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#溺愛
桜咲かな
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#溺愛
桜咲かな
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#人間不信
着替えを済ませ、髪を乾かし、ポニーテールに結ぶ頃には、ジェニのお腹がぐぅっと鳴った
「ごめんなさい・・・お昼から何も食べていないの」
頬を染めてジェニが恥じらう
「無理も無いわ、エレベーターに閉じ込められていたんでしょ?フェロモン男から聞いたわよ」
明美がジェニに、昔からの親友みたいに淡々と話しかける、ジェニは目玉を大きく見開いて謎の彼女を見た
「とにかく帰って来てよかったじゃないか」
そう言う竜馬をジェニは首を傾げて見た・・・どう考えても竜馬さんはうちの兄に会ったことを喜んでいる・・・どうしてだろう?私の兄は会社を捨てて、女と逃げたどうしようもない人なのに・・・ジェニと明美は無言で竜馬がウーバーに注文してくれた中華料理をテーブルに並べていた
「豊ちゃんも呼んでくる、あの人おなかが空いていると、イライラするから」
明美が豊を呼んで来て、ジェニのいるダイニングの席についた、明美が豊にエレベーター事件の事を説明し、着る服が無い竜馬に、豊の服を貸す様に説得してくれた
ジェニはまだ兄に言い足りないとばかりに、豊を睨み、豊もまたジェニと喧嘩する気満々だった、竜馬は物腰こそ柔らかいけどあとの三人に「ごたごた言わずに飯を食え」と命じているように、沢山の中華料理を大皿に盛りつけていた
食事の席は葬式のようだった、今は竜馬は豊の一番大き目の黒のTシャツと、緑のサーフズボンを履いている、豊のサーフズボンは豊が履くとひざ丈なのに、高身長の竜馬が履くとのび太のような半ズボンになっていた、そして食べ終わって、兄妹喧嘩の第二ラウンドが始まった
ジェニが兄を責め立て、追い詰める、そして明日会社に来て従業員に謝罪し、真面目に働けと詰め寄る
「俺の気持ちなんかわかりっこないだろうが、お前ともな、もうこんな家にいたくない、まったくバカげている、行くぞ!明美」
豊はジェニ達に背を向けた
「ちょっとっ!!逃げようったって、そうは行かないわよ!」
ジェニは急いで兄を追いかけた、一発兄を殴ってやりたかった
「もうお前とは話したくないと言ってるだろう!!」
豊が怒鳴る、都合が悪くなった兄お得意の逃げ口上だ
「兄さんはいつだってそうじゃないっっ!まったく兄さんときたら、いつでも被害者ポジションなんだから、大人になりなさいよ!」
「そういう性格なんだから仕方がないよ、でも思いやりがある所もあるよ」
明美がガムを膨らましながら冷静に言う、豊とジェニが目を丸くして彼女を見つめる・・・ジェニは思った、明美はなんだかつかみどころがなく、何事にも動じない女だ、そしていつまでも続く二人の口喧嘩を終わらせたのは竜馬だった
「ジェニ、明美さんを今晩ここに泊めてやってくれ、君のお兄さんは僕が預かるよ」
「ええっ!!」
ジェニは驚いて彼を見た、
―そんな・・・竜馬さんの家に兄が泊るなんて!私が泊まりたいのに!―
「まって竜馬さん!すぐに兄達を追い出すから!」
―お願い!!あの時の続きをしてっっ―
豊が竜馬を睨む
「なんだよ、お前は俺の保護者か?」
「竜馬さんにむかって失礼よ!(怒)」
またジェニと豊が睨み合う
「あたいはどこでもいいよ、眠れれば」
また三人が明美をじっと見た
「とにかく結婚前の男女が一緒にここに住むわけにはいかないだろ?豊は僕の家まで来るんだ、空いてる部屋はいくつもある、二人で話したいこともある」
「ケッ!!誰が行くかっ、そして俺を呼び捨てにするな!!」
「僕の家にはフォートナイトセブンディズ・シリーズ3があるぞ」
ピクリッと豊の肩が動いた・・・それは豊が夢中になっているオンラインゲームソフトで、初期のシリーズでは大学生の豊が、徹夜でヨドバシカメラに並んで手に入れた代物だ、そして今竜馬は、自分の家にその最新シリーズがあると言った
「・・・専用コントローラーは?」
「4台、冷蔵庫ビールもあるぞ」
兄の背中がウズウズしている、明らかに行きたいのだ、ジェニも泊まりたいけど兄がいるなら嫌だった、そして兄が連れて来た謎の女、明美を一人でこの家に置いておくのもなんだか気になる
一番に驚いたのは、どういう訳か竜馬は兄をコントロールするのがとても上手だ、兄は某コンピューター大学を首席で卒業した後、日本を代表するゲームセンター会社の技術者として就職したが、途中で父の会社が傾き、それを立て直すために、父の会社で働きだした
しかし・・・元々技術者の兄は、広告会社という畑違いの世界で悪戦苦闘していた、そしてかなりの天邪鬼だ、そんな兄を竜馬はまるで気が荒くなった手負いの犬を手なずけるみたいに、言う事を聞かせてしまった
渋々、玄関まで着いて来たジェニに向かって、竜馬が言った
「君は少しでも眠るんだぞ、起きて体調を見て、明日は会社を休んでもかまわないから、今日の事故の片付けは僕がやっておく」
黒Tシャツに、のび太並みの短さのハーフパンツ・・・素足に濡れた革靴姿の竜馬さんでも、とびきり素敵だった
「おい!!早く行くぞ!!」
豊が乗り込んだレンジローバーの窓をさげて竜馬を呼んでいる、ジェニは今や親友のように仲良くなりつつある兄と、竜馬を不思議な気持ちで見ていた
竜馬が意味不明に辛抱強く我儘な豊を思いやっているのだ・・・ジェニは彼を追いかけた、行かないでと懇願したかったけど・・・そこで思いとどまった
兄妹の諍いに巻き込んでしまったことについて・・・謝りたいし、竜馬と明美がいなかったら、お互い一歩も引かない強情兄妹は、血みどろの喧嘩を勃発させていたかもしれない
そして、ジェニをあのエレベーター地獄から救い出してくれたことも、彼にはお礼を言っても、言い尽くせないほどだ
しかし、こうして彼の顔をあらためて見たら・・・何も言えなくなってしまった
―いつになったら私達は結ばれるの?―
.:・.。. .。.:・
涙目で彼に訴えた、キュッと彼は両手でジェニの手を握った、彼の手の中でジェニの指が激しく震えた、彼がその指先もぎゅっと握りしめ、二人はしばらくお互いの目を見つめ燃え上がった
そして彼は両の手の平で、ジェニの頬を包みこんだ
「想いは同じだよ」
.:・.。. .。.:・
そう囁き、ジェニのおでこにキスをして、例のバターも一瞬でとろけさせる様な温かい笑みを浮かべてから、くるりと背を向け、豊が乗り込んで待っているレンジローバーに向かった
ジェニは彼の車が見えなくなっても・・・ずっとそこに佇んでいた
コメント
1件
ああ、第110話、読み終えました。兄妹ゲンカの描写がリアルで、特に豊がフォートナイトの話題で一瞬で心変わりするところ、思わず笑ってしまいました。竜馬さんの「想いは同じだよ」とおでこへのキス…あの場面、じんわりと甘くて、バターが溶ける笑顔っていう表現がぴったりでしたね。ジェニの「いつになったら結ばれるの?」という切ない願いが胸に刺さります。続きが気になります!