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#chance
22
#生成AI
カードが配られる音だけが、静かに響く。
一枚。
二枚。
三枚。
テーブルの上、二人の間にあるのは——
ただの紙切れ。
なのに、
その重さは、明らかに違う。
「……」
マフィオソは一切表情を変えない。
指先でカードの端を整えるだけ。
対して——
「いいね」
チャンスが軽く笑う。
「やっぱり、この空気だよな」
カードを覗き込みながら、わざとらしく肩をすくめる。
「無駄口が多いな」
「緊張してる?」
「する理由がない」
即答。
「そりゃそうか」
チャンスはコインを弄びながら、
「負ける気、ないもんな」
「当然だ」
短い返し。
そのまま、チップを置く。
「ベット」
「強気だな」
「いつも通りだ」
「いいね」
チャンスも乗る。
「コール」
——沈黙。
カードが一枚、場に出る。
さらに一枚。
さらに一枚。
じわじわと進む展開。
その中で——
「……なあ」
チャンスがぽつりと口を開く。
「部下たち、みんないいな」
「……」
マフィオソの指が、ほんのわずかに止まる。
だが、それだけ。
「コンシリエーレ」
チャンスが指を一本立てる。
「相談役」
次に二本。
「カポレジーム」
「幹部」
三本。
「ソルジャー」
「兵士」
四本。
「コントラクティー」
「ヒットマン」
ゆっくりと指を折る。
「いい役割だ」
静かな声。
「……何が言いたい」
マフィオソが低く問う。
チャンスは、カードを見たまま答える。
「みんなさ」
一拍。
「名前、捨ててるんだよな」
その言葉。
空気が、わずかに揺れる。
「……」
「役割で呼ばれて」
「肩書きで生きて」
「個人じゃなくて、“組織の一部”になってる」
カードを一枚、置く。
「それでも」
目線だけを上げる。
「ついてきてる」
沈黙。
「……それがどうした」
マフィオソの声は、変わらない。
「いや?」
チャンスは軽く笑う。
「すげぇなって思ってさ」
「……」
「普通、できねぇよ」
チップを指で弾く。
カラン、と乾いた音。
「名前捨てるってのはさ」
少しだけ、声が低くなる。
「“自分”捨てるのと同じだ」
静寂。
「それでもあんたの側にいる」
「理由、何だと思う?」
問い。
だが、答えは求めていない。
「……」
マフィオソは、ゆっくりとカードを整える。
「ベット」
静かに置く。
「逃げるなよ」
「逃げているのはどちらだ」
即返し。
チャンスが笑う。
「いいね」
「その顔」
「……」
マフィオソの目が細くなる。
「お前は」
低く言う。
「何も持っていないから、そういうことを言う」
空気が、一段冷える。
「……はは」
チャンスは笑う。
だがその笑いは、少しだけ鋭い。
「否定はしねぇよ」
「だから欲しいんだよ」
カードを開く準備をしながら、
「“ああいうの”」
ほんの一瞬だけ、
真顔になる。
「……」
マフィオソは、その一瞬を見逃さない。
(今の)
だが——
すぐにいつもの顔に戻る。
「で?」
チャンスが言う。
「どうする?」
「乗るか、降りるか」
「……」
数秒の沈黙。
「……コールだ」
マフィオソが言う。
「降りる理由がない」
「だと思った」
チャンスがカードを揃える。
「じゃあ——」
ゆっくりと開く。
「見せようか」
カードが、テーブルに広がる。
役が揃う。
強い。
明らかに。
「……」
マフィオソの目が、わずかに動く。
「悪いな」
チャンスが笑う。
「今回も——」
勝ちを確信した声。
だが、
その瞬間。
マフィオソが、カードを開く。
「……何?」
チャンスの笑みが、ほんの一瞬止まる。
そこにあるのは——
さらに上の役。
静寂。
「……」
「……」
数秒。
完全な沈黙。
そして——
「はは」
チャンスが、ゆっくり笑う。
「なるほどね」
「……」
マフィオソは何も言わない。
ただ、カードを揃える。
「いいね」
チャンスが椅子に深くもたれる。
「これだよ」
心底楽しそうに。
「こうじゃなきゃ意味ねぇ」
負けたはずなのに、
全く悔しそうじゃない。
むしろ——
満足している。
「……」
マフィオソが静かに言う。
「まだ終わりではない」
「当然」
チャンスが前に戻る。
「ここからだろ」
チャンスは笑ったまま、カードを揃える。
(やっぱり)
(こいつ、最後まで落ちないな)
そして思う。
(だからいい)
勝負はまだ、終わっていない。
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