テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
自分がダメだったから、妹とくっつけて側におこうとしたんじゃないよね……?本当に、この人が何を考えているのか分からない。
やだなぁ、僕。ペットの分際で、人のことを悪い方にしか考えられない。性格がどんどん悪くなっていく気がする。
「……そういうの、あまり人に言うのは良くないと思いませんか? いつきさんだって僕に言えないから、あなたの前で愚痴ってるわけですし」
だめだ。この人に対して、どうしても優しくなれない。
自分でも自覚できるほど、嫌な「裏の僕」がどんどん溢れ出してくる。
「ゆうたさんは分かってないなぁ。いっちゃんの愚痴は、他力本願で『本人に伝われ!』って思ってる愚痴なんです。それに、他にも色々言うてたけど……それはまだ、ゆうたさんには伝えてへんし」
カッチーン、ときた。
本当に、僕はこの人とは合わない。目の前のお酒も、ちっとも美味しくない。
「……僕は、あなたが嫌いです。だから、今後一切お話しする気はありません」
財布からお札を引ったくるように取り出し、テーブルに叩きつける。
別に嫌われたっていい。僕にはいつきさんがいる。それだけでいいんだ。
「……それってさ。もしかしてヤキモチ妬いてたりする? 僕がいっちゃんと仲ええから」
「そ、そんなわけないだろ! 僕のいつきさんへの気持ちは、あなたになんて到底追い越せないし、いつきさんだって僕の方が好きに決まってる! だから、ヤキモチなんて……っ!」
……うわ、言いすぎた。
完全に図星だ。勝手にいつきさんのことを信じられなくなって、勝手にヤキモチを妬いて……マジで最悪だ。寄り道なんてしないで、まっすぐ家に帰ればよかった。
「……よかったぁ。ゆうたさん、ちゃんと感情ある人やった! 僕、ちょっと心配してたんですよね。ゆうたさんって、頭の中でぐるぐる考えて、思ってること何にも言えへんタイプでしょ? それって、どんどん秘密が増えて、自分を隠して……しんどくなって、いつか全部嫌になってくるんですよね。僕も、そうやったから」
なんなんだ、この人は。僕がガチギレしたっていうのに、なんでそんなに嬉しそうに笑っているんだ。
「まぁ、座りましょ。改めまして。僕、元・宮川しゅうとです。こないだ結婚したんですけど、籍に入れないから彼の苗字を名乗れないのが悔しいんですけど……まぁ、自称・長谷川しゅうとです。よろしく」
「え、あ……はい。よろしく……」
え、結婚? 彼?
この人、いつきさんのことが好きだったんじゃないの!?
「初対面の時も、さっきも、怒らせるようなことして本当にごめんなさい。いっちゃんは、僕と旦那さんを結びつけてくれた、とても大事な人で。どうしても、いっちゃんには本当に好きになった人と深く上手くいってほしくって。……ゆうたさんの『本気』を知りたくて、嫌なことばっかり言いました。本当に、試すようなことしてごめんなさい!」
「あ、いえ……」
うわ、マジで気まずい! 本心が知りたいなら、もっと違うやり方あったでしょ!?
これじゃあ、僕の性格が悪いところしか見せられてないじゃないか。
「僕、本当はこういうことしたことなくて。ああやって人の気持ちを煽って、ヤキモチを焼かせて、『好き』を深くさせるやり方って……実を言うといっちゃん仕込みなんですよ」
「……それって、いつきさんがしゅうとさんのことを好きなふりをして、旦那さんのことを煽ったってことですか?」
「そうです。あ! でも、いっちゃん、本当に男の人に興味ないので、そこは心配しなくていいです! いや、違うな。……『ゆうたさん以外の男の人』には、って言い方のほうがいいかな」
「……へぇ、そうなんだ」
なんだか、嬉しい。
自分が「選ばれし者」になったみたいで。
でも……やっぱり「女の子」は好きなんだよね。ライバルが女性なのは、絶対に勝てる気がしなくて、やっぱり少し苦しくなる。
「あー! また何か考え込んでるでしょ? いいんですよ。僕、本当は口が固いんで。思ってること全部言って、スッキリしちゃいましょう?」
さっきまでとは打って変わって、ニコニコの笑顔で前のめりになってくる。
あ、この人……絶対に「天使ちゃん」だ! あの、僕のことを勝手に振った人が言っていた、天使ちゃん。
「あの……僕、いつきさんのことを知りたいです。お店に来てくれた人たちも、いまいちどんな関係なのか分かってなくて。……相関図、書いてもらえませんか?」
「相関図!!」
僕の「相関図」という言葉に、しゅうとさんがツボっている。何か変なことを言ったかな。
「僕もね、初めてあの人たちとご飯食べに行った時に同じこと言ったんです! いつきくんに『しゅうとに似てた』って言われたけど、こんなところまで似てるとは(笑)」
ふふふ、と笑って本当に楽しそう。よかった。嫌な一日で終わると思っていたから、少し安心した。
「えっと、営業部・課長のいつきくん。その補佐が僕の旦那さんのだいきさん。その部下に、いっちゃんとりゅうせいくんがいます。だから、この四人は仲良し。で、僕はもともと会社の受付で、りゅうせいくんと友達なんです」
「はい。お顔の綺麗な人がりゅうせいくん、優しいお顔の人がいつきさん……ですよね」
「そう。で、いつきくんとりゅうせいくんがカップル。だいきさんと僕がカップル。まぁ、いっちゃんはフリーなので、その辺をうろちょろして毎日上司をからかって遊んでます」
「ふふっ、意外ですね。可愛い」
「ちなみに、りゅうせいくんは四年、だいきさんは八年……いつきくんに片思いしてました」
萩原なちち