テラーノベル
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注意
前編【空虚な関係】をみてからご覧下さい
注意書きは前編に記載しております。
追加の注意⚠️
本編ではカップリング要素があります。しかし、ラブラブシーンはありません。恋愛物語でもないです。
当然のように死亡シーンがあります。(グロ描写は控えたつもりです)
9月1日は日本で最も多く自殺する人が多い日
みんなで死ねば、怖くない____?
苦手な方はスキップ
それではどうぞ。
──────iemn視点──────
さて、どうしたものか。俺はそう思考を巡らす。復讐、と言ってもどこまですればいいのか。痛い目を見せれば終わり?それとも殺すまで?───曖昧な復讐方法に嫌気がさしてくる。その時、mmさんが耳元で囁く。
「もちろん。殺すまでですよ。」
俺は霊特有の寒気に身を震わせる。急にしゃべりかけられると特に驚く。そもそも思考を読むな。そんなことを思い、脳内で反論すると、mmさんは饒舌に喋り始める。
「あ、もちろんですが、殺すのは私です。協力してもらっておいてiemnさんの手は汚しませんよ。ただ…実体があるあなたにお願いしたいことがあるんです。」
いかにも胡散臭い話だ。霊が直接人間に手を下せると思えない。もし下せるのならば誰もが霊の存在を信じ、そして畏怖するだろう。相手は法律も、物理現象も干渉されず、生き人を無差別に殺せるのだから。───しかし、実際にはその現象が白日のもとに晒されたことは無い。あったとしてもオカルトマニアの間で流行るだけで、一般人は誰一人気にしたい。霊とはその程度なのだ。
そう思う俺に、mmさんは笑って返す。
「そうですねー。直接的には殺せませんが、間接的に殺しますよ。」
ふっふっふっ。と明らかに怪しい笑い声を上げながら話すmmさんは可愛らしく見えた。その美人目な顔立ちから、歳上なのでは?と思う冷静さで同い年に見えなかったが、笑顔は年相応なんだな、なんてどこか安心したような感情が現れる。…いやいや俺は何を考えているんだ?と、自身に現れた感情に戸惑うが、そんなことに戸惑う前にmmさんが話しかけてくる。
「早速ですが、作戦を話しますね───」
「…まだ、誰も来てない…よな?」
俺──────rkは、螺旋階段の1番上───いわゆる屋上へと繋がる扉の前に来ていた。今は放課後であり、既に日は沈みかけ、空は真っ赤に染る。来た理由はこの【手紙】である。手紙の内容には
『mmさんの死因は自殺では無い。真相が知りたければ螺旋階段の1番上に来い』
自殺ではない。それが表すのは他殺ということ。既に噂になりつつあるiemnさんが殺した説。おそらくそれが事実であるという証拠を持っているのだ。火がないところに煙は立たないように、その噂はおそらく真実を知っている人からの告白。そして、俺に暴いて欲しいと思っているのだ。
俺は、この手紙の考察をそこそこにしつつ、手紙の主を待つ。すると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれ?rk兄じゃん!」
その桃色の髪がふわりと舞い上がりながら笑顔をうかべ、俺に近づいてくる。彼女の名前はhnで、俺の妹だ。俺のhnniというあだ名ができた由来でもある。その愛らしさと、華やかなその立ち振る舞いは兄である俺も目を引くほどだった。
───不意に、hnが手すりに体重を乗せると、ガゴンッと音がして取っ手が壊れ、hnはそのまま螺旋階段の下に落ちていく。
「____ぇ?」
hnは間の抜けた顔で重力に逆らえずにそのまま落ちていく。その時、俺の目にはスローモーションで落ちるhnの姿が映る。
──────俺は無我夢中で手すりの上に登り、そのままhnを助けるために、両手を広げて勢いよく落ちる。俺の方が体重が重いから、案外直ぐに追いつく───が、hnの体を持ち上げようとした時、スっと貫通し、目の前でその姿が消える。
「───ッッ!?」
俺は、hnの体を貫通し、しかし、落下が止まらずに落ちていく。俺はその摩訶不思議な状況に驚きつつ、何とか意識をもちこたえ、階段の部分を手で掴み、何とか、宙にぶら下がる。
一瞬で広がる情報量。それとは反対に落下してきた分の衝撃が、体を襲う。俺は、階段に必死にしがみつき、腹筋を使い登ろうとするが、なかなか上がれない。俺がちらりと地面を見ると、下には、あと数階分の高さが残っている。当たり所が良くても複雑骨折は避けられない。最悪はそのまま地面と平行に落ちて、衝撃を受けた後に死亡。即死よりも痛みを味わって死んでしまう。そんな、まるで自分が今から死ぬかもしれない、という嫌な念慮が脳髄にこびりつく。自然と呼吸が乱れ、心臓がバクバクと体全体に警鐘を鳴らす。
脳裏によぎるのは先程での状況。しかし、そんなことを考えていられないほど追い詰められている俺は階段に戻らないと、という意志をかため、もう一度力を振り絞る。
───その時、手に痛みが走る。
「い゛ッッ!?」
突然の痛み。まるで、何かに踏まれたようなその踏んだやつの顔を拝もうとする───しかし、視界が階段によって塞がれ、見ることが出来ない。
その後も、連続で手を踏まれ続ける。
「何するんだよッ ッ!!!」
俺がそう叫ぶと同時に、誰かの足が、俺の手を階段からどかそうとする。すぐに気づき、階段につけた手に力を入れる。
「貴方はどうせ死ぬんですよ。」
その言葉がまるでテレパシーのように脳内に直接感じた。その声は間違いなくmmさんのもので。
俺が拍子抜いている間に誰かの足が、俺の手をはじき飛ばす。
身構えることが出来ず、俺はそのまま放心状態で落ちていく。皮肉なことに、落ちる途中。足の正体を知る。───iemn。そいつが、無表情で俺を睨みつけていた。
あいつが、やっぱりあいつがmmさんを───。
「違いますよ。私を殺したのはあなたです。」
「…え?mm……さん?」
最後に俺の五感が感じた最後の感覚である───。
───ie side
───終わった。あまりにあっさりと。下からは一瞬大きな音が鳴ったが、それっきり声も、物音も、何もかも音が消える。最後に残ったのは、”rk”だったもの。赤色で彩られ、骨の装飾が彼の死を彩る。
今回のトリックはなんでもない。俺はほぼ何もしていない。rkさんが来たくなるような手紙を書いて、それをロッカーに仕込む。幽霊となったmmさんには簡単な幻覚なら見せることができるらしい。なので、幻覚のhnさんに落ちてもらう。rkさんが妹には甘い、という噂は本当らしく、簡単に飛び込んで行った。しかし、そのまま落下して死んでくれると思ったが、さすがの身体能力。階段の途中で手すりをつかみ、耐えてしまったのだ。まあ、それは俺が蹴り落としただけだが。
まあ、簡単なもので、トリックもクソもない。ただ、霊感がないものにはこの真相は絶対に分からないだろう。
その後、手すりから落ちたということにするために事前に老朽化した手すりを壊した。
これで、手すりから滑り落ちた事故として片付けられるだろう。警察の介入はほぼゼロと言っても平気だろう。学校側は、この事件を世間に証したくないはずだ。何故ならばこんな悪い事実を世間に流されては、学校の印象が悪くなり、入学する人が減るだろう。その汚い大人の考えが嫌いではあるが、今回ばかりは助かった。
rkさんが死んだと先生が朝生徒に伝達した。俺のクラスから出た2人目の死者。死因は螺旋階段の手すりの老朽化。錆びてしまい、もろくなった手すりは60を超える体重に耐えきれずに壊れてしまったのだ。とrir-先生が仰っていた。
今回は不慮の事故として片付けられた。ただ、学校の生徒のほとんどがその死因についての考察が多くなされた。やれ呪われただの、後追いだの、ただの事故だの───。そんな、死因についての話題で持ち切りだった。浅ましい考えが多く、吐き気がする。しかし、気分をさらに悪くするのは、俺がやった、という噂だった。元々mmさんをいじめていたーという根も葉もない噂が尾びれをつけて帰ってきたのだ。それが半分正解なのも腹が立つ。しかし、どうせバレることは無い。証拠は無いし、事実rkさんはただ落下しただけに過ぎない。
だから、大丈夫なのだ。俺のせいではない。俺が直接手を下した訳では無い…はずだ。多少の罪悪感は残るが、それでも、mmさんをいじめたのだから正当な殺しだったのだ。仕方がなかったのだ。大丈夫。大丈夫。
「iemnさん、大丈夫ですか?次の復讐もしたいのですが…。」
そう言ってmmさんが話しかけてくる。急に話しかけられることに慣れてしまったな、と思いつつもmmさんの話に耳を傾ける。
「次はltに復讐をします。」
mmさんがそう微笑みながら物騒なことを言う。復讐とは殺すこと、という事実に耳を塞ぎたくなるが、ここまでやってきたのだ。あとには引けない。
mmさんは俺の反応がないことをいいことに、次の復讐プランについて話し始めていく。
───視点lt
「───ここ、かな?」
私───ltは放課後の音楽室に来ていた。その理由は簡単で、私の机の中に手紙が入っていたのだ。
『mmさんの自殺についての原因が知りたければ来い』
やっすい挑発文である。しかし、私はこれに乗らざるを得なかった。何故ならばその筆跡が、亡き親友のmmに似ていたから。
日は暮れ始めており、赤に近いオレンジの空が昼の終わりを告げる。私はほんのりと汗をかきながら、音楽室を見渡す。いつもはなんとも思わないが、1人で来るとその音楽室の広さに驚かされる。どことなく不気味なその部屋には不気味な空気が漂っている。
まだ、この手紙の送り主は来ていないようだ。呼んだくせにまだ来ないのかよ、と悪態をつきたくなったがそんなことはせず、とりあえず待ってみる。ポケットに突っ込んだ手に汗が滲む。
───その時、何かが見える。
ゆらゆらと揺れるそれは何かを鮮明に映し出す。
『mmさ〜、どん臭すぎるんだよw』
『は〜、おっせぇなマジで。早くパンよこせよ』
『mm?アイツ性格最悪だよwww』
「───は?何、これ。」
そこに映し出されたのは───私がmmの悪口を言う姿だった。幻覚?それとも記憶?その言葉は確かに私が言ったものだった。どうしてそんなものが今見えたのか。私は、自身の目に映った光景を消そうと、その霧を蹴散らす。全てなかったことにしたくて。それは、私の中での後悔だったから。手ではらい、足払いをする。
───ガゴッ
霧を払った時、何かに手がぶつかる。冷たくて、固くて。それで居て大きな───。その時、霧がはれ、それがあらわになる。それは、楽器入れの棚で、今の拍子にそれが倒れ──────
迫り来る棚から逃げることが出来ず、私はそのまま───
「懺悔しろ」
───そう、mmさんの声が最後に聞こえた気がした。
───終わった。あまりにもあっさりと。後味の悪い死だ。意味のない死。目の前で、同級生が死ぬことに後味も何も無いとは思うが。しかし、脳は異常な程に冷静で。すぐにこの部屋を離れよう、と思い音楽室からさっさと出る。まず、音楽室の扉に鍵をかけ、密閉にする。そして、鍵をピアノの上に置いて、その場を去る。詳しく調べなければ、ltさんが自ら扉を閉めたと読み取るだろう。…正直教員がまともに事件に触れないせいで、こちらとしてはとても動きやすい。あと、たった一人なのだから。
「お疲れ様です。iemnさん。」
mmさんがそう笑顔で話しかける。最近は年頃の女の子のような笑顔を浮かべるのがうれしくてたまらない。本当は生きているのでは?と思うほど生き生きとしている彼女は輝いているように見えた。
「…お疲れ様。」
俺がそう返事をすると、mmさんは少し驚く。俺も気恥しくなって、
「…なんですか、そんなに驚いて。」
「…いや、まさか返事が貰えると思ってなくて…。ほら、iemnさん学校ではなかなか返事してくれないじゃないですか。」
言われてみればその通りで。基本的学校ではmmさんを無視している形になってしまう。ただでさえ事件の犯人として噂になっているのだ。そこに、一人でブツブツ話している、という噂が挟まったらどうなるか分からない。
なんて、今更な理由ではあるが。それに、mmさんも学校ではなさないということに納得してたし、これ以上私のせいで悪く言われて欲しくない、とも言ってくれた。復讐で人を殺そうとはしているが、根はいい人なんだろうな、ということが伝わってくる。
「今更ではあるんですが…。人を殺すことに躊躇いはないんですか?なんだかんだで協力してくれてますが。」
mmさんがそう尋ねてくる。確かに、最初は躊躇っていた。しかし、今はなんとも思っていない。それどころか───少し、心がスッキリしている気がする。あいつも、どうせ俺をよく知らずに俺を気持ち悪いだの罵っていたに決まっている。人をいじめる人間はクズなやつばっかりで、それしかやっていないわけが無い。それを、俺はよく知っている。───亡き母の言葉が今も尚俺の心に突き刺さっているように。
『あなたなんて要らなかった』
脳裏にその言葉が思い出される。霊を祓うなんて、その時の俺には出来なかったから。いらない、とキッパリ言いきられた。いなかった方がまだマシだと。いらない子。一人っ子の俺にはその言葉が鎖となって俺を縛った。結局母は、霊の祓いすぎで、寿命をけずっていたらしく、あっさりと死んでしまったが。その後、祖父母の家に預けられたが。どうでもいい子として扱われている。
まるで、世界が俺を避けているような感覚。そんな中、mmさんだけが俺に優しくしてくれたから。ほんの少しばかり、温もりを感じてしまったから───。
「人を殺すことの何が悪いんですか?遅かれ早かれいつか死ぬ。たった数十年の差ですよ。」
「…いい考え方ですね〜。そうですね、私たちから見たら数十年なんてとっても長いですが地球から見るとほんとーに僅かな差ですもんね。」
なぜだか納得したような表情を見せるmmさん。しかし、下にはltの死体。俺達はさっさとこの部屋を離れることにした。
3人目の死亡がクラスをざわつかせる。陽キャ共が死んだからだろう。空気が冷えたように感じる。俺からしたらそちらの方が居心地が良く、ありがたいことだ。噂はさらに混沌を極めもはや霊を信じないものすら悪霊のせいだ、なんて騒ぎ始める。信じなかったやつが、信じざるを得ない状況。それは非常に滑稽で、それでいて最高のショーでもあった。
そんなことを思いつつ、次の復讐を考える。
それと同時に、この復讐が終わってしまったらmmさんは消えてしまうのか、という少し残念というか、寂しいように感じる。
なんで、こんなことを思っているのか。俺は自身に戸惑いつつも、次のために思考をめぐらす。
───zn side
おかしい。あまりにもおかしい。身の回りで人が死に続けている。きっかけは、おそらくmmさんの自殺。虐められて、苦しいという遺言書。ぽれはあれが嘘だと思っている。mmさんが虐められている所なんて見たことがない。苦しむ余地がない。だって、別にあれくらいはなんとも無いはずだし。ぽれの中にある小さな疑念を無理やり沈めこみ、平静を装う振りをする。
mmさんの特に近くにいた人物。rk、ltが死んだ。まるで、mmさんが1人で死ぬのが寂しいから道連れをしたのか、と思うほどに。だけど、そんなことは構わない。別にぽれとは関係がない。ただ、ぽれの心の中にはぽっかりと大きな穴ができてしまった。mmさんという大切な人を失った痛み。ぽれはこれをいつまで引きずらなければならないのか。
そんな、悲しみに暮れていると、匿名でメールが届く。
『mmさんに会える方法がある。知りたければ今日の放課後、屋上に来い』
「…んふふっ____♡なーるほど?」
やっすい挑発。だけど、乗ってやるのも悪くない。今日の放課後。つまり、ぽれがそれに対して準備する時間は短い。ぽれは友達との帰る予定を断わり、スクールバッグを背負い、1人、屋上へと向かう。
螺旋階段を登る。ここで、rkさんは事故にあい、そのまま死んでしまった───?…いや、そんなわけが無い。先生達が分からなくても、ぽれにはわかる。老朽化によって、とは言うが、それにしては、手すりにくぼみが出来ている。まるでトンカチか何かで叩いて、壊したかのような。おそらく、そいつは人を殺すのが初めてなのだろう。ガサツなトリック。警察でもなにかでも来たらすぐに事件性ありとなり、見破られるだろう。
だけど、学校はそうしなかった。面倒なのだろう。揉み消したいのだろう。犯人は、学校にもみ消すように頼めるほどの権力者か、もしくは学校側の生真面目さが原因か。まあ、ぽれにとってはどうでもいい。それよりも、ことが順調に進んでいる事実に驚きを隠せない。
あとは、上手く振る舞うだけ。掌の上で踊り狂えばいい。
そんなことを考えていると、いつの間にか屋上についていた。まだ、誰もいない。おそらくばれないようにぽれを始末したいのだろう。さすがに何をするかまでは見破れない。ただ、一つわかるのは自殺として済ませたいのだろう。遺書でも書いて、今までの事件の犯人の名前でも書いてやろうかと思ったが、それをやってもぽれになんのメリットがないと思いしないことにする。
「別に事故に仕立て上げるのはいいと思うんだ。だけどね〜がさつすぎるんじゃない?筆跡がmmさんに似ていたね。わざと真似て、ぽれの興味を引くためかな?」
閑散としている屋上。けれど、少しばかり人の気配と霊の気配を感じる。ぽれは霊感がほんの少しだけある。だからなんとなくだが幽霊がいることは分かる。だがなんの霊かまでは分からない。おそらくだがその霊はmmさんなのだろう。mmさんならそんなことをしそうだな、なんていう信頼もある。
「まーだ出てこないの?なら、大声で君の名前叫んであげようか?目立つだろうな〜wあ、ぽれが君の名前分からないと思ってる?分かってるんだよねーそれが」
そこまで煽ってやってもそいつは姿を現さない。ぽれが諦めてそいつの名を呼んでやろうと思った時、そいつは姿を現す。
その夜空のような美しい紺色の長い髪と、海のように透き通った瞳。その服装は制服で、まるで───
「m、mmさん…?」
その姿はまるでmmさんだった。死んでしまったはずの彼女。なぜ、生者の姿をしてぽれの目の前に立っているのか。これは、もしかして霊なのでは?と疑問が絶えず溢れる。そのmmさんはニッコリと笑って、口角を上げる。話そうとしない彼女の姿は不気味に感じるが、それよりも───。
「お久しぶりです!mmさん♡」
会えたことの方が嬉しい。あぁ、その美しいmmさんがこの世にまた舞い降りてくれたことが何よりも嬉しい。きっと、迎えにきてくれたのだろう。
「安心してくださいよ、mmさん。すぐに生きますから、ね?」
「───なんで、私の悪い噂を流したんですか?」
脳内に直接語りかけるようにその声が聞こえる。ぽれの唯一の心当たり。でも、もうそんなことどうでもいい。ぽれは快く答える。
「ん?mmさんを奪われないようにするためだよ。mmさんはモテモテだからねー!ぽれが悪いやつから守ってあげないといけないの!噂なんかに流される骨無しのやつがmmさんに近づいていいわけないからね〜」
ぽれがそういえば、目の前のmmさんは絶句したような表情をしている。確かに歪んだ愛情表現かもしれないが、それの何が悪いのだろうか。ぽれはmmさんのためになんでもやるのに。なのに勝手に死んでしまった。けど、今のぽれなら意味がわかる。心中ということだろう。mmさんは特に大切な人たちを連れて、心中しようとしているのだ。それにぽれは選ばれたのだ。ならば、mmさんの掌の上で踊ってやろう、再びそう思いぽれはそのまま屋上から飛び下りる。mmさんにこれ以上 手は汚させない。落下中、声が聞こえる。
『地獄に落ちろ』
「───?なんで──────」
不意に耳元で聞こえた声。それは、ぽれとの予想を外れた、酷く冷たい声。まるで、ぽれが死ぬ事を望んで、なおかつぽれが傷まれることを望んでいるかのような───。
最後に疑問が咲きほこると同時に、ぽれは赤色に染る。
───ie side
…終わった。目の前で、人の死に様を見た。俺は、紺色のカツラを外し、隣の消え始めているmmさんを見る。満足げな笑みを浮かべる彼女は振り返り、その真っ直ぐな瞳で俺の心を射抜く。
「ありがとうございます。手伝ってくれて。これで、もう現世に未練はありません。」
そう言いながらも、その透けた瞳からは透明な液体がポロポロと流れる。
「だけど、もうひとつできちゃったなぁ。私、iemnさんのことが…」
そう言いながら言う彼女の足は既にもう消えてしまっており、かろうじて上半身が残っているほどだった。
───俺は、無我夢中で呪言を唱える。
「【願わくばこの身を器としこの魂を捨てん。
君の微笑みをもう一度見るために。
汝、我が肉を纏い、我が名を喰らえ】!!」
そういえば、俺の体の中からガラスのようなものがバキンッと割れ、代わりに、mmさんの魂を呼び込む。
「な、何をしてるんですか───ッ!?」
mmさんがそう泣くのをやめ、心底驚いたような表情を浮かべながら、俺の体に吸い込まれていく。
何をしているのか。それは俺自身の魂とmmさんの魂を入れ替える。生者と死者を入れ替えただけだ。
こんなおれでも、好きな人を───mmさんを助けることができるなら。この命は惜しくない。
こんな陰キャみたいな俺にも、優しく声をかけてくれて。復讐を手伝うという形でmmさんと行動する度にmmさんという人物を深く知ってしまって。少し、変わったところがあったけれどそれでもその笑顔が俺の廃れた心に水をくれた。───幽霊に、依存してしまったんだ。誰にも優しくされずに、いつもひとりぼっちで。俺をバカにしたやつを心の中で見下して。決して、いい性格はしていなかった。けど、mmさんは俺を見て、そして認めて、話してくれて───。俺との別れに泣いてくれた。そんな子が、いじめなんかで生を諦めて欲しくなかった。
だから、俺の無意味な人生を彼女に価値のある人生として託す。俺は、死んでもいいから。
───mm side
私は、その体内に吸い込まれ、iemnとして第二の生を受け取る。iemnさんからの最初で最後の贈り物。私は、胸に手をかざす。ドクンドクンと脈打つ心臓は、私が生きている時間を刻む。
私は、静かに屋上から去る。螺旋階段を降り玄関からiemnさんの靴を履き帰路に着く。そして、まっすぐ私の家へと向かう。そう、mmntmrの家に。
「やっと帰ってきたのかい。mm?」
お祖母様が私を出迎える。私はこくりと頷き、居間へと向かう。居間にはお父様とお母様がいらした。私が帰ってきていることが分かったのだろう。私は、おふたりの御膳で正座をし、一礼する。
「mmntmr。霊感のある男の体を使い、ただいま帰りました。」
私がそう報告する。お母様は酷く冷たい瞳で、私の中を見抜く。
「そう、帰って来れてよかったわ。あなたの次の役目はわかっているかしら?」
久しぶりのお母様からのお言葉は厳しいものでありつつも、私のみを按じるものだと私には分かる。私は頷く。
「もちろん。霊を払うあの忌々しい一族を殺害してやります。」
「───その体は祓い屋の一人息子の体か?」
「その通りでございます。全ては作戦通りに。言われた通り捻くれ者でした。ただ、少し優しくしただけで体を譲ってくれましたね。」
そう、全ては私の掌の上。全ては祓い屋であるiemnさんの体を手に入れるため。そのためにまず私はiemnさんと仲良くなる口実をつくらねばならなかった。普通に話しかけようとすれば、他の友達がそれを妨害し中々話すことはできない。だから、私は大胆な作戦に出た。私は、自殺した。それっぽくするために遺書を残して。そして、そのクラスで唯一霊感があるiemnさんと2人で話す機会を得た。そして、復讐というていで私はiemnさんと一緒に過ごすことにした。意外だったのは、iemnさんが人を殺すことに躊躇いがないことだった。普通、人を殺すことに躊躇いが生じるだろう。その葛藤している間に好感度をあげようと思っていたが。あっさりと殺し、あっという間に3人殺した。私が言うのもなんだが人を殺すことに躊躇いが無さすぎると思う。だが、またしても意外なのはiemnさんから私への好感度が簡単に上がるのが早すぎることだ。明るく話しかけて、笑顔を振りまけば、簡単に顔を真っ赤に染め上げた。ちょろすぎる。申し訳ないとすら思うほどだった。
まあ、結果的に全て上手くいったが。
私たちは代々幽霊と友好を築き、この世での生活を助けるもの。死人をこよなく愛し、死人のための世界を創りたい。しかし、全国にいくつかある祓い屋によって幽霊は消されていく。
だから、祓い屋をつぶしその後に私たちを中心として幽霊を救済する。そう、我が家は代々それを引き継がれている。
つまり、私と体は今因縁ある相手の身体を使っている。強い霊感と、霊と話すことが出来るその体は私からしてみても非常に素晴らしいものだった。
「…mmntmr。明日、明日よ。痕跡を消しに行きなさい。祓い屋に目をつけられる前に。」
「かしこまりました。」
私は教壇の上に座る。軽く鼻歌を歌い、メロディを奏でる。周りからは鮮やかな色が舞い、そしてそれが侵食していく。轟々と音を立て、赤色の炎がこの校舎を燃やす。もう私をいじめるものはいない。間違えてバケツの水をかけられる事も、冗談で悪口を言われることも、愛が歪んだ人もいない。いるのは、相談したけど、結局何も出来なかった先生。噂好きの少女。運動が得意な少年。先程までいたけれど。窓も扉も外から閉じられたこの校舎で逃げることも出来ず、その前にナイフで致命傷を与える。校舎は真っ赤に染まり、赤い炎に包まれる。
私がここに存在した記憶はもうない。私は、彼の体で新しい人生が幕が開く。
ここで切ります!最後は突っ走っちゃいました…。いやー1万文字…ひっさびさに書きました…。本当にきつい…。言葉がごちゃごちゃになってまとまらない感じが気持ち悪いですね…。
今回は【自殺】をテーマに書きました。まあ、メインテーマですが。サブテーマに【復讐】ですね。自殺をトリガーにこの話は始まり、他殺で終わる。どんでん返しを意識するとどーしても話がごちゃつきますし、iemnさんがmmさんに恋しているとわかるパートが少なすぎますし。でも、これ以上話を広げると1万5000文字とか超えそうなんだよなぁ…。次回作にこうご期待ということで。
これを9月1日前に出したかったんです!!自殺する人が多い不謹慎な日の前に。まあ、この作品を見ても自殺をやめようなんて思う人はいないと思いますが、増えることは無いと思います。まあ、それでも衝動的に書いたものなので許して…。
分からなかったところや、分かりにくいこと、知りたい所があればコメントで教えていただけると…。
それでは!おつはる!
コメント
72件
めめさんが嘘ついてるのは何となく予想できたけど流石にこの結末は予測出来んわ
mmさん賢いよね… iemn さんは 優しくされたら すぐ引き込まれるタイプよね…
おお、後半書いてる。これが一万文字の圧力(?)か