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ちろりーぬ
164
なーさん。です
200
⚠原作では高1が続きますが、ここでは進級します(笑)
助っ人
4月。竜一たちは高校2年生になった。
「りゅうーっ!かみた!おはよーっ!」
「おねえちゃん…、おはよ…」
『拓馬くん、数馬くん、おはよう』
「え、2人とも俺は?」
「うしゃもおはよー!」
「“も”だってさ」
狸塚家の双子の兄弟が保育ルームにやって来た。
「おはようございます…」
しょんぼりと肩を落として現れたのは2人の父。
「あれ?狸塚さん、元気ないですね。どうかしたんですか?」
「竜一くん……」
目をうるうるさせる狸塚父。
「実は、今度撮影のドラマに出る筈だったエキストラさんが怪我で来られなくなっちゃって。みんなで手分けして知り合いをあたって代わりの人を探してるんだけど、なかなか監督のイメージに合わないらしくて困ってるんだ…」
「そうだったんですか…。大変ですね…」
竜一も一緒になって眉を下げる。
「どんなイメージの子を探してるんですか?」
兎田が質問する。
「えっと、まずは英語を話せるのが絶対条件で、あとは色白で、身長は150〜155cmの女性なんだって。あと何かしら楽器ができる…」
「色白でそのくらいの身長の女なんてそこら中にいるだろ。英語話せる奴だって」
「肌は化粧でどうにもなるんじゃないんですか?」
隼と兎田が指摘する。
「監督曰く、お化粧せずとも元から美しい色白さんがいいらしくて……」
「楽器ができる、元から美しい色白さんならそこにいますよ〜」
「えっ」
兎田が指差した方向には拓馬と数馬の朝の準備を手伝う咲茉の姿。
「エマちゃーん。ちょっといい?」
『え?あ、はい』
きょとんとした表情でこちらに来る咲茉。
「エマちゃん身長いくつ?」
『えっと、154cmです』
「確か英語話せたよね?」
『はい。小さい頃ちょこっとだけ外国に住んでたので…』
「吹部での担当楽器は?」
『フルートです。…あれ?兎田さん知ってる筈じゃ…』
「…って感じですけど、狸塚さん、彼女どうですか?打楽器もピアノもできますよ」
兎田と咲茉のやり取りを聞いていた狸塚父が目を輝かせる。
「かっ、完璧だよ!監督のこだわりの条件にぴったり合う!…結城さん、だったよね?申し訳ないけど、今日、一緒に来てもらえないかな?明後日から撮影開始なんだ」
『ええっ!?』
「すごいね、結城さん!ドラマ出演かもしれないって!」
「まだ決まったわけじゃねえだろ」
『ど…、ドラマなんて私、お芝居の経験もないのに…』
咲茉が慌てふためく。
「まあまあ、エマちゃん。ものは試しっていうじゃん。ほんとに採用されるかどうかは分かんないけど、とりあえず人助けだと思ってさ、狸塚さんと一緒に監督のところに行ってみてあげたら?」
「どうかお願いします…!」
顔の前で手を合わせて懇願する人気俳優の狸塚恒介。それ以前に、出会ってすぐから自分を慕ってくれている可愛い拓馬と数馬の父親だ。
『うーん……。いいですよ。力になれるかは分かりませんが…』
「ありがとおおお!!」
がばっと咲茉に抱き着く狸塚父。それを面白そうに写真におさめる兎田と、熱い抱擁を目撃して顔を赤くする竜一、面白くない隼。
「理事長先生には僕から連絡しておくからね」
『いいんですか?』
「もちろんだよ!こっちが無理言って頼んでるんだし。大事なお嬢さんを預けてもらうんだから」
『じゃあ、お願いします』
朝のホームルームが始まるので教室へ向かう3人。
『なんか…、とんでもないことになっちゃった……』
咲茉の顔が強張っている。
「大丈夫だよ!ほんとに採用になったら、俺、全力で応援するから!ね、狼谷」
竜一が明るく声を掛ける。
「あ?ああ。…でも結城はべつに乗り気ってわけじゃねえんだろ」
『だってお芝居の経験もないのに突然ドラマのエキストラなんて。狸塚さんみたいな人気の俳優さんが出る作品だよ。たまたま監督さんの求める条件に合っちゃったからって、荷が重すぎる…』
「うーん…。そう言われたらそうだよね…」
「まあ、もしかしたら他にも候補の奴連れて来られるかもしんねえし、その時は全力で断ったらいいんじゃね?あんま気負うな 」
『うん…』
2人と別れ、咲茉は浮かない顔のままB組の教室に入っていった。
その日の夕方、理事長からも承諾を得て、咲茉は迎えに来た狸塚父とそのマネージャーに連れられて監督の元へ向かった。
『ただいま帰りました…』
「お帰りなさいませ、咲茉様」
「結城さん、おかえり!」
「おねちゃ!」
「おかえり、咲茉。…で、どうだったんだい?」
咲茉が森ノ宮邸に帰ってきたのは、竜一たちも既に帰宅した後だった。
『………になりました……』
「え?」
『採用に…、なっちゃいました……』
全員が目を見開く。
「えっと、お、おめでとう!…って言っていいのかな」
「ドラマ出演おめでとうございます、咲茉様。お赤飯を…と言いたいところですが、今日は既にお食事の用意をしてしまった為、明日のお夕飯にお赤飯を作らせていただきます」
『ははは…。ありがとうございます…』
疲れた顔で咲茉が力なく笑った。
「咲茉。断ってもいい話を受けたんなら、最後までしっかりやんな」
『…はい』
その後みんなで夕食をとり、竜一と虎太郎、咲茉は自分たちの部屋へと戻ったのだった。
“結城さん、起きてる?”
今日受け取った台本に目を通していた時、竜一からメッセージが届いた。
“起きてるよ”
咲茉もすぐに返事を送る。
“少し話したいんだけど、いいかな?”
“いいよ。私の部屋に来る?虎太郎くん寝た後なら私がそっちに行こうか?”
“じゃあ、来てもらっていいかな?”
“分かった。今から行くね”
咲茉からのメッセージが返ってきた数分後、竜一と虎太郎の部屋の扉がノックされた。
ガチャ
「結城さん、急にごめんね」
『大丈夫だよ。どうしたの?』
お邪魔します、と言って部屋に入る。
少しの沈黙があって、竜一が口を開いた。
「…結城さん、無理してない?エキストラの件」
『無理は……。全くしてないって言ったら嘘になっちゃうね』
咲茉が眉をハの字に下げて笑う。
「他に候補の人はいなかったの?」
『2、3人いたけど、監督さんが私がいいって言ってくれて』
「断れない雰囲気だった?」
『うーん……。絶対断れないわけでもなかったと思うけど。やっぱり困ってるみたいだったし、狸塚さんの顔も立てたほうがいいのかなって。拓馬くんや数馬くんにも仲良くしてもらってるし』
「結城さん……」
咲茉は困っている人を放っておけない性格なのだろう。でもそれで彼女の負担が大き過ぎて潰れてしまう恐れがあるなら、どうにかしてやらなければと竜一は思ったのだ。
『鹿島くん、心配してくれたんだよね。ありがとう。大丈夫だよ。やれるだけやってみる』
「でも…。結城さんが我慢して自分の気持ちを抑え込んでまでしなくたっていいんだよ」
『ううん、大丈夫。狸塚さんに連れられて行く時点で、ある程度の覚悟はして行ったつもり。…まあ、ほんとに採用になるなんてって感じだけど。これは新しいことに挑戦できるチャンスなんだと思ってやってみる。引き受けたからには最後まで責任持って撮影に臨むわ』
そう言った咲茉は、先程の困ったような笑顔とは違う、凛とした表情をしていた。それを見て、竜一は思わず心臓が小さく跳ねるのを感じた。
「そっか。結城さん本人が言うなら。…俺、応援してるからね!もし必要だったら家での練習も付き合うよ」
『うん、台詞のチェックとか、演技の練習に付き合ってってお願いするかも』
「もちろんいいよ!俺で力になれるなら」
『ありがとう』
2人で笑い合う。
『鹿島くん、ありがとう。気に掛けてくれて嬉しかったよ』
「大きなお世話かもとは思ったけど、そう思ってくれてよかった。呼び出してごめんね。おやすみ」
『おやすみ』
パジャマの上からカーディガンを羽織り、咲茉は自分の部屋に戻っていった。
2日後。ドラマの撮影が始まった。咲茉が出演するのはほんの少しの時間だが、髪のセットだったりメイクだったりの役者の準備もきっちり行われた。
咲茉の演じる役は、10分程フルートを吹くのと、英語の台詞が3つ。
「あ、狸塚さんからだ〜」
兎田のスマホに狸塚父からメッセージ付きの写真が送られてきた。
「うしゃ!ぱぱなんて?」
「ぱぱ…」
自分の苗字を呼ばれて、双子の兄弟が反応する。
「えーっと、何なに?…“結城さん、演奏も演技もとってもよくて、全部一発OKでした。”…だって。写真もあるぞ。ほら」
「みるー!」
「かじゅまもみる…」
「おでもみたいじょ!」
「きりんにもみしぇてくだしゃい!」
「こたもみる」
「あーぶ!」
子どもたちが団子になって兎田のスマホに集中する。
「エマおねえちゃまかわいいでしゅ!」
「ぱぱとおねえちゃ!」
「かっこいい…」
目を輝かせる子どもたち。ひと通り子どもたちに見せてから、兎田も送られてきた写真を見る。
「これは…、エマちゃん超絶可愛いわ。隼と竜ちゃんも見てみ?でも覚悟が要るかも」
「…………」
「覚悟して見るレベルなんですか」
兎田がスマホの画面を2人に向けた。
「「!」」
2人が目を見開く。
そこには“俳優”の顔をした拓馬と数馬の父と、ドラマで演じる役の為にメイクを施された咲のツーショット。
「わあ……。結城さん、綺麗…」
「…………」
素直に感想を述べながら少しだけ頬を赤くする竜一と、無言で画面を見つめる隼。
マジかよ……。元々美形なのに、化粧と衣装でこんなに変わるのか……。
大きく脈打つ心臓の音が直接耳に届きそうだ。隼はそれを誤魔化すように立ち上がり、子どもたちが散らかしたブロックを片付け始めた。
咲茉がエキストラとして出演したドラマは、撮影の1ヶ月後にオンエアされた。放送時間が夜9時からなので、虎太郎はもう寝た後だ。理事長、犀川、竜一、咲茉で、記念すべき第一話をリアルタイムで鑑賞。もちろん、録画もばっちりだ。
画面の中の咲茉は初めて出演したとは思えない程の自然な演技をしていた。
「咲茉様の輝きは主演女優をも凌ぐ程でした。この犀川大変感動いたしました」
「よかったじゃないか。演技も演奏も。台詞の英語の発音も綺麗だったね」
「堂々としててすごかった!結城さん頑張ったんだね!」
『ありがとうございます。緊張したけど楽しかった』
口々に褒められて、咲茉が照れたように笑った。
人気俳優の狸塚恒介も出演していた新ドラマ。それをチェックしているファンの中には当然、森ノ宮学園の生徒もいるわけで。言わずもがな、高等部2年の女生徒がそこに出演していたという話はあっという間に広まったのだった。
つづく
コメント
1件
わあ、咲茉ちゃんついにドラマデビューしちゃったんだね…!あの条件が全部彼女に当てはまるって偶然すごすぎ。でも断れない雰囲気の中で引き受けちゃうとことか、困ってる人を置いておけない性格がにじみ出てて、咲茉ちゃんらしいなって思ったよ。 竜一くんが夜に呼び出して心配するシーン、すごく優しくてじーんときた…。咲茉ちゃんが「凛とした表情」してたとこ、なんかグッときちゃったなあ。撮影一発OKとかすごすぎるし、オンエアみんなで観てる光景がほっこりした🥀✨ 次、学園中に広まっちゃうみたいだけどどうなるんだろ…続き気になる!