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ゆゆゆゆ
店を出たあと。
昼の光はまだ残ってるのに、
さっきまでの空気がそのままついてきてるみたいだった。
「……」
「……」
並んで歩いてるだけ。
なのに、さっきテーブルの下で触れてた感覚が、
まだ残ってる。
(……くそ)
エリオットはポケットに手を突っ込んで、
わざと前を向く。
隣を見ない。
見たら——余計に意識するから。
「どこ行く?」
チャンスが軽く聞く。
「……どこでも」
投げるみたいな答え。
でも、完全に“どこでもよくない”。
チャンスはそれを分かってる顔で、
少しだけ歩く速度を落とす。
「じゃあ——」
細い路地の方へ、さりげなく曲がる。
人通りが、ぐっと減る。
「おい」
エリオットが少しだけ眉を寄せる。
「こっち何もないだろ」
「そうだな」
平然と返す。
でも、その声が少し低い。
さっきより近い。
気づいたら、距離が縮まってる。
「……」
エリオットの喉が小さく動く。
(やばい)
分かってる。
この流れ、分かってるのに——
止まれない。
「なぁ」
チャンスが呼ぶ。
すぐ横で。
「……なに」
視線を向けた瞬間、
腕を引かれる。
「っ……!」
壁に、軽く押し付けられる。
音が、やけに大きく響いた気がした。
「……我慢できねぇんだろ」
低い声。
逃げ場は、もうない。
「……お前がな」
言い返すけど、
声が少しだけ揺れてる。
チャンスはそれを見て、
少しだけ笑う。
「どっちもだろ」
距離が、近い。
さっきのカフェとは違う。
誰も見てない。
「……っ」
エリオットが何か言おうとした瞬間、
指で軽く顎を上げられる。
「帰ったらって言ってたよな」
「……言った」
「でも」
少しだけ顔を近づけて、
「無理だ」
そのまま——
触れる。
今度は、さっきみたいな焦らしはない。
でも荒いわけでもない。
“抑えてた分”がそのまま出たみたいな温度。
「……っ、ん……」
エリオットの手が、
無意識にチャンスの服を掴む。
押し返すでもなく、
完全に受けるでもなく——
引き寄せてる。
「ほら」
一瞬だけ離れて、
「ちゃんと来いって言ったろ」
低く囁かれる。
「……来てるだろ」
小さく返す。
でも、その声はもう完全に違う。
さっきの強がりじゃない。
チャンスはそれを聞いて、
少しだけ満足そうに目を細める。
「ならいい」
また距離を詰める。
今度はエリオットの方から、
ほんの少しだけ先に動く。
「……っ」
触れる寸前で、息が重なる。
その一瞬が、やけに長い。
さっきまでの我慢が、
全部ほどけていくみたいに。
路地裏の静けさの中で、
足音も、声もないのに、
二人の距離だけが——どんどん近くなる。
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