TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

彼女に惹かれたのは、高1のあの日だった。廊下を歩いていた時、偶然耳にしたざわめき。覗いた隣のクラスで、ひとりの生徒がいじめられていた。周囲は気づいていたはずなのに、誰も声を上げなかった。見て見ぬふりを決め込むように、みんなが目を逸らしていた。俺だって驚くだけで足は動いてなかった。


その中で、ただひとり――彼女は迷わなかった。


クラスも違うのに、何のためらいもなく足を踏み入れた。

大きな声を張り上げ、いじめっ子の前に立ち塞がり、堂々と戦った。小柄な子を背中に隠すようにして守りながら、毅然とした態度でにらみつける姿。


――かっこいい。


その瞬間、俺の中で何かが変わった。

困っている人がいたら、真っ先に駆け寄る。正しいことを正しいと貫ける強さ。誰よりも背が高く、運動神経も抜群で、男顔負けの度胸を持つ。そんな彼女を見てから、ずっと目を離せなくなった。

俺は犬系で、どちらかといえば「可愛い」と言われることが多い。背だって平均くらいだし、彼女の堂々とした立ち姿の前では子犬みたいだ。

だけど、彼女の行動のひとつひとつに胸を打たれてしまった。

それからの2年間、俺はずっと片思いを続けた。


___


接点なんてほとんどなかった。

クラスも違えば、部活も違う。廊下ですれ違うときに、ただ目で追うだけ。彼女はいつだって人に囲まれていて、俺が入り込む余地なんてなかった。

それでも俺は、彼女の噂を耳にすれば心臓が跳ね上がった。体育祭で活躍したとか、文化祭でリーダーシップを取ったとか。クラスの誰かを助けたとか。

そのたびに「やっぱりあの人はかっこいい」と思って、ますます惹かれていった。

ただの憧れ。そう思い込もうとしたこともある。

けれど、気づけばいつも目で追ってしまう。廊下で見かければ嬉しくなり、声が聞こえれば胸がざわつく。

誰かに告白されたと聞けば苦しかった。

――これが、恋じゃなくて何だろう。


___


そして迎えた高3。

奇跡が起きた。ついに彼女と同じクラスになったのだ。

最初にクラス替えで、彼女の名前を見つけた瞬間、心臓が飛び出るかと思った。二年間、遠くから見ていただけの存在が、やっと同じ空間にいる。俺はこのチャンスを逃したくなかった。

だから、勇気を出して話しかけた。

授業中わからないところを聞いたり、ペアになったときに笑顔で接したり。何気ないことでさえ、俺には大冒険だった。

彼女はいつも自然体だった。媚びることなく、飾ることなく、自分らしくいる。俺が必死にアピールしても、からかうように笑って流すこともあれば、そっけなく「そうなんだ」とだけ返すこともあった。

でも、それでもよかった。

彼女と話すたびに、俺の心はときめいていた。

一緒にいることができて嬉しかった。


___


そして――ついに決意した。


このまま卒業を迎えたら、絶対に後悔する。

2年間の想いを伝えたい。届かなくてもいい。けじめとして、この気持ちを言葉にしよう。

放課後の教室。夕日が差し込む窓際で、彼女の背中に声をかけた。

「、、ずっと、ずっと好きでした!」

驚いたように振り返る瞳。

その視線に捕まえられて、胸が張り裂けそうになる。

「私、他の子みたいに可愛くないよ。頼ったりしない」

彼女は少し照れくさそうに、けれどはっきり言った。

俺は首を振った。

「俺が、頼られる人間になる」

俺の方が頼ってばかりなのはわかっている。けれど、だからこそ言葉にした。

「可愛い系じゃないし、背も高いし、強いし、、」

「俺は、自分らしく生きてるところが好きなんだ」

勉強も運動もできて、高いところにあるものも届く。堂々としていて、男前で。俺よりずっとかっこいい。

でも、それでいい。むしろ、だからこそ好きになった。

「俺は、君のそんな、、素敵なところが大好きだ」

声は震えていた。けれど、心からの本音だった。

彼女は少し黙って、やがて小さく笑った。

その笑顔を見ただけで、2年間の片思いが報われた気がした。


――告白は、受け止めてもらえた。

手を伸ばしたら届く距離。肩が隣り合わせになる距離。

彼女の素敵なところを隣で見ることができて幸せだ。

不揃いの想いに名前をつけて

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

10

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚