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可愛いが集合しすぎてキャパオーバーです🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️
目黒くんが到着してから、この場にいる人全員が、静かにお互いを見つめ合っていた。
目黒くんも渡辺さんも驚いたような顔をしていて、どうやらお知り合いのようだけれど、同じくらいラウールくんもオーナーも、目黒くんが来たことに驚いているようだった。
「しょっぴー、なんでここにいるの!?」
「なんでって、ここ俺の家だし。そういうめめこそなんでここにいるの?」
「目黒くんじゃん!!久しぶりだね!」
「目黒さん、お久しぶり、元気にしてた?」
「ラウも涼太も、めめのこと知ってんの?」
「うん!この間お店に来てくれたんだよ!」
「え!目黒くん、そうだったの!?」
「あ、うん、、阿部ちゃん家で風邪引いた時に…。」
それぞれが言いたいことを、みんな思いのままに訴えていく。
言葉のキャッチボールはずっと噛み合っていなくて、混沌としていた。
一瞬生まれた静寂の助けを借りて、オーナーがまとめる。
「…まぁ、立ち話もなんだし、とりあえずご飯食べようか。」
オーナーは、俺たちをバックヤードの中に通し、二階へ続く階段まで案内してくれた。
五人で一列になって階段を登り、階段と部屋を繋ぐドアを潜ると、そこは居住スペースになっていた。
二人掛けのソファーとテレビ、青と赤の色違いのマグカップ、全てが暖かい色に包まれていて、その部屋は渡辺さんとオーナーの 幸せで満たされているようだった。
お邪魔します、と言い靴を揃えて中に入る。
部屋は全てが綺麗に整っていて、埃ひとつない。窓の近くには観葉植物と薔薇の切り花が飾ってある。お店の方にも薔薇がたくさん飾ってあるので、オーナーは薔薇が好きなのかもしれない。
「上のお家に上がらせてもらったの初めて!すっごい綺麗であったかいお家だね!」
ラウールくんも俺と同じことを思っていたようで、素直な感想を述べる。
それに対して渡辺さんが答える。
「おう、綺麗にしてないと気が済まないからな。それに今日だけ特別だからな。涼太が良いって言うから仕方なくなんだからな。」
「ありがとね、翔太」
「…おう。」
オーナーが褒めたり、お礼を言ったりするたびに、渡辺さんはそっぽを向きながら口元を緩ませていた。きっと天邪鬼気質な人なんだろうな。なんだかお母さんに褒められた子供みたいで、少し可愛らしかった。
オーナーがご飯を作ってくれて、それをラウールくんがお手伝いしている間、俺と目黒くんは隣り合って座り、テーブルを挟んだその向かいで渡辺さんがソファーに座る。
何かを考えるように渡辺さんは唇を指でさすり、不意に口を開いた。
「…阿部さんって言ってたよね?」
「あ、はい!」
「んで、もしかしなくても、めめがずっと言ってた「あべちゃん」ってのは、今俺の目の前にいる阿部さん?」
「そうだよ。俺の大事な人。」
「…目黒くん…っ」
不覚にもときめいてしまった。この状況で、なにを高鳴らせているんだと、自分で自分に突っ込む。涼しい顔をしてこんなにかっこいいことを言ってしまうなんて、本当に目黒くんと一緒にいると、心臓がいくつあっても足りない。
「なるほどね。そういうことか。まぁ、俺の疑問は全部消えたしいっか。阿部ちゃんって呼んでもいい? めめのせいで「阿部ちゃん」で耳が慣れちゃった。」
「あ、はい!どうぞ!」
「ん、ありがと。まさかここで全部繋がってくるとは思ってなかったわ」
「渡辺さんは、目黒くんとお知り合いなんですね」
「お知り合いっていうか、んー、めめ、こういうのなんていうの?」
「阿部ちゃん、しょっぴーは、おんなじグループのメンバーなの」
「そうだったの!」
「うん、この間阿部ちゃんが電話してくれた佐久間くんと、岩本くんっていうムキムキのかっこいい人と4人で。」
「そうなんだ!ごめんね…。俺、あんまりそういうの詳しくなくて…」
「ううん、阿部ちゃんが俺のこと好きでいてくれたらそれでいいの。」
渡辺さんは俺たちを見て、「まぁ、とりあえず、おめでとう」と言った。
おめでとうと言ってくれたしょっぴーには大変申し訳ないのだが、俺はいまだにこの状況が飲み込めていなかった。なぜ、しょっぴーは阿部ちゃんの家の近くにあるこのカフェにいて、オーナーはどうして俺たちをこの二階の部屋に案内してくれたのか。
そして、どうしてしょっぴーはこの家の勝手を知っているような慣れた手つきで、俺たちにお茶を出してくれたのか。
ひとまず、おめでとうと言ってくれたことにお礼をして、俺からも聞いてみることにした。
「ありがとう、しょっぴー。俺も聞いても良い?」
「ん?」
「どうして、しょっぴーはここにいるの?」
「お前やっぱアホだな。」
「えぇ…ひどくないすか」
「ほんとのことだろ。りょうたぁー!」
自然に言われた悪口にシンプルに落ち込む。
そんな俺をよそに、しょっぴーはオーナーを呼んだ。
「なぁに?」とご飯を作っていた手を止めて、オーナーがキッチンからこちらへ来てくれた。
「涼太、こっち」
そう言って、しょっぴーは自分の前にオーナーを座らせて、後ろから抱き締めた。
オーナーの首にかかるネックレスには指輪が付いていて、しょっぴーはそれを左手の人差し指に引っ掛けて俺に見えるように前に掲げた。チェーンがちゃり、と静かに音を立てる。二つの指輪がしょっぴーの指に収まっていた。
「こういうこと」
しょっぴーの薬指にも同じデザインのものが嵌められていて、やっと飲み込めてきた。
この間オーナーの指輪を見て、どこかで見たことがあると感じたのは気のせいではなかったのだ。
すごい偶然だ。驚きが止まらない。
「あ、あっ!あぁぁあああああーっ!」
「うるさ」
「ちょっと、、翔太恥ずかしいから…もう戻っていい?」
「かわいい。やだ。もうちょっとくっつかせて。」
「もう…ご飯遅くなっちゃうよ?」
「あと一分だけでいいから、お願い。」
「はいはい、しょうがないなぁ、もう。」
「じゃあしょっぴーはオーナーと一緒にここに住んでるの?」
まだ聞きたいことがあったので、また質問を投げかけると、急にオーナーといちゃつき始めたしょっぴーは、俺に邪魔されて迷惑だという顔を全く隠さずにこっちを見てくれた。
「さっきそう言ったじゃん。ここは俺の家だ、って。」
「そうだったんだ。いいなぁ。」
いいな、、俺も阿部ちゃんと一緒に住みたい。
…え、めっちゃ住みたい。
そしたら毎日会えるってことでしょ? え、すっげぇいいじゃん。
阿部ちゃんの方を向いて、阿部ちゃんの両手を取る。
「阿部ちゃんっ!!!!!俺たちも一緒に住もう!!!!!」
俺の言葉に目を瞬かせる阿部ちゃんはとっても可愛かった。
「えっと…ちょっと、早くないかな……? あっ、そう言ってくれるのはすごく嬉しいよ!俺もいつかはそう出来たらなって思うよ、、でも、まだ始まったばかりだし…それに…」
「ん?それに?どうしたの?」
「まだ、目黒くんの顔見るだけで緊張しちゃうから、、一緒に住んだらずっとどきどきしちゃいそうで…」
「っ……かわいい、、かわいすぎる、、、」
両手を引いて抱き寄せる。阿部ちゃんがかけているメガネが、かしゃんと俺の耳元で音を立てる。
驚くことが多すぎて、まだ伝えられていなかった。
今日初めて眼鏡をかけているのを見た。新鮮だった。すごく似合ってる。この間は優しいオレンジ色だったけど、今日は深い緑色のもふもふを着てる。
腕を解いて、阿部ちゃんの目を見る。
「今日も、すっっっごく可愛いよ。緑色、すごく似合ってる。」
「、…ぁ、、ありがとう………っ」
顔を真っ赤に染めて嬉しそうに微笑む阿部ちゃんを、今すぐにでも連れ去ってしまいたい。その衝動に悶えていると、しょっぴーに怒られた。
「人ん家でイチャつくな。」
目黒くんと渡辺さんのお互いへの疑問が晴れた頃を見計らって、オーナーが声を掛けてくれた。
「まぁまぁ、初々しくて可愛いじゃない。話も落ち着いたところで、ご飯にしようか。」
「やった。涼太のご飯、うまそ。運ぶの手伝う。」
「ふふ、ありがとう」
「しょっぴー、これ運んでー!!」
「はいはい、わかったよ」
みんなで楽しくご飯を食べる。
やっぱり誰かと食べるご飯はとっても美味しい。
みんなも楽しそうで、毛布に包まれている時みたいな優しい気持ちになった。
ご飯はどれもとっても美味しくて、俺もいつかこんな料理を作ってみたいなぁ、なんて考えていたら、突然誰かのスマホが鳴った。
「あ、ごめんね!音切ってなかった! …え!選考結果のメール来た!?」
なんと。ラウールくんの二次面接の結果が出たようだ。
一人で見るのは怖いのか、俺の方へ駆け寄ってきて、俺の腕をギュッと抱き締めてくる。
「あべちゃん、、怖いから一緒に見ててくれる…?」
「ふふ、いいよ?大丈夫だよ。そばにいるからね。」
「ありがとう…!」
なんだか弟ができたみたいで、嬉しくなった。
二人でスマホの画面をじっと見つめる。
「…ちょっと、俺の阿部ちゃんなんだけど……。」
「ハハァッ!子供相手にムキになんなよ、ハハハァッ!!!」
「翔太、あんまりからかわないの…」
受信ボックスの一番上にあるメールを、ラウールくんは震える指で恐る恐るタップする。
頑張れ。大丈夫。そうおまじないをかけるように背中を撫でる。
タップした瞬間、ラウールくんは目を瞑ってしまったようだった。
俺が先に読むのも違うよな、、と思い、画面は見ずにラウールくんをじっと見守る。
ゆっくりと薄目を開けて、ラウールくんが文字を読み進めていく。
「…厳正なる協議の結果、貴殿は二次面接を通過いたしました。つきましては、三次面接へお進みいただきたくご連絡申し上げます。三次面接が最終選考となります。日程は、下記の通りとなります………って、、、あべちゃん、、、もしかして、、、」
「合格だよ!!二次面接受かったんだよ!!!!すごいよラウールくん!!」
「やったぁぁぁあああぁぁっ!!!!」
心の底から嬉しくて、二人で抱き合った。
「うれしい、よかった…。ほんとによかった…。」
「阿部ちゃんありがとう、ほんとにありがとう」
「俺はなんにもしてないよ。ラウールくんが頑張ったおかげだよ」
「最後の面接は、阿部ちゃんにもらったネクタイつけて行くからね!」
「ふふ、ありがとう」
「最終面接の練習したいんだけど、阿部ちゃん時間あったら付き合ってほしい…!」
「うん、もちろん!土日ならいつでも大丈夫だよ!もしよかったら、うちおいでよ。」
「えっ!いいの!?」
「その方が集中できるだろうし、あんまり広い家じゃないけど、ぜひ」
「ありがとう!!阿部ちゃん大好き!」
「ちょっと待って、俺も行く。」
「目黒くん!?」
「阿部ちゃんと二人っきりとかだめ。」
「えー、僕なんにもしないよー?」
「それでもだめ。」
「もう、、ラウールくん、ごめんね?目黒くんも一緒でもいいかな?」
「僕は大丈夫だけど、オーナーも阿部ちゃんも大変だね。」
「?」
「しょっぴーも目黒くんもやきもち焼きなんだから」
ラウールくんの一言に、目黒くんと渡辺さんは「はぁ!?」とちょっとだけ怒っていて、俺とオーナーは恥ずかしさから下を向いてしまった。
To Be Continued………………