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次の日。いつものように食堂で朝食を取っていると、モーガンが顔を出した。

俺達と同じように、他の冒険者と被らないよう早めに飯を食べに来たのだと思っていたのだが、どうも様子がおかしい。

何かを探すようにキョロキョロと視線を泳がせ、俺と目が合うと足早に駆け寄ってくる。


「九条様。お食事中のところ申し訳ございません。今、大丈夫でしょうか?」


「話を聞くだけなら……」


面倒臭いなぁと思いながらも食事の手を止め、水で口の中の物を流し込む。


「九条様にお持ちいただいた冒険者達のプレートなのですが、どうやら一枚足りないようでして……」


モーガンが取り出したのは昨日渡したプレートだ。それを机に並べ始めた。


「……十一……十二……十三……。と、このように一枚足りないのです。それで何かご存じではないかと……」


三枚のシルバープレートと十枚のブロンズプレート。

侵入者の数は確か十四人だったはず……。しかし108番と獣達は、ダンジョンの遺体は小部屋にまとめたもので全部だと言っていた。


「先に脱出して帰ってしまった――という可能性はないか?」


「はい。昨晩遅くではありますが、タイラーをベルモントへ確認に向かわせました。キャラバン脱退には申請が必要なので、先に帰っているのであればギルドに申請が出されているはず……。しかし脱出したまま逃げると言うのは考えにくいかと……。一応街道には馬車の護衛として六班を待機させていたので、そこに報告を入れるのが筋ではないでしょうか?」


「そうだな……。誰が行方不明か目星はついているのか?」


「足りないのはシルバープレートなので班長の誰かとしか……。一班のリーダーはタイラーで、六班のリーダーも健在です。なので二班から五班までの四名の内のいずれかだと思われます」


「その四名のそれぞれの特徴とか、何かないか?」


「二班のリーダーはアレンと言う男です。二十代前半で長髪。銀製の弓を使っていました。三班のリーダーはシャーリーという女性です。髪は短めで短弓を……」


その名前に聞き覚えがあった。


「ちょっと待て! 今なんと言った?」


「髪は短めの女性で……」


「いや、そいつの名前だ。シャーリーと言ったのか?」


「えぇ、その通りです。それが何か?」


バイスやネストと共にダンジョンの調査に来た冒険者の一人だ。

確かにシャーリーなら、炭鉱の道順を覚えていても不思議ではない。

だが、集められた遺体の中に顔見知りはいなかった。

ということは、行方不明はシャーリーということで間違いはなさそうだ。


「わかったぞ。恐らく行方不明は、そのシャーリーだ」


「失礼ですが、その根拠は?」


「シャーリーとは以前会ったことがある。顔も覚えているが、炭鉱の遺体の中にシャーリーの物はなかった」


「おぉ、なるほど。となると逃げだしたか、まだ炭鉱内を彷徨っているかですな」


徐々に話の内容が確信へと変わり始めたその時、食堂の扉が勢いよく開いた。


「モーガンさん! 良かった。ここにいたんですね」


そこに立っていたのはタイラー。夜通し馬を走らせていたのだろう。その疲れと眠たそうな顔で酷くやつれているように見えたが、仕事はこなしたといった満足そうな表情を浮かべている。


「タイラー。どうでしたか?」


「残念ながら、ベルモントのギルドにキャラバンの脱退申請は出されていませんでした」


「そうですか……。ありがとうございます。これからどうなるかはまだ解りませんが、ひとまずはご苦労様でした。先にお休みになられてください」


その言葉に軽く頭を下げたタイラーは、食堂を出て行った。


「やはり、まだ炭鉱内ということになるでしょうか……。生死は不明ですが……」


「わかりました。俺がもう一度潜って探してみましょう」


「ご迷惑をおかけして本当に申し訳ない……」


キャラバンを解散する際、必ずギルドへ提出しなければならない報告がある。その中でも最も重要なのが、冒険者たちの生死の確認だ。

過酷な依頼であれば、誰かが命を落とす事もあるだろう。故にそれは自己責任であり、冒険者たちも理解している。

しかし、行方不明は認められておらず、生か死かのどちらかでなくてはならないのだ。


仲間が倒れれば、残された者がそのプレートを持ち帰ることで、死亡の証明が成立する仕組みなのだが、場合によってはプレートそのものを回収できないこともある。

ダンジョンでの遭難や、魔物に持ち去られた場合などだ。そうした生死不明の冒険者は、一年の猶予期間を経て死亡扱いとされる。

その一年間はキャラバンの解散も再結成もできず、冒険者も新しい依頼を受けることができないとギルドの規約で定められている。

厳しい規定にも見えるが、これには商人と冒険者、双方にとって大きな意味がある。

キャラバンから盗みを働く冒険者への対策。そしてキャラバンの皮を被り、冒険者に悪事の片棒を担がせようとする悪徳商人への対策だ。

もし行方不明が認められてしまうと、悪意のある者ほど身を隠しやすくなる。逃げ得を許さない為にも必要な規約なのだ。


この規約があるからこそ、冒険者は仲間を見捨てず、キャラバンは冒険者を粗末に扱わない。故に、行方不明者の捜索にも尽力するのである。


朝食を食べるのを再開しつつ、今後のことを思案する。

といってもシャーリーの捜索という選択肢しかないのだが、俺には一つ気掛かりなことがあった。

まさかとは思うが、出来ればそうであってはほしくないと願う。


炭鉱は広大だ。恐らく探すのには時間が掛かる。

俺はレベッカに昼食用の軽食を新たに注文し、それを受け取るとカガリと共に炭鉱へと向かった。

死霊術師の生臭坊主は異世界でもスローライフを送りたい。

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