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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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こちらに気づかないか息を潜めて見守っていたが、彼女は一緒に校門から出てきたショートヘアの友人に『バイバイ』と言って反対側へ自転車を漕いでいった。


友人はスマホを見ながら、こちら側に歩いてくる。


――仕方ない、今だ。


『すみません』


勇気を出し、俺はショートヘアの少女に声を掛け、近づいた。


俺は自分の容姿を客観的に理解している。


恐らく、十人中八人は俺を見て『高身長のイケメン』と答えると思っている。


だから愛想笑いをすれば、大抵の人には受け入れてもらえると踏んでいた。


彼女も例外なく、自分に笑いかけてきた俺を見て〝男〟を意識し、立ち止まった。


『……な、何ですか』


それでも〝知らない人に話しかけられた危機感〟はあるんだろう。彼女は学校のほうをチラッと見たあと、構わず歩き続ける。


俺は付きまとっている様子を見せず、彼氏のように自然に彼女の隣を歩いた。


『今野朱里さんとは友達?』


彼女の名前を聞き、ショートヘアの少女は目を見開き、歩を緩める。


『……どうして朱里の名前を……』


『大切な話があるから、少し付き合ってもらえないかな。不安なら人が大勢いる場所を選ぶし、時間はとらせない』


『でも……』


少女はまだいぶかしがり、俺を胡散臭そうに見る。


『怪しむ気持ちは分かる。だが話したいのは朱里さんの命や、身の危険に繋がる事だ。……彼女、正月に愛知県に行ったと言っていなかったか?』


彼女は目を見開き、驚いた様子で俺を見た。『どうして知っている?』という顔だ。


『俺は年末年始、一人で名古屋に行った。その時に偶然朱里さんと出会ったんだ。……彼女は旅先で、橋から飛び降りようとしていた』


今度こそショートヘアの少女は、大きく息を吸って立ち止まった。


『……道理で……、様子がおかしいと思った……』


『君には言ってなかった?』


穏やかに尋ねると、少女はコクンと頷いて提案してきた。


『場所を変えて話しませんか? 学校の周りはちょっと……』


『分かった。近くに車を停めているけど、中野を離れても大丈夫? 誓って変な事はしないし、もし様子がおかしいと思ったらすぐ通報して構わない。……でも一応、朱里さんの命を助けた男だと思って信頼してほしい』


『……分かりました。私、中村恵と言います。あなたは?』


『篠宮尊。二十歳の大学生だ』


名乗ってから通っている大学名を伝えると、名のある大学だからか彼女の俺を見る目が変わった。


『じゃあ、行こうか』


俺はポケットに手を入れて車のキーを確認し、駐車場に向かって歩き始めた。






そのあと車で移動し、恵比寿に向かった。


入ったのは以前来た事があるカフェで、店内に暖炉がある雰囲気のいい所だ。


『何でも注文していいよ』


『ありがとうございます』


彼女はメニューを捲って迷ったあと、ニューヨークチーズケーキとカフェラテに決めた。


俺はホットコーヒーを頼み、時間を確認してから一つ溜め息をつく。


改めて中村さんを見ると、サラサラしたショートヘアと爽やかな顔立ちも相まって、スポーツが得意な皆の人気者という印象がある。


勝手なイメージだが、中性的なので同性から人気がありそうに思えた。


『朱里が自殺しようとしていたって、本当ですか?』


どうやって切り出そうか迷っていた時、先に中村さんが口を開いた。


彼女はとても思い詰めた表情をしていて、親友なのに朱里の危機を知らなかった事へのショックが窺えた。


『……彼女がショックを受ける出来事に心当たりは?』


一応、自分としては父親の死が原因だと思っていたが、他にも原因はないか聞いてみようと思った。


そう尋ねると、中村さんはチラッと周囲を見てから小さめの声で答える。


『お父さんが亡くなったと聞きました。死因は教えてもらっていないのですが、仲のいい家族だったから、かなりガックリきたみたいで』


『他には?』


さらに質問したが、中村さんは少し考える素振りを見せたあと首を左右に振った。


『他には特に思い当たりません。学校では一人で行動しているんですが、特にいじめっれているようにも見えませんし、一人でも平気みたいな事を言っていたので、友人関係で悩んでいるようには思えません』


彼女の答えを聞き、俺は安心して頷いた。

部長と私の秘め事

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14

コメント

2

ユーザー

朱里ちゃんは かなり心を閉ざしっきっていたんだね。恵ちゃんにも言ってないんだもんね。🥺

ユーザー

朱里ちゃん恵ちゃんにもその話はしなかった、できなかったんだね。 「忍」の事は胸にしまってお守りのようにしようとしたのかな。

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