「こら!大した用もないのに走らない!」
「ロウ!せめてシャツはしまって!」
「ロウきゅん、ちゃんと勉強してんの?」
赤城ウェンとかいう俺の幼馴染は母親か先生かってくらいうるさい。口を開けば文句・説教・煽りの3点セット。口を開いた二言目には煽り。なんなんだこいつ。自分のことは棚に上げて人のことばっかり。普段はかわいこぶったりして自分の方がチャラチャラしてるくせに変な所では真面目で人のことに関しては人一倍敏感。自分のことにはあり得ないくらい鈍感。まじでなんなんだ。
小 柳ロウという男は腹が立つ男だ。普段そっけないふりして普通に優しいし、人をすぐ惚れさせる。本人にその自覚がなくて、分かりやすい性格だからロウのことが好きな女の子たちは脈ナシのことにすぐ気づいて傷ついてる。いつも僕はその子たちのことを遠目から見てるんだけど、ないてる姿をみたこともあったりして少し複雑。ロウに伝えるわけじゃないけど、僕は穴埋めに使われて正直いい気はしてない。だから、密かにロウを恨んでやる。
今ごろウェンは何をしているのか。教室を後にして考え事をしながら一人廊下を歩く。人が居なくなったあとの夕日が差し込む教室はエモいというやつだろうか。廊下の冷えた床とスリッパの裏が当たる音が無駄に大きく廊下に響く。歩きながらスマホをいじっていると中庭から声が聴こえてくる。目を向ければ見慣れたピンク髪と見慣れない茶髪。このまま見つめていれば恐らく向こう側のウェンと目が合うのだろう。このまま雰囲気を台無しにしてやってもいいけどさすがにそれは可哀想だから大人しく帰ろうとした時、「あの、」と、聞き慣れない声に呼び止められた。
「あ、あの!小柳ロウくんですか!」
「あぁ、はい…」
聞き慣れない勢いのある大きく高い声。振り返れば知らない黒髪ロン毛。誰だと探してみても記憶に存在しない。手に握られている手紙、緩やかに巻かれ、丁寧に整えられた髪と爪、少し折られて短くなってるスカート。これだけ揃っているんだ。目的はわかるだろう。自惚れかもしれないが告白、あるいは〇〇は好きな奴がいるのか、〇〇は何処に居るのか、のどれかだ。考え事をやめて目の前の黒髪を見つめる。俺よりも小さい目の前の存在はは俯いていて、表情を伺うことはできない。
「わ、私!ロウくんに助けてもらってからずっと好きで!」
あぁ、告白のほうか。高校に入ってからはだいぶ収まったと思ったんだけどな。やっぱりそんな簡単にはいかないのか。断るのも気が引けるし、かといって付き合う気もない。まぁ、中学の頃に告白される側の気持ちも考えて欲しいという思いはそっと閉じたが。俺は気づいていないふりをしているが、ウェンが穴埋めに使われてるのも知っている。だからこそ、告白は面倒だ。
「だから!付き合ってください!!」
バッ!と目の前の存在は頭を下げる。下に向かって流れる艶のある黒髪は魅力的には映らない。
「っ〜、あー、っと……ごめん…今はその気ねぇんだわ」
いつも通りの素っ気ない返事を心がける。めんどくさいという感情が相手に伝わらないように。
「…そ、ぅだよね…ご、ごめんなさい!
話、聞いてくれてありがとうございました、!」
俺の返事も聞かずに長い髪を靡かせながら隣を通り抜けていく。名残惜しさや罪悪感は0に等しい。こんなことを言えば批判されてしまうのだろう。別に気にしないからいいが。降ろしていたスクールバッグを拾って肩にかける。スリッパを軽く履き直して、腕まくりして。さて、帰ろうかと振り返ろうとした時。
「ぁ、ロウ」
後ろから今度は聞き慣れた声が俺の名前を呼んだ。振り向けば見慣れたピンク頭。
「何してんの、こんなとこで」
「あー、告白されてた」
「?あ、さっきの… 」
コメント
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あばばば💦 めちゃキラひろってもらって感謝です✨続き楽しみしてます♡