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あれ、、、この二国付き合ってるっけどうだっけ前話読み直してきます
朝。薄いカーテン越しに差し込む光で、目が覚めた。
隣を見ると、ロシアはまだ眠っている。だがその顔はいつもより穏やかで、昨夜の苦悶も吐き気も跡形もない。
……代わりに、俺の手首に鈍い痛みが残っていた。
袖をめくれば、赤黒く塞がりかけた傷痕。そこに触れた瞬間、昨夜の感触が一気に蘇る──肌を裂く歯、舌、そして吸い取られる感覚。
ドイツ「……っ」
思わず息が詰まる。けれど嫌悪ではない。むしろ胸の奥が熱くなる。
ロシア「……ん……」
小さな声と共に、ロシアが目を開けた。寝ぼけた顔で、俺を見て──次第に昨夜の記憶が戻ったのか、目を見開いた。
ロシア「……俺……」
ドイツ「覚えてるか」
ロシア「……あぁ。お前の血を、飲んだ」
その言葉に、静かな緊張が流れる。
ロシアは起き上がり、俺の手首を見て眉を寄せた。
ロシア「傷、残ってる……痛むか?」
ドイツ「大したことはない」
ロシア「……俺は、やっぱり駄目だな。止められなかった」
俯いたロシアの肩が震える。後悔か、恐怖か。
俺はその肩を掴み、言葉を重ねた。
ドイツ「後悔するな。俺が与えた。お前が望んだからだ」
ロシア「でも……」
ドイツ「お前、自分の顔を見ろ。昨夜よりもずっと楽そうだ」
ロシアははっとして、唇を噛んだ。
確かに、血色は良くなっている。瞳に濁りもない。
ロシア「……俺、元気になってる」
ドイツ「そうだ。だから間違っていない」
沈黙の中で、ロシアは俺を見つめる。その視線は昨夜よりも鋭く、だが拒絶ではなく渇望を孕んでいた。
ロシア「なぁ、ドイツ……俺、また欲しくなったら……」
ドイツ「言え」
ロシア「……いいのか?」
ドイツ「俺は別にいい」
そう答えた瞬間、ロシアの目が揺れた。恐怖と安心、そして確かに依存の色。
同時に、俺の中でも何かが確かになった。──もうこの関係は、普通の友達には戻れない。
ドイツ「……朝飯、作る」
気を逸らすように立ち上がる。だが背後から小さな声が追ってきた。
ロシア「なぁ……」
ドイツ「なんだ」
ロシア「昨夜、俺……お前のこと、美味いって思った」
足が止まった。背筋を冷たいものが走り、それと同時に胸の奥が熱で満たされる。
振り返ると、ロシアは照れも後悔もなく、真剣な顔で俺を見ていた。
台所に立つ。
卵を割り、ベーコンを焼く。油が跳ねる音が静かな部屋に響く。
まるで何もなかった朝の風景……のはずなのに、背後にいるロシアの視線が刺さって落ち着かない。
ドイツ「……なんだ」
ロシア「悪い。でも、確かめたいんだよ」
ドイツ「俺をか?」
ロシア「そうだ。昨夜のことが、夢じゃないって確認してる」
フライパンを持つ手が止まりそうになる。
夢なら良かったのか、それとも……?
ドイツ「……夢じゃない」
俺が答えると、ロシアは小さく笑った。だがその笑みには影があった。
ロシア「安心した。でも同時に……怖いな」
ドイツ「何が」
ロシア「自分が、また欲しくなるのが分かるから」
沈黙。ベーコンの焼ける音だけが間を埋める。
普通の会話をしようとしても、どこかで血の記憶に引き戻される。
朝食をテーブルに並べると、ロシアは素直に「いただきます」と手を合わせた。
その仕草に少し安心する。食事中はただの隣人、友人に見える。
だが、フォークを動かす合間にふと漏れた言葉が空気を変えた。
ロシア「……なぁ、ドイツ」
ドイツ「なんだ」
ロシア「このベーコン……赤いな」
ドイツ「……お前」
視線を上げると、ロシアは無邪気に笑っていた。冗談か、それとも本心か。
どちらにせよ、俺の心臓は嫌なほど高鳴った。
ドイツ「……血と比べるな」
俺が低く言うと、ロシアは「冗談だよ」と笑って肩をすくめる。
けれど、その瞳は笑っていなかった。
朝食を終え、食器を片付ける。
ふと、背後から腕が回された。ロシアだ。
ドイツ「……おい」
ロシア「ただのハグだ」
ドイツ「だが……」
ロシア「血の匂いが、まだ残ってる」
首筋に落ちる吐息が熱い。
俺は深く息をつき、腕を振りほどくことができなかった。
まるで、日常の中に「異常」を溶け込ませるように。
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