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白山小梅
12
みちみちと押し広げるように捩じ込まれ、ひときわ大きな快楽があたしのナカに満ちていく。息もできない、息つくまもないほどの圧迫感に、涙がこぼれていく。
「…〜ッ、は、ぁ……っ」
「キッツ、……苦しい?」
「へいき。動いて」
あたしが強請ると、柊は目の縁を舌で舐めて、「しょっぱ」と甘い声を出し、あたしに自分のカタチを馴染ませるよう行き来する。その都度、きゅうきゅうに彼を締め付けるのが分かった。
「あッ…あぁっ…」
柊の動きに合わせて、自分のものとは到底思えないほどあまったるい声が零れる。てのひらをすべり込むように重なる手のひらは、あたしの体温よりもずっと熱い。
包み込むさまはひどく優しいくせに、加虐嗜好がある柊は、あたしの首に歯を当てかぷりと噛んでくるので、微かな痛みが襲う。やっぱりあたしは食べ物らしい。
「〜〜〜っ、たぁ…っあっ、」
その痛みと同じ頃、あたしの一番深い場所にトンとキスをされ、返事の代わりのあえぎ声と、涙がぽろぽろと落ちていく。蓋をされた場所から卑猥な音が聞こえ、恥ずかしいはずなのにあえぐことをやめられない。
二人でベッドを揺らした。ベッドが軋む度に、慣れてきたあたしの奥をコンコンとノックされ、背筋に快楽が駆け巡った。荒れ果てた呼吸は、残念ながら落ち着きそうにない。
は、は、と快楽を逃がすように息を吐き出して、シーツを握りしめる。シーツが擦れる音とくちゅくちゅ厭らしい水音が鳴り響く。彼の腰遣いが激しくなってきて、どんどん擦り上げられていく。
ギリギリまで引き抜いて、一気に押し込まれたかと思えば、深い部分を連続でたたかれて、意識が遠のいて。
もう、意識を保てそうにない。一際大きな波が押し寄せてきたその時。
「好きだよ、ほとり。大好き」
あたしの目から、生理的なそれとは別の涙が流れ落ちた。
それは、あたしが今日一日、ずっと聞きたかった言葉だ。
「…ひ、らぎ。もっかい、言って」
「ん。好き」
「もっと、もっと言って」
「好きだよ。ちょう好き。めっちゃ好き」
好き、と柊が言う度に心臓と、それから、下腹部がきゅんと鳴いた。涙だっていっとう零れ落ちた。プール対策にウォータープルーフ完璧でメイクをしていたけれど、それにしたってひどい泣き顔をしていると思う。
「……ねえ、その言葉、あたしにしか言わないで」
「いいよ。柴崎ほとり限定ってやつ?」
心臓の側面を撫でるような柔らかい声色。あたしの前髪を手で払った柊は、そこに軽くキスを落としてくれる。
「飽きるまで言ってあげる」
シーツの隙間から背中を掻き抱かれ、ぴたりと抱きしめられる。真ん中がぎゅうっと締め付けられて、くるしい。
「俺が好きなのは、ほとりだけ、な」
耳元でささめかれた愛の言葉。たったそれだけで身体全体が満たされていく。柊自身はあたしのナカに潜ってはいるものの、身体は動いているわけでもない。それなのに、繋がった部分からじわじわと熱が溢れるから、必死にその背中に爪を立て……
「え、うそ、うそうそ……っや、…っあ…っ」
膨れ上がる欲望に耐えれるはずもなく、びくん、と跳ね上がる衝動に呑まれた。
びくびくと短く痙攣する下半身。息を吐き出す度に、あたしたちをつなぎ止めている硬いソレを締め付けているのがよく分かる。
「……なに、好きって言われただけでイッたの?」
「っうぅ、バカにしてる……」
「してないし、単純に可愛いなって、思っただけですよ?」
「……うそばっか……」
「それより、ほとりちゃんも俺に何か言うことないの?」
確信犯の柊があたしを見下ろす。顔を背けて逃げようとすると、片手で強引に顔を戻されるので、完全に対面するしかない。
きゅっとくちびるを噛み締めて、逸らした視線を困ったように縫い上げると、目が合うその時が、不揃いなあたしたちの、タイミング。
ちゅっとくちびるを重ねて、つんと鼻先を擦り合わせ、頬へ軽いキスを落として、また目を合わせると、目の前には愛しい人しかいない。
「大好きよ。………碧音」
これが柊が望む答えなのかわからないけれど。自分で言っておいて、恥ずかしさが頬に篭る。
おずおずとみつめると、柊のアイスブルーの瞳は気まずそうにスライドされた。
「……やっば、可愛すぎだろ……俺も軽くイきかけた……」
「え?なぁに?」
「なんでもない。反則技、つかいすぎですよって話」
あたしのが反則技というのなら、柊はKO技を持ちすぎだ。何をとっても、あたしは柊には一生勝てそうにないし、負けてもいいやと思ってしまう。
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