朱音がまだ幼かった頃、彼女の周囲には「異常」が存在していた。幼少期の朱音は、他の子供たちとは違う何かを感じていた。それは、見えない存在、すなわち呪霊の存在だった。
朱音の家系は代々、強力な呪術師の家系であり、その呪力の強さは他の子供たちと比べ物にならなかった。しかし、彼女はその才能を隠すようにして過ごしていた。なぜなら、幼少期の朱音にとって、呪力とは呪いそのものであり、人々を傷つける原因となるものだったからだ。
朱音の母親は、幼い朱音をとても愛していたが、父親はその力に恐れを抱いていた。父は呪力を危険視し、朱音を「呪われた存在」と呼ぶようになった。家族の中で、朱音は孤立し、彼女の心に深い傷を負い始める。
「あなたのせいで…家族が壊れたんだ」
ある夜、朱音の父親が激昂し、彼女にその言葉を浴びせた瞬間、彼女の中で何かが切れた。制御できないほどの呪力が暴走し、家を包み込むように広がった。結果として、家は崩壊し、父親はその場で命を失った。
家を失った朱音は、その後孤独な生活を送ることになる。彼女は自分の力に恐れを抱き、他人と距離を置くようになる。街の人々からは「呪われた子」として恐れられ、孤独と絶望の中で彼女は生き続けた。
そんな中、朱音が出会ったのが神楽坂だった。彼は朱音の呪力に気付き、その力を制御する方法を教えてくれた。そして、朱音にとって初めての「仲間」だった。神楽坂の教えを通じて、朱音は自分の呪力を制御する術を学び、特別部隊の一員となる。
朱音は今でも、自分の呪力がもたらした過去の出来事に囚われている。彼女の冷静で厳しい性格は、その過去から来るものであり、自分自身を責め続けている。
「私は…いつかまた誰かを傷つけるのではないか…」
特別部隊の中でも、朱音は常に距離を置いているように見えるが、彼女の心には深い孤独と後悔が存在している。