テラーノベル
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「….はぁー?!!?!!?!?!?!」
響いた光のその声に、周りにいたお客さんが注目する。
「ちょ、光声でかい!落ち着いて、ごめんな!」
すいませんっと周囲に頭を下げたあと俺らは再び座った。
「おま、付き合ったってまじかよ?!」
「…まじ。俺もさっき付き合えたばっかだからまだ実感ない」
「なーんかお前ってほんと….マイペースっていうかさぁ?!」
「真っ先に言おうと思ってたけど、光の顔みたら新田先輩のことで頭いっぱいになって」
「…ほ、ほーん?」
この数時間で驚きと喜びの連鎖にあい、光は困惑しているようだった。
「俺のことは一旦置いといて、光はどうするの?」
「え、ど、どうって?」
「?付き合いたいんじゃねーの?」
「は?!いや無理だよ俺男だよ?!」
「….だから、新田先輩はそういうの気にしないって」
「確かに…諦める理由にはならないよな….」
「諦めてぇの?」
「そんなわけない!!けどまだちゃんと好きなのか正直不安なとこもあるんだよ、一瞬会っただけだし」
「じゃあ、もし新田先輩に恋人ができたら?」
「え?」
「しぬほど溺愛し合って、幸せそうにしてたら?」
「え…….」
「…なぁ光、ちょっと想像しただけでそうなるなら、もうお前は結構先輩の虜だと思うよ。」
目の前の光は、新田先輩が自分以外と付き合うところを想像し目を潤ませながら拳をにぎりしめていた。
「…うん..俺が先輩を幸せにしたい……」
全く世話がかかるなぁ。
「じゃあもう攻めるしかねぇな。連絡先はもってんの?」
「うん、この前咄嗟に聞いた。」
「おぉ偉いぞ!!次はメッセージ送ってみよ」
「俺も何回も送ろうと思ったんだけどさぁ、、もう忘れられてるかもだし迷惑かなって…」
「大丈夫ちゃんと覚えてくれてる。大丈夫。」
「よし、、送る!!!!俺頑張る!」
そう言うと光は『連絡遅くなってすみません。この前は助けてくれてありがとうございました。』と文字を打った。
「いいねまじで良い最高」
「うぅ…返信来なかったら慰めろよな….」
と、ついに送信。
ふーっと一息ついた光の手は震えていて、それが何だかすごく愛しくて。この光景が電波に乗って新田先輩に伝わればいいのにと思った。
お互いを労い、コーヒーを1口飲んだ直後、光の携帯が振動した。
「ん?…ってえ?!新田先輩からだ?!!」
「え!?」
予想以上に早い返信に驚いた。
「『俺からも連絡しようと思ってたんだけど、なんか気恥ずかしかったこちらこそすまん!!助けたことはもう気にせず、感謝とかそういうの抜きで仲良くしてくれ!』って…」
…これもしかして、いやもしかしなくても…かなり良い感じなのでは??
俺も新田先輩とは何度かやり取りしたことがあるが、もっと返信速度は遅かったし割と簡潔な文だった。
「いや光これ、お世辞とかじゃなくて本気であると思う。ガチ。」
「へ、え、本当に?」
「さすがにまだ恋愛として意識されてはないにしても、かなり光のこと気にかけてるよ。」
ほら、といつもの俺と先輩のトーク履歴を見せた。
返信速度と文字数の差に光自身も驚いていた。
「人で態度変えるような性格じゃないから、多分無意識で光には甘くなってんだろーな」
そう言うと、光の耳が真っ赤になっていくのが見えた。
「へ、返事しなきゃ…!!『ありがとうございます。俺も先輩と仲良くなりたいです』とかでいいかな?」
「うん最高」
適当に言ってる訳ではなく、光は無自覚で人をたらす天才なのだ。何故か文面からその人懐っこさが伝わってくる。
またすぐに光の携帯が振動した。
『おう!!明日昼飯誰かと食う予定ある?』
という文面が目に入った。これもう誘われるだろ。
「え、えっと『想とたべる予定でs』」
「バカか!!!!!」
バカ正直に答えようとする光の手を止めた。
「お前これ誘われてんだよ!!俺は明日別のやつと食うからお前新田先輩のとこ行ってこい!」
「ええぇこれ誘い?!」
すぐに『ないです!』と書き直した光の元には、案の定一緒に食べようという誘いのメールが届いた。
「よかったな!光!!」
「夢みてぇ……」
「絶対物にしろよこのチャンス」
「まじで頑張るありがとう!!」
…本当によかった。上手くいけばいいなぁ。
そんな思いにふけっていると、今度は俺の携帯が鳴った。
「あ、悪い電話。ちょっと出てくるわ」
と席を離れ店前まで出て電話に出た。
『もしもし、想くん?』
「先輩!どうしたんすか?」
『え、えっとね、明日お弁当つくりたいなーって…』
「?偉いっすねまじで!!頑張ってください!」
『っいやそうじゃなくて..!想くんに…!』
「へ?!俺に?!」
『う、うん..明日部活ないし、会えないのは嫌だから…お昼一緒に食べない、?』
今なら死ねる。幸せすぎる。
「もちろんですよ!!!!うわもう夢みたいです楽しみです!」
『..ふふ、私も楽しみ!』
「…じゃあ、また明日!大好きです、先輩。」
そう言って切ると、先輩からメールで『ずるい、照れちゃった』と来ていた。
あぁ、幸せだ。
店内に戻ると、俺らはお互いにやけ面に声を上げて笑ったのだった。
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