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「生まれ代わりだって言ってたけど、そういうのって本当にあるのかなぁ? 本当に卑弥呼だったら、すごいことだよね」


 学生達が追い返えされた後、ようやく家の中へ入ることができた美琴は、台所で焼鮭の骨を取ってほぐしている祖母へ、何とはなしに聞いてみる。真知子ならこれまでにエセ霊能力者や、自称生まれ代わりの類いには沢山対面していそうだと思ったのだ。


 卑弥呼と言えば、歴史上で名前が残っている最古の霊能力者の印象が強い。謎だらけの存在だから、確かにオカルト研究会が持ち上げるにはピッタリだ。もし本当なら、謎に包まれた邪馬台国の正確な位置だって判明するかもしれないのだ。高校生の美琴でさえ、歴史的発見に繋がる凄いことだということくらいは分かる。だからこそ自称とはいえ、いろいろ設定に無理がある。

 なのに、さっきの学生達はその部長のことを本気で信じているようだったから逆に興味が湧いてくる。どうして彼女のことをそこまで信じることができるのか?


「私らが視えるのはあくまで現世のことだけだからね。成仏した後のことは分からない。はたして、輪廻転生というものがあるのかも無いのかも――」


 現世に生きる美琴達に視ることができるのは、この世に存在するものに限られる。亡くなってもなお彷徨い続ける魂は、まだこの現世にあるからこそ目にすることができる。でも、祓った後にそれらが行く先までは知る由も、確認する術もない。

 輪廻について語るのは宗教家であって、祓い屋ではないのだ。


「ただはっきり分かるのは、相手が視えているのかいないのかくらいだろう」


 結局、オカルト研究会が望むよう、庭の祠の検証というのを真知子は許可することにした。また日を改めて、その霊視ができるという部長を連れて来るというので、誰かが必ず立ち会うことを条件に様子を伺うつもりみたいだ。

 仲間内だけで好き勝手に情報交換しているだけなら問題ない。けれど、彼らはメンバー以外へもあらぬ噂を流したりと看過できない行動が多い。人形供養の件など、既に実害を被っていて十分に迷惑しているのだ。


 この間の五人を引き連れて、例の部長が八神の屋敷へ訪れて来たのは、その週末だった。オニギリ屋の定休日にしてくれという条件を出したら、土曜の昼過ぎに玄関チャイムが鳴らされた。


「初めまして、オカルト研究会で部長をしています、田辺野乃葉と申します」


 カジュアルを通り越して普段着感のある部員の多い中、一人だけリクルートスーツを着込んだ田辺は、就活の面接かというほど丁寧に頭を下げて挨拶してきた。三年生だという彼女は、朝から会社説明会へ参加していたらしく黒のトートバッグを肩から下げ、黒のパンツスーツに黒のローヒールパンプス、背中まであるロングヘアもきっちりと後ろで一つにまとめ、絵に描いたような就活スタイルで、オカルトが好きそうにも見えない。人は見かけによらない。


「祠は庭をぐるっと回っていただければ、離れの建物の脇にあります。建設されたのは店をオープンしたのと同じ時期ですから、まだ十八年ほどで大した歴史もありませんが」

「え、そんな新しい物だったのか……」


 期待されているようなものではないと暗に秘めたツバキの説明に、学生の半数がどよめいている。屋敷の建物の古さから、もっと古臭いモノを想像していたのが丸分かりだ。実際、離れのすぐ横に建っているおかげで風雨から守られている為、祠自体は建てられた頃の姿をしっかり保ち続けている。何かの効力がありそうな雰囲気は全くない。真知子がただの飾りだと言っていたのも頷けるだろう。


 けれど、部長である田辺だけは祠を一目見ただけで、感極まった声を発していた。瞳を潤ませ、両手を胸の前で組んで「凄い、凄いわ」と呟いている。その反応に、先日は代表して発言していた男子学生が聞き返した。


「田辺さん、やっぱり何かいるんすか、ここ?」

「ええ、はっきりとは視えないけれど、とても光輝く存在よ。元々から祀られていたわけじゃなく、ここにいるのは一時的みたいだけれど」

「おー、本物っすか、すげー」

「一時的ってことは、効力は今だけの可能性があるってことか……」


 願いを叶えてくれるのはその存在のおかげだと、自身も就活中の田辺は真剣な表情で祠に向かって手を合わせる。つられて、他の部員達も揃って手を合わせ始めた。不思議なことに田辺の発言を誰一人として疑おうともしない。彼らの眼には彼女の反応は純粋で噓偽りないものに映っているのだ。男子部員ばかりの中での紅一点。それが彼女のカリスマ性を作り上げているのだろうか……。


「あいつら、さっきから何やってるんだ?」


 中庭の様子を後ろから覗き見していたゴンタが、不可解だと首を傾げる。その隣ではアヤメが着物の袖で口元を押さえて笑いを堪えながら、肩を震わせていた。

 ツバキが学生達を案内していくところから、美琴も一緒にずっと眺めていた。別にあえて隠れてはいないし、何ならチャイムが鳴って先に出迎えたのは美琴で、子ぎつねは普段通り玄関の中で待機中だった。


「アタシらのこと視えてへんくせに、祠の中に何が視えてるんやろうな?」

「光輝く存在って言ってたぞ」

「そんなん入ってへんし! 勝手に入れんなって感じやわ」

「あんなところを拝んでも、何も出ないぞ」


 自称『卑弥呼の生まれ変わりの霊能力者』をネタにして、二体は好き勝手なことを言い合っている。さすがにツバキの正体を見抜くのは相当難易度が高いと思うが、田辺は他の二体のあやかしの姿すら目視できていない。

 アヤメ達は楽しそうにしているが、美琴は少しガッカリした気分だ。本当に卑弥呼の生まれ変わりだったら、日本史をもう少しくらい好きになれたかもしれない。

おにぎり屋さんの裏稼業

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