テラーノベル
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俺、凸もりがマフィア令嬢のおどろくちゃんの教育係になって半年。俺は少しだけ丸くなった気がする。
あの頃は落ち着いていた国境付近が再戦しだしたらしく、このマフィアも表の戦場に出ることが増えて緊張が走る。
当の俺も腐っても戦闘員、遠方へ駆り出されることが多くなってきた。
「しぇんぱい、またお仕事?」
「らしいね〜。凸さん嫌になっちゃう。」
「ねえ、凸さん。そろそろ教えてほしいのだ。」
「へ?なんのこと?」
「ほら、また逃げた。どうして、どうしておどろくには教えてくれないのだ?なんでおどろくはお外に出れないのだ?お母さんのことも、お父さんのことも…」
「おどろくちゃん。」
「君は、今皆が不幸だったら、どうしたい?」
「みんなを、救いたい… 」
「それなら君には向いていないよ。この話は君がおとなになったらしよう。」
「でも…」
「ね?俺そろそろ行かなきゃ。」
「お母さん!お母さんは…?」
「…君のお母さんは、今戦ってるんだよ。俺とおんなじ敵だ。その敵を君が知るのはまだ早いけれど、きっと勝利を手に帰ってくるよ。」
「しぇんぱいもお母さんもみんなも?」
「うん。なにせ俺達サイキョーのシゴデキなのでね!」
「わかった。じゃあ、しぇんぱいが帰ってきたらこの話の続きをしてね。」
「約束だ!」
「気をつけていってくるのだ!」
「またね〜」
こうして俺はおどろくちゃんの部屋をあとにした。
「ざけんなよ…任務先までの送迎はなしか…」
同時期に遠征する構成員が多いらしく、自ら出向かなければならなかった。
今回の任務先は敵国との国境付近、激戦区。
俺はあまり長物の扱いは得意ではないのでピストルを2つだけもって前線へ出る。
「…おっし2枚やり!」
今日は調子が良く、敵軍の四分の一を単独で片付けた。ざっと150ぐらいだろうか。
戦闘中は気が付かなかったが、足を負傷していたらしく止血する。
「おーおー若造、今日は絶好調だなー!」
大柄の男が肩を組んでくる。昔はこーゆーダル絡みは苦手だったのだが、おどろくちゃんの影響だろうか。そんなに苦痛ではなかった。
「やめろって足いてーんだから!」
「ははっ、今日はノリが良いねぇ!なんかいいことでもあったのかぃ?」
「特に。だけど今は充実してるかな〜」
「オレはお前がこのマフィアに来たときからつるんできたけど、そんなお前ははじめてだよ。あのときのお前目ぇ死んでたからなー」
「うるせぇやい!」
こいつとは組織入りからの絡みだった。
こいつもまぁ強くて、俺に銃と体術を教えてくれた、戦友であり師匠みたいな奴だった。
あれからまた2年ほどこんな生活が続いて、次第におどろくちゃんとの会話が減っていった。
不思議と少しだけさみしく思ってしまった。きっと俺は成長したんだ、そう思うことにした。
「ボス。彼女にはまだ、この組織のこと、主人のこと、そして貴方のこと、何も知らせていない。このままだと本当に貴方が死んでから彼女は全てを知ることになる。良いんですか?自分の口から伝えなくて。」
「はは、珍しく君から私のもとへ来たかと思えばそんなことか。あいつは、主人は病死した。それだけはまあ、伝えといてもいいかもしれないね。だがこの裏社会のことは決して伝えてはならない。あの子には染まってほしくないんだよ。」
「だけどこの組織は貴方が亡き後も残り続ける。一人娘だからこそ彼女はいきなり組織の大黒柱という重役を継ぐことになる。それが貴方の『正解』なんですか?」
「墓に口はないだろ?私が死んでからあの子にとやかく言われようが私はなんにも思いやしない。それが一番楽なのさ。だからこれは私のただの我儘さ。それ以外のなんでもない。」
「そう…ですか。ではその伝言係、俺に任せてはくれません?」
「どうしてお前に?」
「なんとなく。ボスに色々口を出す馬鹿な奴なんて俺くらいでしょう?」
「ま、それもそうだな。現にあの子が一番心を許しているのがお前だろうし。」
「光栄です。 」
「…では任務だ。この組織を彼女と継ぐこと。そして彼女に自由を見せること。報酬は遠い未来に分かるさ。この腐った世界をあの子に委ねようじゃないか。 」
「承知しました。その任務、必ずや俺が遂行してみせます。」
これは俺とボスの遠い昔の会話の記憶。
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というわけで今回はここまで。
またまた長めで読みにくかったかもしれませんが、読んでくれてありがとうございました。
不定期にはなりますがこれからも更新していきます。
ぜひ今後も見に来てくださいね。
それではまた!
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