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#高校生
第8話 「壁の高さ」次の対戦相手が発表されたとき、空気が変わった。
――福岡東高校。
県内屈指の強豪。
毎年のように上位へ進むチームだった。
試合前。
アップの段階から違っていた。
声の質。
動きの速さ。
無駄のなさ。
柳城の選手たちは、自然とそれを感じていた。
「……レベル高いな」
誰かが小さく呟く。
「関係ない」
福間監督の一言。
「相手がどこでも、やることは同じや」
1回表(柳城守備)
初球。
――カキン!
いきなり鋭い打球。
ショートが反応するも、わずかに遅れる。
内野安打。
続く打者。
送りバント。
正確すぎる。
一死二塁。
3番。
甘く入った球を――
――ドン!
センターオーバー。
先制点。
ベンチが静まり返る。
(速い……)
小早川は感じていた。
すべてが一歩上。
3回表
柳城のミス。
わずかな送球のズレ。
それを見逃さない福岡東。
すぐに追加点。
気づけば0対3。
柳城の攻撃
チャンスは作る。
ランナー一塁。
二塁。
だが――
一本が出ない。
田村が打席に立つ。
狙っていた球。
振り抜く。
――カキン!
いい当たり。
だが――
正面。
アウト。
「くそっ……!」
ベンチに戻り、ヘルメットを叩く。
5回
さらに失点。
0対5。
それでも、声は出ていた。
「まだいける!」
「一本出せば変わる!」
以前の柳城なら、ここで崩れていた。
だが――
踏みとどまっている。
7回裏
二死二塁。
チャンス。
打席は小早川。
(ここで……)
バットを握る手に力が入る。
初球。
振る。
――カキン!
レフト前。
タイムリー。
1点。
「よっしゃあ!」
ベンチが沸く。
だが反撃はそこまで。
最終回
三振。
――ゲームセット。
1対5。
完敗。
整列。
相手は堂々としていた。
柳城は、言葉が出ない。
ベンチに戻る。
誰も座らない。
立ったまま、グラウンドを見ている。
「……違い、分かったか」
福間監督の声。
「技術もある」
「体も強い」
一拍。
「でも、一番は“精度”や」
地面を指す。
「一つのプレーの質」
「一球の重み」
「お前らは、まだ甘い」
その言葉に、誰も顔を上げられない。
だが――
「でもな」
続く言葉。
「通用せんわけやない」
顔が上がる。
「今日の一点」
小早川を見る。
「ああいう野球を続けろ」
静かに言う。
「壁は高い」
「でも、越えられん高さやない」
その言葉が、胸に残る。
帰り道。
誰も騒がない。
でも、足取りは止まっていなかった。
小早川は空を見上げる。
(遠い……)
正直な気持ち。
(でも――)
拳を握る。
(届かない距離じゃない)
水路に映る夜。
その向こうに、まだ見ぬ景色がある。
柳城は、初めて“本当の壁”を知った。
第8話 終
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