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14 - 第8話:ログ外メモリ

2025年05月13日

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第8話:ログ外メモリ

金曜午後。

社内は週末前の空気に緩みつつあったが、ユーヤの席だけは変わらぬ緊張感に包まれていた。


黒いパーカーにダークグレーのコート、前髪は少し湿り気を帯びて目元を隠す。

その眼差しは、モニターの奥にある何かを、確かに“見て”いた。


彼の端末に表示されているのは、NEO-Vの環境共鳴ログビューア。

そこには通常記録されない、“メモリ外領域の干渉値”が現れていた。


【emotion_trace[log_outside]=True】

【source_id:未登録】

【記録時間:system_0プレイ中】

【内容:静かな願いのような信号】




「……俺が、こんなものを残した覚えはない」





【LAST STRIDE:廃都マップ/ファントムタグ戦】


巨大なガラスのビルが連なる“旧都市エリア”。夜景のようにライトが瞬くが、誰も住んではいない。

そこに、影のような――system_0が現れた。


装備はナイフ、グラビティキャンセラー、リフレクトベスト。

**“重力を無視する逃走特化構成”**で、光の差さない高層区画を縦横無尽に駆ける。


敵が索敵ドローンを投下した瞬間――

ユーヤは一歩先に建物の屋上を抜けて、**“本来存在しない構造空間”**に滑り込んだ。





【存在しない空間/グリッチ領域】


その一角には、明らかに地形マップと一致しない“空間の裂け目”があった。

誰も入れないはずのデバッグ領域――

そこにsystem_0は立っていた。


空間が脈動するようにゆらぎ、微細なノイズが走る。


そして彼の周囲に、**文字でも音でもない“誰かの感情”**が発現した。


──「誰か、届きますか」

──「ここは、記録に残らない」

──「願いだけが、繰り返し残ってる」





【ユーヤの反応】


彼は、ナイフを静かに抜き、空間に向かって言葉もなく手を伸ばした。

その手が触れたとき、コードの中に一行の“コメント”が浮かび上がった。


// この戦場で、人が壊れないための設計を

// 誰かが、そう願ったまま消えた




ユーヤは、ふとわずかに眉を動かした。


「これは……俺じゃない。“誰か”が、残した……感情」





【現実:シスケープ開発部】


八巻がユーヤの席を横目で見た。

モニターの奥に、まるで誰かと会話しているような静けさを感じたからだ。


「お前さ、最近本気で“ログにない戦闘”やってないか?」


ユーヤは黙ったまま、返信もせず、目の前のログに記された座標を書き留める。


「記録に残らない願い」が、今も動いている。

それを、system_0だけが感じ取っていた。





【コザクラ:メッセージ送信】


その夜、ユーヤのCOKOLOアカウントにメッセージが届く。


《今日のファントム、超かっこよかったよ!

お兄ちゃん、まるで“心の中に入り込んで戦ってた”みたいだった!》




ユーヤは一瞬、目を細めて画面を閉じる。


「……誰の心、だったんだろうな」

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