テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
荷物の整理も無事に終わり、真理亜は自室でひと息ついていた。
リビングからは男子たちの笑い声が時折聞こえてくる。なんだか楽しそうで、でも少しだけ、自分がその輪の中に完全に入れていないような気がして――真理亜は軽くため息をついた。
そんな中、リビングでは、ある“作戦会議”がひそかに行われていた。
流星:「なあなあ、大ちゃんって、もしかして真理亜ちゃんのこと___好きなんちゃう?」
そう切り出したのは、大西流星だった。彼はその大きな瞳をぱちぱちさせながら、大吾の正面に座っている。
大吾:「えっ!?急に何言ってんねん」
大吾はコップの水を吹きかける勢いでむせた。
丈一郎:「いやいや、明らかにおかしいって。あの落ち着いた大吾が、昨日からちょっとそわそわしてるやろ?」
藤原丈一郎が腕を組み、うなずく。
和也:「しかも今日、一緒に荷物取りに行ったやん?何か話してたんちゃう?」
大橋和也も、少し探るような口調で続けた。
大吾:「別に……ただ昔の話をしただけや」
大吾は俯いた。
流星:「それ、めっちゃ大事な話やんか」
流星は鋭い。天然そうに見えて、人の気持ちを読むのがうまい。
流星:「まさか、昔助けてもらったのが真理亜ちゃんって、本人に言ったん?」
大吾:「……言ったよ」
流星:「やっぱり!あ〜もう確信したわ。それは恋や恋」
大吾は慌てて首を振った。
大吾:「ちがう!そんなんちゃうって!あれはただの恩や。助けてもらったから、感謝してるだけや!」
和也:「ほんならLINE交換したのも’’感謝の印’’ってか?はは、わっかりやす〜」
和也がにやりと笑うと、丈一郎も
丈一郎:「青春やなぁ」
としみじみ言う。
大吾:「……もうええ!ほっといてくれ!」
ついに大吾は立ち上がり、乱暴にリビングの扉を開けて出て行った。
真理亜:「え、大吾くん……?」
大吾:「あ……」
ちょうど廊下に出てきた真理亜とすれ違い、一瞬目が合った。
けれど、大吾は何も言わず、そのまま家を出ていってしまった。
扉の閉まる音が静かに響く。
真理亜は、その背中に言い切れない不安を感じた。
真理亜:「……何か、あったん?」
リビングに戻ると、男子たちは気まずそうに視線を交わしていた。
流星:「うーん……ちょっと、言い過ぎたかも」
流星がぽつりと呟いた。
真理亜はただ黙って、大吾が出ていった扉を見つめていた。
彼の顔に浮かんでいた、あの表情。
自分が忘れてしまった大切な’’過去’’に、彼はどんな思いを抱いていたのだろうか。
その夜___
彼は、もう戻ってこなかった。