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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第200話:主の限界言い訳(新たな陣地運営の始まり)
数兆円の祝儀と一兆円の胡蝶蘭、そしてシロ様の肉球スタンプが世界を救った、人類史上最もバグった卒業式。
その狂騒と感動の式典を無事に終え、俺たちはポカポカとした春の陽射しの中、限界集落ののどかな田舎道を歩いていた。
吹き抜ける春風が、小春ちゃんの胸についたコサージュと、少しだけ大人びた制服のスカートを優しく揺らす。
道端には雪解け水がキラキラと光り、名もなき春の野花が小さな蕾をほころばせていた。
俺たちの先頭を歩くのは、二足歩行モードから四足歩行の省エネモードに戻り、背中にキタキツネの兄弟(コン吉とコン次郎)を乗せてのっそりと歩く巨大ヒグマ。
そして、その隣を歩く小春ちゃんの腕の中には、純白の神獣シロ様が抱かれ、心地よさそうに目を細めて喉を鳴らしていた。
サファイアブルーと琥珀色のオッドアイが、春の青空を映し出して宝石のように輝いている。
ジンバルに固定されたスマホの画面の向こう側では、五千万人のリスナーが接続する生配信のチャット欄が、このエモーショナルすぎる『卒業式の帰り道』というシチュエーションに、限界突破の狂乱を見せていた。
ピコーン! ピコーン! ピコーン!
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)無限連発』
『”The perfect happy ending road!! Akiya, Koharu! I will pave this entire country road with pure diamonds to celebrate your new life together! I am wiring 10 trillion yen right now!“(完璧なハッピーエンドの道だ!! アキヤ、小春! 二人の新生活を祝して、この田舎道すべてを純粋なダイヤモンドで舗装してやろう! 今すぐ十兆円を送金する!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)無限連発』
『”The ultimate joint venture has begun! Walking home together is the highest proof of asset integration! I will issue a 10 trillion yen unlimited black card for your household expenses!“(究極のジョイント・ベンチャーが始まった! 一緒に歩いて帰ることは資産統合の最高の証明だ! 君たちの生活費として十兆円の上限無制限ブラックカードを発行しよう!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)無限連発』
『”Nooooo!! It’s like the final scene of a romantic movie!! I’m so jealous but it’s too beautiful!! I’m sending 20 trillion yen to buy the copyright of this springtime walk!“(いやああああ!! まるで恋愛映画のラストシーンじゃないの!! 嫉妬で狂いそうだけど美しすぎるわ!! この春の散歩の著作権を買い取るために二十兆円を送るわ!!!)』
総額数十兆円規模の電子マネー(赤スパ)が、春の陽射しをかき消すほどの強烈な極彩色弾幕となって画面を完全に埋め尽くした。
国家予算レベルの新生活準備金が乱れ飛び、スマホの通知音が春の野鳥のさえずりを完全にかき消しているド真ん中で。
俺――アキヤは、漆黒のスーツ(インナーはOD色のシャツ)というフォーマル装備のまま歩きながら、ストイックに薄型の特製タッパーを開けていた。
中に入っているのは、完璧な水加減でストイックに炊き上げられた『桜の塩漬け玄米おにぎり』と、自家製の『大豆ミートと十勝産よもぎの三色団子風』である。
俺は、数十兆円の赤スパのまばゆい光と、春のうららかな空気に包まれながら、一切の感情を排した元・社畜の無表情で、大豆ミートを玄米おにぎりの上に乗せ、淡々と咀嚼し始めた。
バリッ、ゴリッ、モグモグ……。
(……ふむ。春のデトックス効果を持つよもぎの成分と、大豆ミートの力強い植物性タンパク質。式典終了後の急激な副交感神経の優位化(気の緩み)を防ぎ、己の自律神経を強制的に戦闘状態に引き戻す究極の兵站食だな)
己の肉体という名のロジスティクスを完璧に維持しながら、俺は水筒の熱いほうじ茶で喉を潤した。
隣を歩く小春ちゃんは、抱っこしているシロ様の柔らかな毛並みに頬を擦り寄せながら、どこか緊張したような、それでいて嬉しそうな足取りで歩いている。
明日からはもう、彼女は高校生ではない。
実家の農業を手伝いながら、俺の専属アシスタントとして、この限界集落の古民家で共に多くの時間を過ごすことになるのだ。
それは実質的な『同棲一歩手前』であり、新しい生活の幕開けである。
「……小春ちゃん」
俺は前を向いたまま、少しだけ不器用に口を開いた。
「明日から、これからの陣地運営は今まで以上に忙しくなるぞ。アシスタントとして、覚悟はできているな」
俺の言葉に、小春ちゃんはビクッと肩を揺らし、そして顔を真っ赤に染めながら、嬉しそうにふわりと微笑んだ。
「はいっ! お兄さん……これからは、ずっとそばで支えますからね!」
春風に舞う桜のような、純度百パーセントの乙女の笑顔。
五千万人のリスナーが「うおおおおお!!」「尊すぎる!!」と大発狂する中、俺はカメラと小春ちゃんに向かってキリッとした真顔を向けた。
いつもの『限界言い訳タイム』の発動である。
「小春ちゃん、力強い労働宣言ご苦労。そして画面の向こうで、ただの業務開始連絡に巨額の資本を投下して新婚生活だと騒いでいる皆さまも、全員冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『記念すべき第二百話でも、エモい雰囲気の中で絶対にブレない男!!!』
『主の限界言い訳タイム・新生活の始まり完全スルー編ww』
『さあ、この最高に尊い同棲一歩手前のフラグをどうやって需品科の業務にするつもりだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは甘酸っぱい新生活の始まりでも、同棲に向けたフラグでもありません。卒業とは感傷的な人生の節目などではなく、単なる『兵站(ロジスティクス)基地の移動』です。彼女の主たる活動拠点が教育機関から我が指揮所(古民家)へとシフトすることで、ヒューマンリソースの供給ラインが完全に統合され、無駄な移動コストが削減される。これからの陣地運営が忙しくなるというのは、二つのサプライチェーン(農業と配信業)を並行稼働させるための『ハイブリッド型・業務最適化プロセス』が実行フェーズに移行するからです。ええ、すべては互いのリソースを最大限に活用するための、冷徹な『戦略的拠点統合』と『アウトソーシング契約の本格始動』ですね。私がよもぎ団子風大豆ミートを噛み締めているのも、春の感傷という幻覚に惑わされず、確固たる指揮系統を維持するための、需品科としての徹底した『メンタル防壁構築訓練』です」
「んなわけあるかあああ!!!」
ドガァァァァァンッ!!!!
春ののどかな田舎道に、装甲車を正面から叩き割ったような凄まじい破砕音が響き渡った。
小春ちゃんが、左腕でシロ様を優しく抱えたまま、先ほどシロ様の肉球スタンプが押された本物の卒業証書を収納している『特注・卒業証書収納用の黒い筒(高密度カーボン樹脂製・対装甲鈍器仕様、重量約二キロ)』を空いた右手一本で大上段に構え、俺の頭頂部に向かってパーフェクトなフルスイングを見舞ったのだ。
二キロの硬質なカーボン樹脂が肉体に直撃した、鐘を突いたような恐ろしい大爆音が、十勝の春の空へと虚しく響き渡る。
「ただの戦略的拠点統合で、お兄さんがそんなに耳を真っ赤にして、目も合わせられないくらい照れくさそうに『忙しくなるぞ』なんて言うわけないでしょうが!! どう見たって、明日から私がいっぱい家に来るのが嬉しくてたまらない、不器用すぎるツンデレの歓迎の言葉でしょうが!! 私たちの新しい春の始まりを、冷たい兵站基地の移動とかアウトソーシング契約とかいうお役所言葉で粉砕するんじゃないわよ!!」
『小春ちゃんのキレキレ高密度黒い筒スマッシュ炸裂www(音が完全に除夜の鐘ww)』
『兵站基地の移動(ただの同棲一歩手前のイチャイチャ)』
『戦略的拠点統合(耳まで真っ赤にしてる限界ツンデレおじさん)』
『適応力バグおじさん、ついに第二百話の最高のエモい春の始まりをサプライチェーンの統合に分類しやがったww』
『言い訳が理不尽すぎて、感動してたのに腹筋が完全に崩壊したわww最高すぎる!!』
俺の理不尽極まりないロジスティクス的な限界言い訳と、小春ちゃんの容赦ない対装甲卒業証書ツッコミに、五千万人の視聴者たちは感動の涙から一転、大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ほんと、記念すべき日でも黒い筒で叩かれないと素直になれない、特大サイズの鈍感下僕ね)』
小春ちゃんの腕の中から、純白の神獣シロ様が呆れたように俺を見上げ、その美しいオッドアイの瞳を優しく細めてゴロゴロと喉を鳴らした。
サファイアブルーと琥珀色の二色の瞳は、数十兆円の電子マネーの輝きよりも遥かに眩しく、春の陽射しの中で、まるで世界中のどんな宝石よりも温かく美しく輝いていた。
前を歩く巨大ヒグマも「グゥ〜♪」と、小春ちゃんのツッコミを見届けて満足そうに笑い、キツネたちも「キュンキュン!」と新しい家族の門出を祝うように跳ね回っている。
どんなに莫大な金が動こうとも、彼らにとっては、このカオスで賑やかで、誰よりも自分を愛してくれる家族と一緒に歩く田舎道こそが、最高の宝物なのだ。
「……まぁ、理由はどうあれ。我が陣地に最強の専属アシスタントが合流し、これからのロジスティクスが世界で一番完璧で、温かい形で維持されていくのなら、作戦としては完全勝利だ」
俺はカーボンの筒の凄まじい衝撃で痺れた頭をさすりながら苦笑し、春の風が吹き抜ける田舎道で、タッパーの玄米おにぎりと大豆ミートをゆっくりと噛み締めた。
激務に潰されて逃げ込んできた、この限界集落。
最初は一人で静かに暮らすための隠れ家(シェルター)だったはずが、今では世界一美しいオッドアイの神獣と、数十兆円を投げてくる大富豪たち、そして最強のモフモフ軍団と、黒い筒を振りかぶる専属アシスタント(実質的な嫁)に囲まれた、世界一バグっていて温かい『絶対の聖域』になってしまった。
神獣の魅せる圧倒的な奇跡と、元需品科のブレない大豆ミート咀嚼、および兵站基地移動の限界屁理屈。
最強の家族たちと共に歩く限界スローライフの新しい春は、鈍器のような筒の快音と大爆笑に包まれながら、明日からの輝かしい日常という名の未来へ向かって、どこまでも力強く、そして限りなく幸せに続いていくのだった。
コメント
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寺島あおいです🌷 第200話、おめでとうございます! いやもう、卒業式の帰り道から始まるこのエピソード、完璧でしたね。アキヤさんが「戦略的拠点統合」とか言い出した瞬間、思わず声出して笑っちゃいました。小春ちゃんの黒い筒スマッシュの快音が脳内で再生される…! それでも最後には「世界一バグっていて温かい絶対の聖域」という言葉にじんわり来ました。シロ様のオッドアイの美しさも相まって、本当に幸せな空気に包まれた回でした。