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まだまだ新入りのダレイは特に大きな仕事を担当する訳ではなく
情報を管理する仕事が多かった
その時のダレイは仕事へのやりがいは感じていたものの、周りの交流は全くなく,事務所の中でも一目浮いていた
それも……入校式に問題を起こした新入りとしての__
キーボードに指を走らせながら、
ダレイは今日の仕事を終える
時刻は夜の8時頃…周りより早めに仕事を終えたダレイは無言で席を立つとそのまま廊下へと歩いていった
その様子をじっっと睨みつけるように見るのはノアだった
廊下に設置された自動販売機で缶コーヒーを買うとその場で缶を開け、中身を飲む
そんなダレイの横をコツコツ…と歩きながら近付く人がいた
「ダレイ、仕事は慣れたか?」
ダレイの上司だ。
入校式にダレイとノアを叱り…今でも面倒を見てくれている人
「はい,まだまだですが。」
「いや、社の中でもお前はよく働く方だ」
ダレイは缶コーヒーをもう一つ買うと、女上司に差し出す
しかし女性は手に持っていたコーヒーの残りをダレイに見せる
「気持ちだけで有難いわ、もし飲まないのであればノアにでもあげなさい」
「……あいつにですか…?」
「あー見えて、あなたと同じくらい優秀なのよ」
「……」
「…あー、、終わらねー、、」
椅子に座りながら腕を伸ばす
ノアの周りには人は居なかった。
(よくこんなの一日で終わらせられるよな……)
そんなノアの机の上に
ひとつの缶コーヒーが置かれた
「……!お前…」
「間違えて多く買ってしまったんだ。それに、残ってるのがお前ぐらいだからな」
「ブラックかよ…」
ダレイがいつも飲んでるコーヒーはブラックだ
真っ黒いパッケージの缶コーヒーを見てノアは眉をひそめた
「なんだお前……ブラック飲めないのか」
ダレイは自分が開けたもう1つの缶コーヒーを見せつけるかのように飲む
「は?普段飲まねーだけだ」
缶を開け、ダレイの挑発に釣られるかのようにノアもコーヒーを飲んだ
ダレイはノアの机に目をやる
パソコンには予定表が丁重に記録されていたのだ
「これもお前の仕事か?」
「……見るなよ」
しばらくの間があったが、ノアはため息をついて話を戻した
「こういうのが得意なんだ」
「態度と全く違って…マメなんだな」
「バカにするなよ。お前に負けたくないだけだ」
ノアはハッ……と喉を詰まらせる
疲れもあったノアはデスクに顔をつけ情けない声を上げる
「もうヤダ」
「ふむ…お前はよく分からないな」
「ムカつく……」
「はぁ…終わらないようなら手伝ってやる…」
「余計なお世話だ。誰がお前の助けなんか…」
そんな言葉を無視しながらダレイはノアの横の席に座る
その態度にノアは諦めたようにため息をまたひとつ吐いた
「……」
パソコンのキーボード音だけが部屋に響く。
お互いコーヒーを飲みながらパソコンの画面を見つめる
「……苦い」
「…そうか」
「次からはミルク買ってこいよ」
「たまたま買ってしまっただけだ…今後も仲良くなる気もサラサラない」
「あ〜そーお?……あんた友達いない感じ?」
「仕事が優先だ」
「お前…そんなんで部下持つ時に変なこと教えるなよ?」
「お前が言うな」
ダレイがノアの仕事を見直すと、
普段やらなくていい内容までも精密に詰められていた
(…優秀……なのは本当なのか)
欠伸をしながら残りの仕事を終わらせるノアをダレイは横目で見つめた
課長に言われた言葉が、脳内で繰り返された
__仕事上,仲間との交流は何より大切だ。貴方にとっての相手が,もしかしたら__
仕事を終えたダレイ、ノアは事務所から外へ出た
ノアは何も言わずに、そのまま歩き去っていく…
意を決したダレイはノアに声をかけた
「ノアこの後時間あるか?」
ピタリと動きを止め
ゆっくり振り返りダレイを見た
その目は隠すことなく面倒くさそうな目だったのだ
2人が来たのは近くの居酒屋だった
どちらも通勤は歩きの為、お酒は飲んでも大丈夫だ
「ビール2つ」
ダレイが席につくとノアも隣で席に着く
「……なんのつもり?仲良くなる気は無いんだよな?」
「あぁ…当然だ。お前とは初日からやらかしてるからな」
「あれは俺の親切心をお前が弾いたんだろ?」
ビールが目の前に置かれ、それぞれメニューを注文した
ダレイがビールを持ち、そのまま口に運ぶ
ノアもゆっくりと飲み始めた
「……ビールなんて普段飲まない」
「じゃなんで誘ったんだよ」
飲み慣れているのか、ノアのビールはほとんど無くなっていた
負けじとダレイもビールを飲む
その様子をノアは面白そうに微笑む
「俺と戦う気か?」
「…構わん、だが勝つのは俺だ」
「あーそう?、おっちゃん、生1つ!」
「こっちもビールひとつください」
2人はまるで子供の喧嘩のように
苦いビールの飲み対決を始めたのだった
ノアはやはり飲み慣れるのか、いいペースで飲み続けていた
反対にダレイは全く飲まないビールをゆっくり飲み進めていた
「なんだお前、そんなものかよ?」
鼻で笑いながらノアはビールを余裕で飲み続けた
しかし、勝負は対決が始まって数十分_対決は面白い方向へと進んで行ったのだ
「……っ〜飲み過ぎた…」
「……」
机に持たれ、完全に酔いつぶれたノアを余所に、ダレイは無言でビールを進める
この時点で勝負は互角だった
「お前酔いつぶれるの早過ぎるだろ」
「これくらい普通だろ……お前が強すぎんだよ…飲み慣れてないんじゃなかったのかよ〜…」
勝負は終わり、つまみを食べながらボーッと脳を休ませる2人
次第にノアが独り言を呟く
「……俺は何してんだ…ほんと」
「酔いつぶれる」
「こんなことしたくて…大人になりたかったわけじゃねーのに……」
「……?何の事だ?」
「お前、刑事の仕事して、やり甲斐感じるのか?」
ノアが初めてダレイに真面目な仕事の質問をした
酔っているからだろう、普段なら絶対聞かない事だ
ダレイの答えはもう決まっていた
「当たり前だろう。刑事になったからには責務がある」
「……そーかよ、あんたを人目見た時、その真面目さが俺を変えてくれると思ったんだ」
「……は?」
「1人だけ風格が違った……ってか…刑事らしさが目立ってたんだよ」
泥酔したノアの顔はボーッとしており、そのままカウンターで寝込んでしまった
スゥ…__
初めからこの男を嫌っていたのは…俺だったみたいだ。
眠りにつくノアの髪はよく見ると元々金髪だったみたいだ
こんな態度でも…仕事や、髪の色を見ると、刑事としてしっかりやることをこなしてるように、ダレイは見えたのだった
カウンターには飲み終えた2つのビール瓶がおかれていた
「ふぅ……」
ダレイが椅子に座りながら体を伸ばしていると、机に缶コーヒーが置かれる
「よぉ、ダレイ。お疲れさん」
「ノアか…お疲れ、仕事は?」
「明日やる」
笑みを浮かべながらノアは、ダレイと同じブラックコーヒーを飲む
「今日、飲みに行くか?」
ダレイがご飯の誘いをすると
ノアは驚いた顔をした
「お前から誘ってくるの珍し……!」
「気まぐれだ」
「んじゃレオンくんも誘っちゃお〜」
「そうだな」
「いぇーい〜!乾杯カンパーイ」
ウキウキした様子でノアは廊下に出ていく
昔重ねることのなかったジョッキを…今なら重ねられる気がした
あの時とは違う3人が、揃って