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【Atm-1】
「まだ、別れないの……?」
自分の剥げたネイルを見つめながら、紗栄子は小さな声でポツリと呟いた。
このセリフをこのシチュエーションで言われるのは、これでいよいよ三度目となる。
その後はいつも「ソイツのこと、そんなに好きなの?」というお決まりの言葉が来る筈なのだが、今回だけはちょっと違っていた。
「ごめんね。私のせいで、貴方に嫌な思いをさせちゃって。貴方には早く別れて欲しくて」
予想もしていなかった紗栄子からの唐突な謝罪に、私は少し狼狽(うろた)えてしまった。
気になってちらりと紗栄子の顔を伺ってみると、なにか嫌な記憶でも思い出したかのような、苦い表情を浮かべていた。
あぁ、そっか。そうだった。
嫌な記憶なんだよね。紗栄子にとっては。