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冷凍食品
【お酒】
🦈「……よし」
こさめは、目の前のグラスをじっと見つめた。
🍵「ほんとに飲むの?」
向かいで、すちが少し心配そうに眉を寄せる。
🦈「うん。今日は、ちょっと……挑戦したくて」
🍵「珍しいね。普段、飲まないのに」
🦈「……たまにはいいでしょ?」
にこっと笑ってみせる。
少しだけ、無理してる笑顔。
すちは一瞬だけ何か言いたそうにしたけど、結局、
🍵「……無理しないでね」
それだけ言って、グラスを軽く持ち上げた。
🍵「乾杯」
🦈「かんぱーい」
軽く触れたグラスが、小さく音を立てる。
――その数分後。
🦈「すちぃ……」
🍵「……うん?」
🦈「なんかね……ふわふわする……」
🍵「早いって」
すちは思わずため息をついた。
🍵「だから言ったじゃん、無理しないでって」
🦈「だってぇ……」
こさめはテーブルに頬をつけて、じとっとした目で見上げる。
🦈「今日のこしゃ、強くなりたかったの……」
🍵「……強く?」
🦈「うん……」
ゆらゆらと揺れる声。
🦈「大胆になりたくて……」
その言葉に、すちは少しだけ黙った。
🍵「……なんで」
小さく問いかける。
こさめは少し考えるように目を細めて――
次の瞬間、ぐしゃっと顔を歪めた。
🦈「……うぅ……」
🍵「え?」
🦈「むり……むりぃ……」
ぽろぽろ、と。
涙が、こぼれた。
🍵「ちょ、え、なんで泣くの!?」
🦈「わかんない……!」
🍵「わかんないの!?」
完全にパニックになりながら、すちは慌ててハンカチを差し出す。
🍵「ほら、これ……」
🦈「しゅっちぃ……やさしい……」
🍵「今それ言ってる場合じゃないでしょ」
涙を拭きながら、こさめはさらにぐずぐずになる。
🦈「こしゃねぇ……」
🍵「うん」
🦈「ほんとはねぇ……」
すちは、自然と少しだけ身を乗り出した。
けど――
🦈「すちがねぇ……」
🍵「……なに」
🦈「すきでぇ……」
🍵「……へ?」
思考が止まる。
その一瞬の隙に、
🦈「でもぉ……」
こさめはまた泣き出す。
🦈「すきって言えないの……」
🍵「……」
🦈「だから、お酒飲んだら言えるかなって……思ったのにぃ……」
言葉が、途切れ途切れになる。
🦈「こわいの……」
🍵「……何が」
🦈「すちが……困る顔するの……」
その一言に、胸がぎゅっと締まる。
すちはしばらく何も言えなかった。
代わりに、そっと――
こさめの頭を撫でる。
🍵「……もういいから」
🦈「……うぅ……」
🍵「今日は、帰ろ」
🦈「やだ……もうちょっと一緒……」
🍵「一緒だから」
落ち着いた声で言うと、こさめは少しだけ安心したように目を閉じた。
🦈「……ほんと?」
🍵「うん」
🦈「……すち、にげない?」
🍵「逃げないよ」
小さく笑って、そう答える。
🦈「……なら、いい……」
そのまま――
すぅ、と。
こさめは、すちの肩に寄りかかって眠ってしまった。
🍵「……寝るの早すぎ」
苦笑しながらも、起こさないようにそっと支える。
静かな夜だった。
数日後。
🦈「……ねぇ、すち」
🍵「ん?」
こさめが、少しだけ言いづらそうに口を開いた。
🦈「この前のことなんだけど……」
🍵「……うん」
🦈「こさめ、なんであんなことしたの?」
その言葉に、すちは一瞬だけ目を見開く。
🍵「……覚えてないの?」
🦈「うん。途中から全然……」
少し恥ずかしそうに笑うこさめ。
🦈「なんか迷惑かけた気はするんだけど……」
🍵「……」
すちは、ほんの少しだけ視線を逸らした。
🍵「……まあ、ちょっと泣いてたくらい」
🦈「え、うそ。最悪……」
🍵「ほんとに」
🦈「……ごめん」
しゅんとするこさめに、
🍵「別にいいよ」
すちはあっさり返す。
少しの沈黙。
こさめは、またぽつりと聞く。
🦈「……で、なんで飲んだんだろ」
🍵「……」
すちは、少しだけ迷ってから――
🍵「……さあ」
そう、答えた。
こさめは「えー」と不満そうな声を出す。
🦈「気になるのに」
🍵「自分で思い出しなよ」
🦈「思い出せないから聞いてるのにー」
拗ねたように言いながら、でもどこか楽しそうで。
その横顔を見て、すちは小さく息を吐く。
(……言えるわけない)
あんなふうに、泣きながら。
まっすぐに。
「すき」なんて。
🦈「……ねぇ、すっちー」
🍵「なに」
🦈「今度また飲んでみよっかな」
🍵「やめときなよ」
即答。
🦈「えーなんで?」
🍵「……大変だから」
🦈「こさが?」
🍵「……うん」
少しだけ、間を置いて。
🍵「……あと、俺が」
🦈「……?」
こさめは首をかしげる。
その意味は、まだ分からないまま。
夕焼けが、二人の影を長く伸ばしていた。
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