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第29話 シイの過去1/2
前回までのあらすじ
2つ目ミッションをクリアした。以上。
*注意*ここから下は完全にシイ視点です。
これは、私がまだ小学2年の頃の話だ。
いつの日だったか覚えてないけど、その日は家族で車に乗って旅行に行っていた。見るもの全てが目新しくてワクワクと興奮が抑えられなかった。
「ねぇお母さん!あれ何!」
「あれは観音様だよ。しっかりと挨拶しなさい」
「わかった〜ははー」
車の中で、そんなやり取りをしていた。
交差点に入り、青信号になって進もうとしたら、突然左から車が出てきた。どうやら急いでいたらしい。
そんなことを知らない私たちは、事故にあってしまった。そこで、私達は死んだ。
「…。ここはどこ?」
「ようやく目が覚めたか」
どこ?ここ。死後の世界なのかな?
「ここは死後の世界でもなく、現実世界でもないぞ」
突然この人は私の疑問を消すかのように言い放った。
「それじゃあ、ここはどこなの?」
「ここは私の『固有力』で創った別の時間軸だ」
「固有力」?なんだそれ?
「ちょっと待って、理解が追いつかない。とりあえず、あなたの名前を教えてください」
「私の名前は『アヤメ』だ」
にちのうcv.シイ(過去)
「えっと、アヤメさん」
「アヤメでいい」
「じゃあ、アヤメ。ここはどこなの?」
「さっきも言ったであろう」
私はアヤメの家の中に入って、机を挟むような形でソファに対面して座っていた。
「その、『固有力』っていうのがいまいちわかんなくて。だって、私そんなの持ってないし」
「何を言っている。持っているではないか」
持っている?そんなの、体験したことないぞ。
「いや、持っているというか、『持たせた』の方が文法的には正しいか」
持たせた?この時間軸に来た時に?まさかそんなこと…。
「お前の家族は、死んだ」
「…」
「だが、お前だけ『固有力』の適正があった。だから、お前に植え込んだ」
植え…込んだ?まるで植物みたいな言い方だ。
「いまは、私の入れた『固有力』によってお前は動けている」
「まって、入れたって言ってるけど、私どこも変な感じしないよ?」
「頭だ。髪の毛のように植えてある」
きしょいな。
「その頭に植え込んだ『固有力』は脳まで達し、『固有力』の『主人を守ろうとする力』でお前は心臓や脳が動いているのだ」
「つまり、私は今『固有力』とやらに生かされてるの?」
「あぁ。『固有力』が取られると、死ぬ。普通の致死量のダメージでも死ぬがな」
突然、死について言及されて、私は少し冷や汗をかいた。
「お前に植え込んだ能力は『何かを入れる』だ。いつか、『何かを取り出す』と会うかもしれないが、それはお前の運命の相手だ。仲良くしてやれ」
「出会い系アプリかよ…」
つい思ったことが口に出てしまった。
「思ったんだけどさ、ここにはアヤメ1人しか居ないの?なんか家広そうだけど…」
「…。家族はいた。しかし、子供達は『固有力』を持って現実世界に行ってしまって、旦那は…死んだ」
「悪いこと聞いちゃったね」
「大丈夫だ。もう60年も前だからな」
そうか。もう60年前なのか…。…。
「60年!?」
「うわぁ!どうした!いきなり大声を出すな」
「えっ?じゃあ、え?アヤメは…何歳なの?」
「さぁ?ここに来てからもう100年以上経つんじゃないか?」
「うぅ…それじゃあ、今、何歳なの?」
「知らんな。多分100以上なのは確定だな」
えぇ〜見た目はどっからどう見ても20代前半くらいなのに?この世界はやっぱり変だな。いや、ここは今別の時間軸だから、少し違ってもおかしくないのか?
「そうだ。ここであったのも何かの縁だ。少し『何かを入れる』の使い方でも教えてやる」
そして、流されるがままに「固有力」の使い方を教わった。
にちのうcv.アヤメ
「とまぁこんな感じだな。どうだ?慣れてきたか?」
「少しはね」
「それは良かった。それじゃ、もうそろそろ現実世界にいきな」
そうか。もうお別れなのか。
「いやだ。行きたくない」
何を言っているんだ?行かなきゃダメじゃないか。アヤメを困らせるなよ。私。
「アヤメも一緒に行こう」
そんな無理なこと、アヤメが引き受けるわけないだろ。
「…。悪いね。私はここから出られないのだよ。それじゃあ、最後に1つ言っておこう」
ダメだったか。そうだよな。1つ言うってなんだろう?
「どうしてもダメになったらこう言うんだ。『チグリジア』とな」
「…。それはどういう意味があるの?」
「これは花の名前だ。花言葉に『私を助けて』と言う意味がある」
アヤメは花が好きなのかな?
「それじゃ、もう帰れ。準備が出来たら『OK』と言え」
そう言われて、最後にここに居た記憶を忘れないように、しっかり刻んでおいた。
「OK」
「よし。それじゃバイバイ」
そして、私は病院のベッドで目が覚めた。