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「でいやぁぁぁぁぁぁ!!」
「――っと、相変わらず凄いな」
「しつこい人にはお仕置きですっっ! でやぁぁぁ!!」
リリーナさんが使用した魔石の力でルティが攻撃を仕掛けてきた。魔石で操られ正気を失った状態となっているせいか、攻撃はミスを連発。
ルティの強みは岩を粉砕する拳だ。だが、大振りを繰り返すばかりで怖さが感じられない。離れた所で怖さを感じているのは、けしかけたリリーナさんのようだ。
「これがガチャではない魔石の使い方だとしたら、拍子抜けですよ?」
こんなものか?
「うーん……ルティちゃんは魔石というより、幻を見ているだけだから厳しいなぁ~」
シーニャとミルシェは専用魔石だが、ルティだけはまだ確定していない。魔石に認められていない状態では力も中途半端なのだろう。
ドガッという破壊音だけは響いているが、おれの元に拳が届かない。
「ルティを止めた方がいいと思いますよ? このままだと村が破壊されるだけかと」
操られている状態だとおれの命令も無意味だろうしな。
「そ、それがですね、魔石の命令ならともかく、ルティちゃんは魔石の影響で動いているだけなので言うことを聞いてくれないんですよ~!」
それはまた無責任な。道理で焦っているなと思っていたが、ルティだけ暴走させてしまったということか。
「シーニャとミルシェを動かすのはやめてもらえるんですよね?」
今のルティはただでさえ手が付けられない。それなのにそこに魔石指示で動く二人が来たら、面倒な戦いになることは目に見えている。
「わたしもそこまで厳しくしませんよ~! ですので、ごめんなさい! ルティちゃんだけは、アックさんが止めてくれませんかぁ?」
全く、結局ルティを何とかしなければならないのか。しかしこのままでは間違いなくネーヴェル村が半壊しそうだ。自分を見失っている状態での破壊的な拳はシャレにならない。
ルティの拳を受け止める、あるいは魔法で一時的に凍結させるか。しかし精霊火竜の加護があるという時点で簡単に凍らせられるかどうか不明だ。
だがこの場所ではシーニャたちに被害が及びかねない。とりあえず村の入り口まで誘導だ。
「ルティシア・テクス!! こっちだ! こっちで戦え!!」
「は、はいっっ!! 行かせて頂きますよ~!」
どうやら自分の名前を呼ばれることには敏感らしい。おびき寄せられるようにして、ルティはおれの後ろをついて来る。
「――ん? 魔石? 魔石もついて来てるのか?」
ルティの専用魔石はまだ”覚醒”していない。その魔石が彼女に幻の影響を与えながら、傍にぴったりとついて来ている。それが何を意味するものなのか分からないが、思う存分戦ってみるしか無さそうだ。
「さぁ、さぁさぁさぁ!! 覚悟はいいですね?」
ルティは握った拳を反対の手で包み込み、ボキボキと鳴らして威嚇し始めた。せっかくやる気を見せてくれていることだ。おれも魔法を使わず、久しぶりに拳だけで戦うことにする。
「よし、かかって来い! ルティシア!」
「い、行きますよぉぉぉ!!」
少しだけ動揺を見せたようだが、ルティはおれをめがけて真っすぐに突っ込んで来る。彼女の場合、突進におけるスピードは無い。軽快な動きが出来るわけでも無いが、破壊力がある。
油断した敵に対しては有効であるし、近接戦闘における強さで敵う奴はいないはずだ。被物理攻撃はおれには効かないが、防御を下げてたまにはまともに受けてみることにする。