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「最近、変な夢を見たんだ」
いつもジョークで場を凍らす彼が会話の区切りにそう言った。
カーヴェ「へぇ、君からそんな言葉が出ると思ってなかった。」
カーヴェ「どんな内容なんだい?」
(自称)偉大なる建築家の彼は酒に酔いながらそういう。
その反面、連れの書記官は酒を片手に本に夢中のようで内容に上の外だ。
セノ「成長した姿の草神様が何かを呟き消えて、今の草神様が見えたと思ったら目が覚めるんだ。」
ティナリ「成長したってどういうこと?」
ティナリ「実際に成長した姿を見たわけでもないだろ?」
セノ「分からないが反射的にそう感じたんだ。」
セノ「今考えたら似た誰かだったかもしれない」
カーヴェ「呟きって何を言ってたんだ?」
僕の質問につられ、カーヴェも興味を持ち出した。
セノ「それが謎で、最初に見た姿の名前も言葉も全く思い出せないんだ。」
アルハイゼン「君が見たのが夢である以上、それが正しい。」
アルハイゼン「夢を把握してるのは精神異常を起こす恐れがあるのは君も知っているだろう?」
珍しくアルハイゼンが口論に口を出す。
カーヴェ「夢日記、だったか?」
夢日記。毎日見た夢の内容を記録していると、夢と現実が混同して気を狂わせると言う話だ。無論、自分には関係ないが。
セノ「でも何回も見ているんだ。それにおかしい点はまだある。」
セノ「その夢を見たあと違和感があるんだ。」
ティナリ「違和感って、どんな?」
セノ「一応聞きたいんだが、草神様は代替わりなどはしてないよな?」
アルハイゼン「君の記憶に間違いはないし、俺たちもそう認識しているはずだが」
ティナリ「記憶に食い違いがあるってこと?」
セノ「ああ、夢のあとは何故か歴史の内容に違和感を感じるんだ。誰かいたような気が…」
カーヴェ「不思議なこともあるんだな…」
結局、この話はセノの記憶違いで、単なる夢の影響と言うことで終わったが、セノは少し気にくわない顔をしていた。
カーヴェ「夢と言えば、ティナリは夢を見れたのか?」
少し興奮気味に話し掛けられ、自分の話題であることに気がつく。
ティナリ「いや、それがまだ見れてないんだ。」
スメール人は夢を見ない。その話はもう終わり、今は夢をテーマとした話もあるんだとか。
その中で僕はまだ夢を見ていない。
ティナリ「そういう君らは?」
カーヴェ「僕は徹夜が日常だからな…。」
アルハイゼン「隣の騒音に魘されることならある」
ティナリ「ごめん、聞かなかったことにしておくよ」
ティナリ「もはやアルハイゼンとかは現実主義者すぎて夢を見ることないんじゃないかな」
アルハイゼン「夢は本で読んだ話だけで充分だ。」
アルハイゼン「最悪、いい夢を騒音で起こされる状況になり得る」
セノ「 夢 をいつ見れるかは本と違って 読 め ないからな」
………よし、流そう
ティナリ「あ、キノコの盛り合わせお願いします」
セノ「分かりにくかったか?今のは夢と読むの語呂を… 」
ティナリ「あー、説明はいいから 」
カーヴェ「でも、もし夢を見れるんだったらどんな夢を見たいんだ?」
みたい夢。考えたこともなかった。
コレイの病も治った。
なんやかんやでこの四人でテーブルを囲うのが一番の楽しい時間だろう。
ティナリ「夢っていう夢はないかな。」
願うことなら沢山ある。
毒キノコを食べる冒険者は減ってほしいし、見たことない植物を見つけてみたい。
ティナリ「少し前まではあったよ?」
ティナリ「コレイみたいな患者が元気になった姿をみたいって。でももう夢じゃないだろ?」
ティナリ「僕には分からないけど、それって君たちが何かしてくれたんでしょ?」
チラッと目線をセノとアルハイゼンに向ける。 こういうとき、少しカーヴェに申し訳無くなるけれど。
ティナリ「夢なんか見なくたって、夢見たことは君たちと、そして僕自身で大体できちゃうからさ。」
僕が夢を見れないのは不可能なことは不可能だと分かってるからだと思う。
どう頑張っても森を荒らすやつはいるし、無作為に毒を食すやつもいる。
病原菌がある限り病気は減らないし、人はいずれ体が老いる。
けれど、不可能を可能にしたことがあるのも確か。
夢見るほどに素晴らしい日常があるのだから、夢なんて見れなくていい。
これが夢を見れない僕の見解だ。