テラーノベル
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次の日、あくびをしながら食器を洗っていると携帯が鳴った。片手を軽く吹き携帯を手に取ると、海斗君からだった。
「もしもし?」
今日は仕事が休みだ、何か忘れてることでもあっただろうか?
「あの、やっぱり心配なので家事など手伝わせて貰えないでしょうか?」
「…本気で言ってる?」
いくら何でもそれは気が引ける。海斗君も昨日仕事をして疲れているはずだ。
「真剣です、佳奈先輩に少しでも休んで欲しいので。」
真剣なのは伝わってくるが…ここまで優しいと海斗君も疲れそうだな…。
「まぁ嬉しいけど、海斗君は大丈夫なの?」
「全然大丈夫ですっ、佳奈先輩がいつもすぐ仕事やっちゃうし佳奈先輩仕事いっぱい任せられてるから…。」
「…分かった、じゃあたまには後輩に甘えようかな。」
急で驚いたが、まぁここまで言われて断るのも逆に失礼な気もするし海斗君の負担にならないならここは甘えてもいいだろう。
「じゃあ今から行きます!」
電話越しに嬉しそうに海斗君はそう言って電話を切った。私も子供ではないから、そこまで気にしなくてもいいのだが…。優しすぎて逆に気を使ってしまう…。
バァンッ!
外から大きな音がし、驚いて玄関を開けると海斗君が盛大に転けていた。
「いったぁっ…すみません、お恥ずかしいところを…。」
涙目で謝る彼を少し見つめると私は肩の力を抜いた。
「くっ…あははっ、!」
「へっ、ちょっとこっちは心配して急いできたのに笑わないでくださいよー。」
「いや、ごめんごめんっ。」
珍しくドジをする彼に半年以上でなかった笑いを出した。
「も〜…。」
しょうもない事だが、だからこそ笑えたのかも知れない。無理に笑わせようとされる方が少し辛い気もするから。少し怒ったかのような彼に頭を下げながら部屋に招いた。
「お茶でも入れようか?」
「いえいえっ!家事を手伝わせてください。」
随分と乗り気な彼を見つめながら私は口を開いた。
「じゃあ〜…そっちの棚片付けてくれる?私は洗濯物片付けるから。」
私が指を指すと彼はそれを目で追い、頷いた。
「分かりました、なるべく早く終わらせますね。」
「ゆっくりでいいって。」
二人で一緒に細かな所まで片付ける、最近は掃除をサボっていたせいか思ったより汚かった気もする。少し汗をかきながら掃除が終わると彼と一緒にグータッチをした。
「ありがとう笑」
「いえいえ!いつもお世話になってるので。」
彼はこちらを数十秒見つめ、照れくさそうに目を逸らすと焦ったように言った。
「後はゆっくり休んでくださいっ、俺はもう帰ります。」
小走りで去っていく彼を見送った後、私は風呂につかりながら少し頬を赤らめていた。
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尊い