「はいはい。見せてやろうぜ、三十路の力」
自虐風に言うソラが、いつもより少しだけ、子供っぽく見える。
フォン、とエレベーターが開いて───三人の少女が、顔を出した。
一人は勇敢な顔で、一人は賢そうな顔で、一人は心配そうな顔。
ああ………この子たちと、戦うのか。
頭の悪い大人のせいで、こんなにいい子たちの人生が、潰されてしまうのか。
自分を殺そうとしてくる奴らがいて、そいつらの本拠地に乗り込んだというこの状況が、この子たちの心にどれだけの負荷をかけるのだろうか。辛いだろうに、逃げ出したいだろうに。
そんな眼をしていると、ソラが呟く。
「おい、セイサ。あいつらを、ちゃんと見ろ」
言われるがまま、見た。
「なによ。ただの子供三人だわ」
「自分らの青春を捨ててまで、オレたちを救おうとしてくれてるんだぞ」
言われたら、気がついた。
勝手に哀れんでいたが、彼女たちは、真剣にこちらを向いている。
憂鬱だとも、心配だとも、辛いとも思っていない。
(ただひとつ…………わたしたちを、正しい道に、引き戻すため)
───とっても、くだらない。
「とことん、潰すわよ」
この子たちは正しい。
そして、それが無性にムカついた。
三人の中の一人はエレベーターに戻り、その場に二人が残る。
勇敢な子と、賢そうな子だ。
二人は少しだけ耳打ちしあった後、セイサたちの方向を向いて、笑った。
「オッサンとオバサン、おとなしくついてきな」
「それがいいと思いますね」
まだそんな年じゃないよ。
あぁ、本当にムカつく。
カエデ、ユズキと別れてから、チェリーは無表情で、エレベーターの扉を見つめていた。
胸が痛い。ソーユとツキミは無事だろうか。カエデと、ユズキも…………。
そして、チェリー1人で大丈夫なのだろうか。
この先に待っているのは、ユヅルと、ルナ。
勝てるのだろうか。救えるのだろうか。
エレベーターが止まった。緊張のせいで、長かったのか短かったのか、よくわからない。
エレベーターが開くと、がらんとした空間が広がった。
一定の距離ごとに、十字架に羽をはやしたような、気味の悪いオブジェが飾られている。
そしてその廊下の先には、大きな扉があった。
扉の先にあるものを想像して、鼓動が高鳴る。楽しみなような、憂鬱なような、変な気持ちだ。
そのわりに取っ手を掴もうとする手が震えるのは、本当はすごく怖いのが、心にバレてしまっているからだろうか。
自分の行動は、きっと、間違っている。
諦めきれないタラタラな未練も、どうしようもない愛情も、どこか吐き気がする憎しみも、ハルカには筒抜けだった。
タヨキミはいい場所だ。みんな優しくて、でもどこか怖くて切なくて。
愛情のなかで、常に憎悪が渦巻いてる。安定しているようで、どこか不安定。
剣山に刺さってこそ、花は、美しく咲けるんだ。
私はその残酷な針を、うまく隠せていただろうか。美しく、咲けていただろうか。
重い扉を開けて。その先には急に入ってきたチェリーを見て、唖然とするユヅルとルナがいる。
その二人を見てから、チェリーはいたって冷静に、笑って言い放った。
「…………久しぶりだね、兄さん」
それを聞いて、いつもより掠れた声で、ルナは目を大きく開ける。
「……………チェリー……?お前、チェリーか?」
そんなルナを見て、ユヅルは声を張った。
「おい、ル…………」
けれどルナの顔を見て、とっさに口をつぐむ。
「お前…………何しに、来た?」
怒りでも、憎しみでもない。その表情は、呆れだった。
「何しに、って。決まってる」
何年ぶりだろうか。
随分と変わり果ててしまった。彼の姿も、関係性も、立場も、なにもかも。
それでも……兄さんを愛し、兄さんに愛されていた、昔のままの私なら。
「大好きな…………大好きな兄さんに、会いに来たんだよ」
きっと、戻れるはずなんだ。
あの頃の私たちに。
その頃、キビアイアジト一階。
「…………はぁ、はっ……」
肩で息をするソーユに、ツキミが苛ついたような声で言った。
「もう体力切れか!?はやいねん、バカソーユ!!」
シノが残りのキビアイメンバーの中で一番弱いだなんて、よく言ったものだ。
タヨキミの武術最強と頭脳最強……最強であるはずのこのコンビが、その最弱の少年に、簡単に押されている。
現状、ソーユには、人並みしか体力がない。時間を止められながら長時間剣を避けるだなんて、到底できない。
そしてツキミは正面衝突派なため、時間を操れるシノとは、絶望的に相性が悪かった。
もしも正面からぶつかっていれば、ツキミは双子にも勝っていただろう。
客観的に見れば、敗因は明確。しかしこんな原因解析をする間もない二人は、今、とてつもなく苛ついていた。
(なんでやねん、このへなちょこ野郎…………!)
(ぼくにそんな体力、あるわけ…………バカはどっちだよっ)
(そもそもソーユに体力があれば、こんな状況に陥ってへんやん…………)
(ツキミさんに敵の先を読む賢さがあれば、こんな状況になってないのにぃ…………あぁ、)
「「マジ、足引っ張んなよ!!」」
そんな二人を見て、シノは面白そうに笑う。
「息ぴったりだな。戦闘においては、全然そんなことないが」
二人は顔を見合わせ、眉間にしわを寄せた。
ソーユは、いつもそうだ。
昔から。恵まれた環境にいるくせに、いつも疲れきったような顔して。
親に愛されてることの素晴らしさ、親が教育してくれることの素晴らしさを、コイツはなんもわかってへん。
人の苦しみもわからずに、見せびらかすように自慢して。
ツキミさん、ツキミさんって。煽ってんのか。
何も語るな。お前の分析はいつもうすっぺらくて、気味が悪い。
貼り付けたようなそのぶりっ子も、その裏に隠れた辛そうな顔も、何も見せないでくれ。
ツキミさんは、いつもそうだ。
昔から。もっと愛がほしいだ、もっと構ってだ。
親がなに?ツキミさんはいつも自由で、じゅうぶんなほど、親に愛されてるじゃないか。
人の苦しみもわからずに、フラフラ遊んで、フラフラ帰って。
ツキミさんだなんて、さん付けで呼ぶ価値もないよ。
何も語るな。彼女いっぱいつくっておきながら、愛がほしいだなんて、アホ抜かして。
何が辛いの?何が苦しいの?全然わからない。なんで、そんな顔をするの?
そうだ。
ソーユなんて、
ツキミさんなんて、
大嫌いだ。
続く
更新遅くなってしまい、誠に申し訳ありませんでした!
去年唱えた目標のなかに「六月までの完結」というのがあったのですが、その六月ももう終わってしまいますね。ごめんって。
ルナはチェリーのお兄さんでした。
これで、今までの伏線という伏線が、毛穴シート並みに回収されます。
ユヅルさんの言う「あの子」、ルナの言う「あいつ」はチェリーちゃんのことだったのかな?
だとしたら、五話くらいの「会えるだけ羨ましい」みたいな旨のルナの台詞も気になりますね。
チェリーちゃん、会えてるじゃん。名前出したらキレるし、そのくせ前にアジトに侵入したときは心配そうだったし。
「そいつから俺を奪った時のように」とか「あの頃の私たちに」とか。なにがあったの君たち。
考察してね。
セイサとソラの会話、好きなんだよな。。
おとなって感じ。
何も言わないです、考察してね。
ツキミソーユ!!
二人がお互いのこと、本当に嫌いなのはわかった。最後のは過去に関することかな、、、?
二人はなんで、そんなに互いのこと忌み嫌っているのか。それでもなんで、一緒に行動するのか。
考察してね(なんでもかんでも)
次もすぐ更新しようと、思ってはいます!
それでは!!感想待ってます!!