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俺は罪人だ。国王を殺して、王妃を我がものにしようとした。恋をしていた。王妃は今日処刑された。明日は我が身だが、なにかに一矢報いたい俺は今日、牢を抜けようとそう考えている。
憂鬱なグレーの空模様を格子の隙間から覗いていると、大きな目眩がしたような気がした。俺は今は罪人であるが、その前に1万の兵士を従えた城主であった。俺の家臣はいつも不満を垂れていたから俺が処刑されるのを喜んで見物しに来るだろう。実に不満足な。
しかし今思えば王は王妃に愛がなかった。王妃も俺に本気で惚れていたと思う。なぜ偽物の愛を放っておいてから本物の愛を断罪するのだ。世の中の全てが向かい風である。牢を出る気力はもう消えていた。気ずけば空に広がった宇宙を背に俺はうつ伏せた。
俺は起きた。朝食を噛み締めた。今日が最期か。曇りの日だった。牢の番人が寄ってきてこう言った。お前の処刑は引き伸ばされた。雨の日に気分も晴れないだろうからな。そう言っただけで果たして帰って行った番人の背中を、俺は呪った。俺は今日自殺する。今日決めたことだ。 ~完~