テラーノベル
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突然の晶子の豹変ぶりに良太が言葉を失う。晶子はほんの少し体を前にかがませ、下から良太の顔を見上げる。大きく開いた晶子の胸元が嫌でも良太の視界に入る。
良太の手が晶子の肩をつかむ。良太も心臓をどきどき波打たせて、手が小刻みに震えている。
晶子は物心ついてから、家族以外の男性に体を触れられた事はない。自分が何をしているのか、しようとしているのか、半分理解し、半分分かっていないまま、さらに良太に問いかける。
「ねえ、あたしとカンナ、どっちが綺麗? 女の子として、どっちが魅力的?」
良太の両腕が晶子の背中に回る。その瞬間、晶子の背後から鋭い声が飛んだ。
「よせ!」
激しい足音とともにカンナが走って来た。あわてて体を離した晶子と良太の間に割って入り、カンナは右の掌でいきなり良太の頬を引っ叩いた。パァーンという豪快な音が響く。カンナは低い声で良太に言う。
「あんたも男だからさ、浮気すんなとは言わねえけど、晶子だけはダメだ。この子はあたいの大事な親友なんだ」
カンナが晶子の方に向き直る。鋭い眼光を放ちながらカンナが右手を上げる。引っ叩かれる! そう思った晶子は思わず目をつぶる。
だが、晶子が次の瞬間感じたのは、額に走る小さな衝撃だった。おそるおそる目を開けると、カンナの右手の中指が見えた。いわゆるデコピンを食らったようだった。カンナはかすかに笑いながら晶子に言う。
「ま、ある意味安心したぜ。晶子も色気づく事はあるんだな。けど、こいつはあたいの物だ。つまみ食いは禁止」
それから晶子は気まずい思いを抱えたまま、カンナは何事もなかったかのような飄々とした顔で、更衣室でお互いの服を元に取り換え、ビルを去った。
カンナは一応、夕食を一緒にどうかと言ってきたが、さすがに晶子は断った。普段通りに手を降って別れのあいさつをするカンナを尻目に、晶子は逃げるように駅の改札を駆け抜けた。
家に向かう電車の中で、晶子は座席に座って体を丸め、バッグで顔を隠した。頬が真っ赤になっているのが自分でも分かった。
別に良太に恋愛感情など抱いてはいない。それなのに何故あんな誘惑じみた事をしてしまったのか、自分でも説明できなかった。
今頃になって心臓がバクバクとしてきた。心音が体を伝わってはっきり聞こえて来た。
次にカンナに会った時に、どんな顔をすればいいのだろう。良太に対しても。二人ともさっぱりした性格だから、そんな心配はしなくていいのかもしれない。
それはそれとして、どうしてあの時、自分はあんな事をしてしまったのだろうか? その答を見つけられないまま、晶子は電車の振動に揺られ続けていた。
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宇津Q
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コメント
1件
うわあ、晶子さんが急にそんなことするなんて…! それまでカンナと良太の関係を冷静に見ていた印象だったから、あの豹変は本当に意外でした。カンナが割って入ってデコピンしたのも、最後まで彼女らしい対応で笑っちゃいましたね。でも何より、終盤の電車でひとり赤面しながら「なぜあんなことをしたのか自分でも説明できない」という晶子の戸惑いが生々しくて、すごく心に残りました。自分の感情の正体にまだ気づいていない感じが、いい距離感の描き方だなあと。