テラーノベル
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西畑大吾は、無言で夜の住宅街を歩いていた。
街頭に照らされる道の先には、もう何年も近づかないと決めていた’’家’’がある。
それでも__あの空気が、自分を責め立てるように感じた。
大吾:「何してんねん、俺……」
真理亜の顔が、頭から離れなかった。
忘れられても仕方がない。けど___思い出してほしかった。少しでも、自分を覚えていてほしかった。
気がつけば、足は実家の前に止まっていた。
灯りはついている。まるで、自分を待っていたかのように。
大吾:「……一瞬だけ、中の様子だけ見て帰ろう」
そう思って、玄関のチャイムを押した。
カチャ___
大吾母:「……あら。大吾……じゃないの」
母の声は、昔と変わらず冷たく乾いていた。
顔は笑っているようで、目が笑っていない。
大吾母:「……帰ってきたの?ふふっ、いい子ね」
次の瞬間、彼の腕は強く引っ張られ、家の中に無理矢理引きずり込まれた。
大吾:「えっ……!?な、なに__」
大吾母:「せっかく出ていったと思ったら、また戻ってくるなんて。どういうつもり?」
奥から出てきたのは父親だった。目つきが鋭く、酒の匂いをまとっていた。
大吾:「ちょっと顔見に来ただけや。すぐ帰るから__」
大吾は玄関に戻ろうとした。だが、その手は父親に強く掴まれた。
大吾父:「帰れると思ってるのか?このクズが」
大吾:「いっ……!」
ドスン。
腹に蹴りが入った瞬間、大吾はその場に崩れ落ちた。
大吾父:「せっかく逃げたのに戻ってくるなんて、どれだけ親不孝なガキやねん」
大吾:「……ッ」
母親は無言で扉を締め、鍵をかけた。
玄関は、もう開かれない。
その夜、大吾は地下室のような薄暗い部屋に閉じ込められた。
電気も布団もない。冷たい床の上で、声も出さずうずくまる。
形態はまだポケットの中にあった。
唯一の繋がりだった。けれど、すぐにバレるかもしれない。
彼は震える手で、録音ボタンを推し__親の怒声や、足音、蹴る音をこっそり残していた。
そして、最後の力を振り絞って、LINEにボイスメッセージを送った。
「やばい……もう無理かも……助けて……真理亜ちゃん……」
メッセージを送った直後、愛外が近づいた。
大吾父:「なにしてんねん、お前……」
バキッ!
床の倒れた形態の画面がひび割れた。
薄れゆく意識の中で、大吾は心の中で呟いた。
__ごめん、真理亜ちゃん。
__俺、また……助けられる側や。
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