テラーノベル
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俺のドスを受け止めたのは、見覚えのある、だが冷徹に研ぎ澄まされた一振りの刀だった。
火花が散る至近距離。
睨み合った男の顔には、かつて俺と競い合った若衆時代の面影と、火災で焼けたような無惨なケロイドが刻まれていた。
「……久瀬、死んだんじゃなかったのか」
俺の声が低く響く。
久瀬。榊原組で俺と双璧を成し、数年前の抗争で爆死したはずの男。
「……三和会の医療技術は、地獄の門を叩いた俺すら連れ戻したよ、和貴」
久瀬の腕には、機械的な補助装置が仕込まれており、そこから繰り出される力はもはや人間の域を超えていた。
俺は力負けし、ステージの後方へと弾き飛ばされる。
「大河内会長は、俺の新しい『親』だ。…和貴、お前の古臭い筋書きは、ここで書き換えさせてもらう」
久瀬が刀を正眼に構える。その動きには一切の迷いがない。
三和会によって「調整」された、意志を持たない処刑人。
「……志摩!山城!」
俺は無線に向かって叫ぶが、返ってくるのは激しいノイズだけだった。
「無駄だ。この会場周辺は、最新のジャミングで完全に隔離されている。お前の仲間たちは、今頃外で『掃除屋』どもに囲まれているはずだ」
大河内が安全な防弾ガラスの奥へと下がりながら、冷たく言い放った。
孤立無援。
新宿のど真ん中で、俺は再び一人になった。
「いいぜ、久瀬。……お前が三和会の犬に成り下がったなら、俺がその首を、親父への供え物にしてやるよ」
俺は二振りのドスをクロスさせ、低く構えた。
左肩の傷が熱を帯び、脈打つ。
だが、研ぎ澄まされた感覚の中で、風の動き
久瀬の鼓動、そして会場を包む殺意が、一本の糸のように繋がっていく。
かつての兄弟分。
今、三和会の盾となった男。
俺は親父のドスを逆手に持ち替え、一気に踏み込んだ。
それは
新宿再開発のステージが、血塗られた「兄弟喧嘩」の舞台へと変わった瞬間だった。
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