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「うわぁ……………
これが〝噂のアレ〟ですね…………」
菊は辺りを見て呟いた。
視線の先には壁一面真っ白の部屋、部屋の天井の隅には監視カメラ、開かない扉…………。
そう、勘の良い読者様方はお気づきであろう、
〝〇〇しないと出られない部屋〟である。
菊はある複数人に誘導されてこの部屋に入れられた。もちろん抵抗する余地はなかった。顔見知り、というか知り合いだったからだ。
「漫画では見たことありましたが………こんな感じなのですね…………凄い………」
と、菊はまるで自分がその餌食になるのも気づかずに、他人事のように感心の言葉を口にする。
すると、室内にアナウンスが入る。
「Attention please!
今から本田菊の〇〇しないと出られない部屋をやるんだぞー! あ、えーと………やる………」
「……………」
絶対あの人ですね……と、流石の菊でも勘づく。
「まずは壁にあるスイッチを探してくれ」
菊は聞いたことがある声の言うことを聞き、早速探し始めた。
だが、先程のようにこの部屋は装飾も何もなく、部屋中が白だ。
「一体どこにスイッチがあるのでしょうか…………… わ………、、!」
壁にもたれた瞬間、菊の頭の部分が当たっていた所の壁が凹んだ。というか、元々薄く切れ目が入っており、もたれたことで押されたようだ。
「……! もしかして………!!
あ、ありました………!!スイッチ……!!!」
するとまた別の声でアナウンスが入った。
「よくできたね〜!!!菊えらい〜!!………え?そんなことあとでいい? え〜?台本進めろって?」
丸聞こえである。菊は苦笑するしかなかった。
「ん゙ん゙…………じゃあ中にある物を出してくれ」
「は、はい………」
スイッチによって壁のみに見えた所が観音扉のように開いた。
中には、キャスター付きの大きいハンガーラックが2台。ラックには服が掛かっているようだ。
菊は嫌な予感とともに冷や汗が出てきたが、とりあえず出した。
案の定、だった。
ラックには服が50程ありそうだ。その服はメイド服、ナース服、チャイナ服、ミニスカートの警察服、露出の多い服、胸を見せるような服、ゴスロリ服、その他諸々、という感じだ。
「はぁ…………見たことある衣装も何着か………………」
一体誰の趣味なのでしょうか……と考えたが、察しは付く。もう想像したくもない。
「………この服を着ろ、というのですか………、、?」
「もちろん無理には着させないよ〜、でもね、もし出来なかったら着てもらうよ?」
「……! 何をすれば良いのですか…………………!?」
少しの希望を見いだし、イヴァ…………じゃなかった、知らない(?)人物に問う。
「僕たちの着たことある服を当ててもらうの!
うふ、簡単でしょ?」
この部屋は〝服を当てられないと出られない部屋〟であった。菊は絶望である。そんなこと無理に決まっている。第一、これほど服がある中で当てられるはずがない。
菊は地面にへたり込んだ。
「まあまあ、そんな落ち込まないでよ、ね?ヒントは匂いしかないかもしれないけどさ?
………だけど、当てられなかったらその服着てもらうからね♡お兄さん楽しみ♡」
と、菊に追い打ちをかける。
「仕方ない………です……………
………日本男児たるもの、一発で全問正解して差し上げますよ……!!!」
菊の目に闘志が宿った。
結局そんな都合の良いことにはならず、何度も何度も着替えをした。
やっと扉が開く。菊は駆け足で部屋を出た。出た先にはよく知っている犯人たち。
「菊、頑張ったあるね!!」
「楽しかった〜!♡」
「………もう懲りごりですよ……………」
フリフリスカートのフランス人形のような格好の菊がうなだれた。
「しょうがないだろー?、何てったってここはセカキ─────」
「メタいこと言うんじゃねぇよ、消されるぞ」
「こっわ……てか誰にだよ…………!?!?」
この世界に───────。