テラーノベル
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夜風が二人の間を静かに通り抜ける。
照は何も言えなかった。
“その人、幸せだね”
ふっかのその一言が、胸の奥へ深く刺さったままだった。
────────
💛side
言えるわけない。
その”幸せな人”は、お前なんだ。
喉まで出かかった言葉を、何度も飲み込む。
言えば終わる。
今まで築いてきた関係が。
ジュニア時代から積み重ねてきた時間が。
全部壊れる気がして。
💛「……そうかな」
やっと出た言葉は、それだけだった。
💜「うん」
ふっかは少し笑う。
💜「だってさ」
💜「照に好きになってもらえる人でしょ?」
💜「そんなの絶対いい人じゃん」
照は苦笑した。
(違う)
いい人だから好きになったんじゃない。
気付いたら好きだった。
笑う顔も。
くだらないボケも。
誰かのために頑張るところも。
全部。
好きになってしまっていた。
💛「……帰ろう」
それ以上話していたら、本当に全部言ってしまいそうだった。
────────
💜side
照が逃げた。
そんな気がした。
さっきまで普通だったのに。
“好きな人”
その話になった途端、照の表情が変わった。
(やっぱりいるんだ)
胸の奥がズキッと痛む。
「なんで痛いんだろ」
自分でも意味が分からなかった。
照に好きな人がいても、おかしくない。
三十代。
恋愛くらいする。
7,297
あずさ
153
当たり前のこと。
なのに。
💜「……やだな」
ぽつりと零れた。
何が嫌なのか。
まだ分からない。
────────
数日後。
Snow Man全員で雑誌の撮影。
テーマは、
“メンバー同士の絆”
インタビューでは、お互いについて語る企画だった。
「では次の質問です」
スタッフが台本を読む。
「最近、メンバーにドキッとした瞬間は?」
💜「えぇ?」
🧡「急やなぁ!」
💙「ないだろ普通」
みんな笑う。
スタッフも笑いながら続けた。
「恋愛じゃなくても大丈夫です!」
「かっこいいな、とか尊敬した、とか!」
❤️「なるほど」
順番に答えていく。
🧡「ラウかな!」
🤍「えぇ嬉しい!」
💚「僕は舘さんですね」
❤️「ありがとう」
笑いながら進んでいく。
そして。
「深澤さんは?」
💜「俺?」
少し考える。
自然と一人の顔が浮かんだ。
💜「照かな」
照が顔を上げる。
💜「この前のライブでさ」
💜「最後まで全員のこと見てて」
💜「あぁ、この人ほんとすごいなって思った」
「あと」
💜「昔から変わんないんだよね」
💜「誰より優しいし」
💜「ちゃんと見てくれてるし」
💜「そういうとこ尊敬してる」
照は何も言えなかった。
目を逸らすことしかできない。
「では岩本さんは?」
スタッフの声。
心臓が大きく鳴る。
💛「……」
答えなんて決まってる。
深澤。
でも。
そんなこと言えるわけがない。
💛「全員」
💙「逃げた」
🧡「照くん逃げた!」
楽屋に笑いが広がる。
照も笑った。
でも。
ふっかだけは少し寂しそうだった。
────────
💜side
“全員”
照らしい答えだった。
誰も傷付けない。
誰も特別にしない。
でも。
(俺だけじゃないんだ)
当たり前なのに。
少しだけ悲しかった。
撮影が終わり、着替えを済ませる。
スマホを見ると、一件の通知。
照
珍しく照からだった。
《今日、時間ある?》
短い一文。
思わず笑みがこぼれる。
《あるよ》
すぐ返信する。
数秒後。
《じゃあ、いつもの公園》
“いつもの公園”
ジュニア時代。
仕事帰りによく二人で寄っていた場所。
最近は全然行っていない。
(急にどうしたんだろ)
少しだけ胸が高鳴る。
その頃。
────────
💛side
スマホをポケットへしまう。
もう限界だった。
距離を置いても。
忘れようとしても。
全部無駄だった。
会うたび好きになる。
笑うたび苦しくなる。
「……今日言おう」
もし終わるなら。
ちゃんと終わらせよう。
伝えないまま後悔するくらいなら。
嫌われてもいい。
逃げるのは今日で最後にしよう。
そう小さく決意すると、照はゆっくりと夜空を見上げた。
長い片想いが、少しずつ終わりへ近付いていた。
コメント
3件
私の片思いじゃないのに、ものすごく心が痛くなるくらい、関心をもって、見ちゃう〜!
うわ……もう、胸がぎゅっとなる展開すぎますね。照の「その“幸せな人”は、お前なんだ」っていう心の声、刺さりました。言いたくても言えない、でも言わないと後悔する……その葛藤が丁寧に描かれていて苦しい。ふっかが「俺だけじゃないんだ」って寂しそうにするシーンも切なかったです。ラストで照が「言おう」と決意して夜空を見上げるところ、すごく好きです。続きが気になる……!