テラーノベル
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エピローグ:残された旋律と、続いていく明日『西洋洗濯舗 菊池』の店先には、今日も変わらない日常が流れていた。
新しく張り替えられたガラス戸から、暖かな陽射しが差し込む。店内では、アイロンの白い湯気がゆったりと立ち上り、芳しい洗剤の香りが漂っていた。
「ハル君、そのシャツ畳み終わったら、次はあっちのハンガーにかけてくれる?」
「はい、真理さん!」
ハルは返事をし、手際よく作業を進める。かつて恐怖に怯え、肌を灰色に変色させていた少年の顔には、すっかり健康的な血色が戻っていた。自分の運命を受け入れ、ここで生きることを決めた彼の瞳には、まっすぐな未来が映っている。
真理はふと手を止め、店先の木製ベンチに目をやった。
そこには、誰も座っていない。
かつて横柄な態度で腰掛け、下手くそなギターの弦を弾いていた男の姿は、もうどこにもない。ただ、ベンチの脇には、ボロボロのギターケースと、擦り切れた一枚のピックが静かに残されていた。
「……バカ海堂。最後まで格好つけちゃってさ」
真理は呟き、愛おしそうにピックの表面を指でなぞる。目元に浮かんだ涙を小さく拭うと、彼女はハルに向かって優しく微笑んだ。
「さ、手伝い終わったら夕飯の買い物に行きましょ。今日はスパゲッティにするわ」
街を見下ろす小高き丘の上。乾 巧は一人、吹き抜ける風の中に佇んでいた。
ポケットから手を取り出し、じっと見つめる。指先はほんの僅かに灰化の兆候を見せていたが、その瞳に焦りや絶望の色はない。友から託された明日を守り抜き、ただ静かに己の命の火を燃やし続ける覚悟だけがあった。
「……海堂。木場。お前らが残していった世界は、相変わらず面倒で、泥臭いよ」
巧は胸の奥で語りかけるように、ぽつりと呟いた。
ふと、風の音に紛れて、調子の外れた不協和音――あの愛おしいギターの旋律が聞こえた気がした。巧の口元に、かすかな笑みが浮かぶ。
「……でもな、悪くねえ明日だ」
巧は首をすくめると、一度も振り返ることなく、再び歩み始めた。
英雄になれなかった男たちが命を燃やして繋いだ「夢」の続きを、この足でどこまでも歩んでいくために。
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風民
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サッピーの小説室
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レド(破壊神)
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コメント
1件
第10話読み終わったよ〜😭🌸✨ エピローグって分かってても、真理さんの「バカ海堂」って台詞でもう涙腺崩壊した…あのピックに込められた想いが重すぎるっ!💔 ハルくんが元気になっててホッとしたし、巧が1人で歩き出したラスト、風に混ざったギターの音が聞こえた気がするって描写がエモすぎて叫んだわ…😭🎸✨ 「悪くねえ明日だ」って言える強さ、ほんとかっこいいよ…!英雄になれなかった男たちの軌跡、しっかり受け取ったよ…!💖