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優里視点
ピコンッ
ライブツアー初日に星崎から、
突然連絡が来た。
特に対面でいつ会いたいとか、
前振りがなく連絡をよこす時は、
必ず良くない時だ。
そのため嫌な予感を感じながら、
LINEを開く。
『突然で申し訳ありません。
今日の△時辺りでビデオ電話できますか?
お話ししたいことがあります』
いつも星崎が送ってくる砕けた文脈よりも、
かなり固い言葉使いが目立つ。
それだけでやっぱり良くはない方だなと察した。
『分かった。
時間空けとくから』
とメッセージを返す。
彼が大変な時は側に居てやりたいと思うが、
仕事を投げ出すわけにはいかず、
俺は1人きりのホテルで盛大にため息をついた。
堪らなく彼に会いたい。
長時間の移動疲れもあっても、
ぐっすりと眠ってしまっていたようで、
目が覚めるとホテルの時計で、
俺は彼と約束した時間の数分前に飛び起きた。
慌ててスマホを取ってLINEのビデオ通話を繋ぐ。
「いや⋯だからーーー」
「それだと困りますよ」
画面は壁紙だか天井だか、
謎の一色が映し出され、
数人の話し声が聞こえた。
もしかして気づいていないのか?
「瑠璃夜!」
大きめの声で名前を呼んでみる。
「あ⋯優里さん?
忙しいのに無理言ってすいません」
画面にやっと彼の顔が映った。
どうやら彼はリゼラル社の開拓を起こす計画を立てていた。
主要メンバーは彼を筆頭に、
深瀬、
大森、
藤澤、
若井らしい。
つまり俺以外のメンツだった。
確かに今はツアー中のため自分のことで精一杯のため、
彼のフォローまではできなかった。
(また蚊帳の外か)
頭では理解していても、
心でも受け入れることは出来なかった。
寧ろ気に食わないくらいだ。
「でも具体的にどうするつもりでいるわけ?」
「これですよ」
ニンマリと意地の悪そうな顔で笑いながら、
彼が手にしてみせたのはICレコーダーだ。
おいおい。
枕営業と盗撮以外にも何か一悶着があったのか。
彼がどれほど執拗に狙われているのかが窺えて、
ますます傍にいられないことへの不安を感じた。
『フリが違うって何回言わせば分かるんだ!
やる気ないなら帰れ!!』
『先輩の優里さんはビルボードで結果残してるのに、
何で後輩は何も結果を残せないわけ?』
『ミセスさんもそう。
紅白にレコ大の偉業だよ?
その間何してた遊んでいたわけ?』
それはとても聞くに耐えない、
彼に対する暴言のオンパレードだった。
俺は流石にブチギレて文句を言うが、
当の彼は困った様に笑うだけ。
「だってお二方とも僕が敬愛する大先輩ですから。
でも先輩が偉大すぎて周りからの圧で潰れそうな時もあります。
あー⋯痛いとこ突かれたなって思いましたよ」
それでも食らいついてこようと必死に足掻いて、
努力してきた姿を見てきた俺からすれば、
その努力すら『遊んでいた』の一言で、
簡単に片付けられうのは、
どうしても我慢ならなかった。
なのに怒ろうともしなかった。
寧ろ彼は受け入れていたのだ。
「スタッフからの暴言は名誉毀損、
撮影に不向きなアマ用のカメラしか使わせないのは、
社長に対して営業妨害の可能性があります。
また壊されたカメラは器物損壊かと⋯⋯でも、
出来ればスタッフは無傷で処理したいです」
つまりあくまでも、
反撃対象は社長がメインか。
スタッフは家族だと言う考えが強い彼にとって、
やはり身内はどんな目に遭わされても、
あっさりと解雇通告の一枚で、
完全に切り捨ててしまうことは出来ない様だ。
(あれ⋯瑠璃夜ってこんなに強いやつだっけ?)
俺は彼の何をみてきたのだろうか。
明らかに彼の中で何かが変わり始めていた。
「そんなことより報告はーーーーー」
彼は急に真面目なトーンで話し始める。
その内容はあまりにも大胆だった。
リゼラル社は所属タレントやスタッフを家族の様に扱う元社長派と、
過酷労働を課してスタッフを使い潰す現社長派の派閥に割れていた。
最初こそは元社長派が多かったのだが、
元副社長の小鳥遊が社長はスタッフを強姦したと、
デマを流して一方的に社外追放したのだ。
「もちろん当時の記事も調べたけど、
本当の強姦魔は小鳥遊の方でした」
被害を受けたとおもしき女性スタッフのSNSを調べると、
質素倹約だったのがある時期からブランド物を買い漁り、
急に羽ぶりが良くなった様な投稿記事を見つけたらしい。
「おそらく彼女もグルかな。
社長の追放に協力した成功報酬だと思います。
強姦に関しても嘘の疑いもあるくらいです」
星崎は淡々と話を続ける。
その上で彼は引き続いて、
今度は過酷労働について踏み込んだ。
労働基準法を無視した長時間労働、
残業手当なし、
そのため社内に泊まり込むスタッフが半数近くもいた。
本来そんな無茶苦茶をすれば社長派はいなくなるはずだが、
社長派につけば過酷労働は免除するとエサをチラつかせて、
自分につかせていることまで突き止めていた。
「お前⋯ここまでどうやって調べたんだ?」
「俺たちが協力したからだよ」
画面に深瀬や大森が一緒に映り込む。
それもかなりの距離だ。
深瀬は自分の顔と彼の顔がくっつきそうなくらい近い。
大森もしれっと星崎の肩を抱いていた。
こないだまでの微妙な距離はどこに行ったのやら。
くそ!
イライラするな。
星崎のために嫉妬を隠して、
俺は詳しい説明を求めた。
深瀬や大森たちがスタッフから話を聞く、
アナログな方法で情報を集めて、
彼がパソコンを駆使してデジタルを利用してここまで調査したらしい。
「僕は理工学部出身でハッカーまがいなこともできるくらいには、
パソコンに強い⋯⋯ってあれ、
言ってませんでした?」
そんな情報なんて知らない。
俺はつくづく星崎のことなんて、
実は表面しか見ていなかったのかもしれないと思った。
「この事実を洗いざらい全部スタッフにブチまけたら、
賭けだけど⋯大半は僕につくと思います」
「でも元社長はどうするつもりだ?
騒動の後は失踪したことになっているだろう」
「⋯⋯⋯一番の問題はそこですよね。
でも立て直しには彼の力が必要ですから必ず見つけます」
それは覚悟に満ちた強い言葉だった。
そしてそのわずか3日後彼は本当に、
元社長を独自のネットワークで見つけ出し、
リゼラル社の新社長に据えた。
そしてついに小鳥遊を解雇に追いこむことに成功したと、
それは嬉しそうに弾んだ声で、
彼からLINEで報告された。
(欲をいえば一緒に戦いたかったが、
立派な反撃だったな)
雫騎の雑談コーナー
はい!
ちょっと端折り気味で済ませたので、
内容が薄っぺらく感じるかもしれませんね。
読み応えなくてすいません〜。
あ、
ちなみに自前のカメラを壊されて負った借金は、
壊した張本人から分割払いでの返済を要求して、
和解しましたとさ。
っていうことで〜本編ね。
スタッフからの嫌がらせやいじめを追及、
さらに小鳥遊社長(まあ元だけど)を会社から締め出して、
元のホワイトの事務所に戻すために、
会社開拓をすると言う話でした。
おまけで付け加えると関係各社(リゼラル社の取引先など)に、
小鳥遊の悪行音声データを一斉メールで公開して、
二度と同じ業界に戻れない様にしたそうな(by優里さん案)
まあアレよ。
普段優しい人をガチギレさせたら恐ろしいよって話ね。
やっぱり平和が一番!
会社もブラックより断然ホワイトがいいですよね。
無事解決しました。
でもここから徐々に星崎が、
一人の人間としての星崎と、
求められるTASUKUとしての自分に翻弄されて、
病み要素がぼつぼつ出てきますので、
気軽には読みづらい重い話になるかもしれませんが、
ご理解くださいませ。
ではでは〜🚩