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『皆で鍋パ☆、孤独なリュカを救え!!』
ミモリン達は捕まえたクソデカサンショウオ
を捌いて鍋パーティーをするために、
おそろ山の洞窟の どこまでも どこまでも
広いカルスト台地に来ていました。
ミモリンは夜空を見上げました。
それは、どこまでもどこまでも美しく、
広大な夜空でした。
「…….それじゃあ皆、酒樽は持ったね?
ミモリン、おそろし山の流儀は、もう覚えたよね。」
いつものように十二単のように重ねた様々な
民族衣裳を着崩し、胸に空いた大きな穴と
美しく割れた腹筋を晒しながら、
魔王バルザルドは言いました。
「は、はい!!えっと乾杯する時は素手で
酒樽の蓋を割る。料理は基本手掴みで
豪快に ……ですっ!!!!」
バルザルドの質問にミモリンはしっかりと
答えることができました。
これにはバルザルドもにっこりです。
「うん、よく覚えたね。それじゃぁ皆、
各々酒樽の蓋を割ってくれ!!!!」
ヤッホーちゃんは肘で豪快に酒樽の蓋を
割りました。フージャはかかとおとしの
要領で酒樽の蓋を割りました。相変わらず
ばっちいですね。ガランドは必要最小限の
力と動きで酒樽の蓋を割りました。
ミモリンはヤッホーちゃんを真似して
肘で豪快に酒樽の蓋を割りました。
肘がジーンとして思わずミモリンは涙目に
なりました。
「乾杯!!!!!」
おそろし山の魔王バルザルドはそういって
満天の星に向かって高々と酒樽を掲げました。
「「「乾杯!!!!」」」
ヤッホーちゃん、フージャ、ミモリンも
高々と酒樽を掲げて乾杯しました。
ガランドは喋れないので乾杯だけ
しました。
皆(ガランド以外)、酒樽の酒をグビグビ
のみだしました。
「っぷはーーー!!!!っしみるわーーーー!!!!」
ヤッホーちゃんは酒樽を豪快に置きながら
唸りました。
「うちの配下達に発酵させた極上の酒でさぁ。 ……..なかなかいけるでしょう?」
フージャは自慢げに言いました。
「ふんっ、なかなかやるじゃないの!!!
アホのフージャと違って配下は優秀なようねっ。」
ヤッホーちゃんはまたそう言ってぐびぐび
とお酒を呑みながら。
「バルッおかわりッッッ!!!!!!」
と言ってダンっと勢いよく酒樽を机に置きました。 酒樽は粉々になってしまいました。
「はいはい。」
バルはそう言って指パッチンをして
魔法でヤッホーちゃんの元に新たな酒樽を
用意しました。
「ウッヒョーーー!!!!」
ヤッホーちゃんはそう言ってまたお酒をグビグビのみだしました。どうやらヤッホーちゃんはとてつもない酒豪のようです。
ミモリンもんぐっ、んぐっと喉を鳴らしながらお酒をのみます。
「それじゃあ、本日のメインイベント。
クソデカサンショウオの吊るし切りショーを
はじめるよ。」
バルザルドはミモリン達を見まわしながら
目をキラキラ輝かせて言った。
「料理長ッッッ!!メェープル•マカロン!!!!
……..ッッカモォォォォンッヌッ……!!!」
バルザルドがそう言って指パッチンをすると、ヤギのような角と耳と目をし、ミモリンと同じように首に首輪とベルをあしらえた
可愛らしい少女がミモリン達の目の前に
あらわれました。
この少女が、おそろし山の料理長。
《大食らい》のメェープル•マカロンです。
メェープル•マカロンは魔王一同に一礼した
後、柔和な笑みを浮かべて言いました。
「私が、本日のクソデカサンショウオの
吊るし切りを担当させていただきます。
メェープルマカロンでございます。
………..変身。」
マカロンが愛くるしい声でそう言ってベルを鳴らすと
突然、マカロンの服が弾けとびました。
(!!? ………これは …….!!!?)
そう、変身は、ミモリンの専売特許では
なかったのです。
白濁としたウォータースライムが
マカロンの身体を隅々まで洗い流しました。
ドドドドドドとカルスト台地を駆け抜ける
99匹の屈強なる羊の魔物達が口々に叫びます。
「進め進メェェェェ!!!!!!!俺達の毛皮デェェェ!!!!マカロン様の身体をお拭きしろぉぉぉぉ!!!!!!!」
「ウオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
心なしか羊達の士気がいつもより高いのは
気のせいでしょうか?
「自分ッッマカロン様の身体をお拭きするためにこの部隊へ志願しましたッッ!!!!!!!!!
ウオオオオオオオオオオ!!!!!!」
と聞き捨てならない台詞を吐く輩もおりました。
マカロンは屈強なる99匹の羊達におしくらまんじゅうされても涼しい顔で笑っております。
マカロンが指パッチンをすると、羊達は魔法で一瞬でどこかへ行き、青い光とエレガントな音楽とともにマカロンはミモリンよりも
高級そうなメイド服姿へと変身し、自分の
身体よりもはるかに大きい包丁を掲げました。
お料理マカロン大盤振る舞いモード、スタンバイ完了です。
「流石のマカロンでもこのデカブツ相手じゃ
大変でしょ。マカロンッ!!!久々に《憑依合体》するわよっッッ!!!!」
ヤッホーちゃんがそう言うと、ヤッホーちゃんはマカロンの身体に取り憑きました。
憑依合体も、ミモリンの専売特許ではありません。
「「《憑依合体》!!!!!」」
ヤッホーちゃんとマカロンは、声を揃えて
叫びました。
山の精霊ヤッホーに取り憑かれ、マカロンの
身体はぐんぐん…..ぐんぐん…..ぐんぐんぐんぐんと大きくなりました。
そしてマカロンは、25mあるクソデカサンショウオを 片手で持ち上げるほど巨大で荘厳な 姿へと変身しました。
お料理マカロン神威、
スタンバイ完了です。
「(….いつ見ても、ヤッホー様と憑依合体して 見下ろす世界は、格別ですねぇ。)」
ヤッホーちゃんと憑依合体したマカロンは
テレパシーのような魔法でそう言いました。
「《母なる大地の鉤》。」
マカロンがそう言うと、広大なカルスト台地がボゴォッ…..と隆起し、とてつもなく巨大な鉤が現れました。
鉤はクソデカサンショウオの下顎に刺さり、
25mもあるクソデカサンショウオを軽々と
持ち上げてしまいました。
「ガランド、僕達のまわりに透明な防壁を
張ってくれ。」
バルザルドがそう言うと、ガランドは瞬時に
ミモリン達のまわりに巨大で透明な幾何学
模様の防壁を展開しました。
「ヤァァァァァァッホゥッッッ!!!!!!!!」
マカロンはそう叫びながらものすごい早さで
包丁を動かし、クソデカサンショウオの皮をはぎ、肉を削ぎ、はらわたを取り、骨を
切り取りました。
あまりの早さに包丁から火花が散り、
とてつもない衝撃波が発生しました。
その衝撃波はガランドが展開した防壁をわずかに揺らしました。
神話のような料理光景を、ミモリンは息を
呑み、目を大きくあけ、さらには口をぽかんとあけながらじっと見つめておりました。
「……ふぅ。お待たせいたしました。
本日の第一の皿、
クソデカサンショウオのカルパッチョでございます。第二の料理
のクソデカ鍋もただちにご用意いたしますので少々お待ちくださいませ。」
《憑依合体》を解いた マカロンは、少し汗ばみながらも恭しく頭を下げ、 鍋の用意に取りかかりました。
(おお……..これは………!!!)
おなかペコペコのミモリンはクソデカサンショウオの カルパッチョを見ました。クソデカサンショウオの白身がキラキラと宝石のように輝いております。お皿の端にはかよわき もの達の森でとれたいくつかの旬の野菜がそえられ、お皿の中心には ギガトマトがとてつもない存在感を放ち、 それらの食材におそろし山で取れた胡椒、 オリーブオイル、麗しき妖花のエキスを熟成させた黒酢がかけられているではありませんか。
(※ちなみに麗しき妖花とは第7話で
バルザルドが食べられていた巨大な食虫植物の正式名称のことです。)
(うっっま、なにこれうっっま!!!!いくらでも
いけちゃう!!!)
ミモリンは手掴みでカルパッチョを
ガツガツ食らいました。
人間だったころのミモリンの面影は
もうありません。
ドレッシングのべっとりついたふさふさ
の腕をけだもののようにぺろぺろとなめました。ばっちいですね。
ミモリンはちょっぴり悪い子になってしまいました。あーあ、バルザルドのせいですね。
「あれ、なんか力が湧いてきました…..。」
ミモリンの身体をぼんやりと水色の光が
覆いました。
「ああ、クソデカサンショウオはおそろし山の河川のあらゆる魔物を食らいつくし成長し続けた魔物。その肉を食べた者はとても熱に
強くなるんだ。」
「ほへー。」
鈍感なミモリンは呆けた顔でバルザルドを
見ました。
「そして今日の食事の皿はガランドが魔力を
こめて作った特別製だ。魔物の肉の効能を
およそ500倍ほど引き上げる効果がある。」
「……..ってことは私は今ものすごく
熱に強い身体なんですねー。…..ハッ。」
そこでミモリンはリュカのことを
思い出しました。
そしてミモリンは、魔王が何をしたいのか。
なんとなく分かりました。
「ミモリン、僕は今まで君に
《禁忌のリュカ》の部屋を掃除させなかった。それはリュカの熱は、魔物化した君すら
簡単に焼き焦がすほど危険なものだからだ。
だが、君はこのおそろし山を掃除してまわり、様々な経験をし、魔物の肉をたくさん
食べた。今の君なら、今夜のクソデカサンショウオ料理をたいらげ、いくつかの魔道具を準備すれば、リュカの熱に耐えれるかもしれない。」
魔王はここでミモリンに頭を下げました。
「魔王として、父親として君に頼みが
ある。どうか、リュカを救ってやってくれ。
僕ら幹部では閉じきったリュカの心は救えなかった。君だけなんだ。リュカを救える可能性がある人間は君だけなんだ……!!助ける
方法は分からない。だがどうか…..どうか
…….!!!」
魔王バルザルドは深々と頭を下げ続けました。
その姿をフージャは無表情で見つめ、
ヤッホーちゃんは少し寂しそうな目で
見つめておりました。
ミモリンは必死に言葉を探しました。
そして。ミモリンは口を開きました。
「私はッ……私は掃除しかできないです…..
でもッ….でも…..!!!私もリュカを助けたいですッ…….!!!!リュカにも、おそろし山の
みんなと一緒にごはんを食べてほしいですっ…… がんばる…..がんばりますっ!!!!!!
私にやらせてください …….!!!!!」
そう言ってミモリンは頭を下げました。
魔王バルザルドはどこか安心したような
顔で笑いました。
「そしたら、またごはんの続きにしよう。
たらふく食べたらまた働いてもらうよ、
《おそうじミモリン》。」
「っっはいっっ!!!!!!」
「ほら、ミモリン、肝をあげるわ。クソデカサンショウオは一番肝が旨いのよ。」
ヤッホーちゃんがそう言ってミモリンの皿に
肝をぽいっと渡しました。
「このバクハツキノコも絶品ですぜぇ?
うちの配下達がつくったんでさぁ。」
そういってフージャはバクハツキノコを
ぽいっとミモリンの皿に渡しました。
ミモリンはクソデカ鍋をガツガツとかっ食らいました。
(肝…..生臭くてあんまおいしくない。
バクハツキノコ……口の中でキノコのうま味がバクハツしてめちゃうま。出汁…….
なにこれなにこれ..スゴクッ……めちゃくちゃッ…..!!!!!!)
「…….美味ィィィーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
………ゴキュッゴキュッ……ぷはぁ!!!!!
がるるるるるるるるる!!!!!!!!!!」
こうして、クソデカ鍋を平らげ、
いくつかの儀式をし、万全な準備を整えた
ミモリン•ヒル•ブラックウェル。
彼女は果たして、《禁忌のリュカ》を
救うことはできるのでしょうか?
がんばれミモリン、負けるなミモリン。
ハッピーエンドになるといいですね。
(次回、さらばガランド!!!割れた陶器と
零れた涙。次回もお楽しみに☆)