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「……ふふ。紗南ちゃん、体が固まってるよ。リラックスして」
凌先輩は満足げに微笑むと、ゆっくりと腕の力を緩めた。けれど、繋いだ手だけは離そうとしない。
「午前中は俺だけのもの。……今のこの感じ、遥には内緒だよ? あいつ、嫉妬で何するかわからないからね」
悪戯っぽく笑う先輩の表情を見て、私はようやく「午前中の約束」を思い出した。
遥は今頃、成瀬先輩や小谷先生と一緒に、別のエリアを回っているはずだ。遥がこの光景を見たら、きっと……。
「……さあ、もう少し回ろうか。まだ時間はたっぷりあるし」
凌先輩は私の手をしっかりと恋人繋ぎにして、再び歩き出した。
バックハグの余韻が、歩くたびに背中を熱くさせる。
私は、さっきまでの「お兄ちゃん」のような凌先輩が、もうどこにもいないことに気づいて、激しく動揺していた。
でも、心の一部では、午後に待っている遥のことを考えていた。
あの不器用で、真っ直ぐな熱を持つ遥と二人きりになったら、私はどうなってしまうんだろう。