「にゃんにゃん。ほぉらさとちゃん、可愛い猫ちゃんやで〜」
「…………おん」
学校の昼休み
俺たち4人はいつもの空き教室でお昼を食べていると、るぅところは先生に呼び出されてしまいひと足先に行ってしまったので、時間になるまでのんびりしていた時、なーくんが鞄から取り出したもので遊んでいた
“猫になる薬”
それはなーくんの父親である條檻司《ジョウオリ ツカサ》さんが開発したもので
普通に飲めばただの睡眠サプリなのだが、ある特定のドリンクと飲むと猫耳と尻尾が生えてくるという、ちゃんと国に認められて市販に売っている不思議な薬
戻す薬を飲めばその日のうちに戻るが、効果は一時的なもので、1週間もあれば自然に戻るらしい
にゃんにゃんと手を丸め、にゃーごにゃーごと鳴くジェルくんにさとみくんはスマホを弄りながら興味なさげに応えていた
「なーくんのお父さんは本当にすごい人だね」
「あはは、お金さえ手に入ればあの人がどうなろうと別にどうでも良いけど、確かに腕はいいと思うよ」
「わぁー…相変わらず毒舌だねぇ」
なーくんは両親が嫌い
でもまぁ、前よりは改善していると言っていいのだろう
なーくんが親を褒めることなんてなかったのだから
擦り寄ってくるジェルくんにさとみくんは嫌そうに眉を顰めた
「本当に仲良いねぇ、あの2人」
「…うん、そうだね」
ほんと、羨ましいほどに
「……………」
「ねぇ、莉犬くん。莉犬くんもこれ飲んでみる?」
「いやいや、俺はもう犬耳あるからw」
「それは人間対象でしょ」
「んふふふ〜、それがねぇ…」
「あ、じゃあそれは放課後のお楽しみってことで!」
なーくんは楽しそうに笑って、次移動だからと教室を出て行った
それにつられてジェルくんもなーくんの後を追い、俺とさとみくんが空き教室に残された
「……じゃあ俺らもそろそろ行くか」
「うん、…あ…」
立ち上がり、さとみくんは振り返る
行くぞ、というふうに手を繋がれ、歩き出した
大きくて暖かい手が優しく俺を包み込んで、ほんの少し、安心した
放課後
メールに届いた場所へと足を運ぶ
廊下に刺すオレンジの光
その先にあるのは今はもう使われていない第2音楽室
重たい厚い扉を開くと、小さく、歌声が聞こえた
「____…〜♪……あ、莉犬くん」
優しく、心を溶かす笑顔に、俺も笑った
「懐かしいね、その曲」
「んふふ、みんなで初めて歌った曲だからね」
俺の、俺たちの
1番好きな曲
なーくんの隣へと行き、窓の外を見る
賑やかな運動部の声と、心落ち着く吹奏楽の音
「俺この時間好きなんだぁ」
なーくんはそう言って頬杖をつき、運動部の光景を眺めた
「…俺は、少し苦手」
「そっか、…ねぇ莉犬くん。何か、あった?」
ひらひらと白いカーテンが揺れ、木々の葉が音を鳴らした
「…………」
「別に大したことじゃないけど、ちょっと、不安になってるだけ」
「どうして?」
「本当にさとみくんが俺のことを好きなのか、かな」
さとみくんと付き合って、もうすぐ2年
少しずつ、少しずつ、一緒にいる時間が減っていって、今ではもう隣にいないのが当たり前みたいな
時折家に行き来しているものの、特に会話もなくて
…もちろんハグとか、ちゅーとか、………ソウイウコトもたまーーーーーに、やってるけど
さとみくんが
なにを考えているのか、分からなくなってきていた
「……もちろん、さとみくんがそう言う性格だってわかってるんだけど…」
「……ふふ、じゃあさ」
励ますように、クスクスと笑いながら頭を撫でるなーくんは言った
「”これ”飲んでみない?」
「………だからそれ、人間対象でしょ?」
「俺普通の人間とは違うもん」
「んふふふ〜それがちょっと違うんだなぁ」
「ジェルくんに渡したのは普通のやつで、俺が今言ってるのはこれ」
そう言って取り出したのは先ほど見たサプリとぱっと見変わらない薬
「見分け方は簡単。ジェルくんが飲んだのを水に溶かすと白く濁るけど、これは溶かしても透明なままなんだ」
「これで莉犬くんも猫になれるよ」
「えぇ…でもさ、それとこれとは話が違いすぎるよ」
「それはどうかな。試してみないと分からないよ」
「これを飲んで猫になった莉犬くんに態度がころっと変われば、それまでじゃない?」
シン、と一瞬静まり返った
「………は、はは、…なーくんって俺のこと嫌い?」
「なんでそんなこと言うの?!大好きだよ!今ももし莉犬くんがなくは目になったらさとみくんをどうしてやろうかって考えてるよー!」
なーくんはぎゅうっと俺を抱きしめ、頬を膨らめた
「…そう?…じゃあ、試してみようかな」
へへ、と笑い、なーくんから小瓶を受け取った
〜next〜
コメント
5件
こはなまるさんの書き方ほんとに大好きです…続き楽しみにしてます🥹♡
切るところが天才すぎて、もうめちゃくちゃ続き楽しみです😖🥹💗
これ投稿し終わったら桃赤4出す 続きは♡500〜