夏休みが明け、9月になった。あんなにも五月蠅かった蝉時雨もどこに行ったのやら、静かな朝を迎える。聞こえてくるのは外を走る車の音と鳥の囀りくらい。横たわるからだを起き上がらせ、時計を見る。もういかなきゃ。
「よ、赤瀬、元気か?」
「なんだよ、いきなり。」
「いや、なんか最近お前元気あるなって思ってさ。夏休みなんかあったかなって。」
「な、なにもないよ。」
こいつは、増田玲央。僕の数少ない友達の一人で中学からの仲だ。
「ほんとか?怪しいな。」
「ほんとだって、なんもない。」
「うーん、そうだな、じゃあ最近仲良くしてる忽那さんとか?」
「はっ?なんでしって、」
「お、あたりか。だろうと思ったんだよ。最近やけに忽那さんのほう向いてるし、忽那さんもお前のこと見てるしな。」
「いや、きのせいじゃないかなーあはは。」
「バレバレなんだよ。最近忽那さんもかなり明るくなったもんな。お前ら夏休みなにがあったんだよ。」
あんな恥ずかしいセリフをいって仲良くなったなんて口が裂けても言えない。なんだよ、僕と、ともだちになってよって。今はなんとかなってるけど、冷静に考えたら意味の分からないくさいセリフばかり言っていた気がする。穴があったら入りたいとはまさにこのことだろう。
「まあ、なんでもいいけど。がんばれよ。」
「うん。」
何が頑張れだよ。まあ、ありがたくうけとっておくか。
夏休みを開けた僕たちの生活は少し変わった。もうクラスの唯一の友達にもばれたこともあり、かなりふっきれた。それから普通に二人で話すようになった。あの夜に彼女は大きく変わった。天文学を学ぶのはやめて、友達を作ってイベントごとにも積極的に参加するようになった。忽那さんは本当のじぶんを見つけたのだ。僕のおかげ、なんておこがましいことは言えないけど彼女が友達の前で心から笑っているを見るとあの日呼び止めてよかったって思える。ほとんど僕の自己満だったけど。
「赤瀬君。」
教室で思い出を振り返っていると後ろから声がした。
「忽那さん、どうしたの?」
「えっと、今日スタバの新商品がでるんだって。」
「あ、あの巨峰味のやつ?ネットで見た気がする。」
「それ、きになってて帰り一緒によらない?」
「うん。いいよ。いこっか。」
「ありがと。」
そこからは他愛もない会話つづけた。こんな感じで僕たちのあの不思議な関係は終わってしまったけど、今はそれ以上に幸せな日々を送ってる。こんな日々が来るなんてゆめにも思っていなかった。今僕は本当に幸せだ。
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