テラーノベル
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「大好きで……何よりも大切な人だから。そんな人をあんなふうに貶されるの、俺、どうしても腹が立つんです」
尊さんは何も言わず、ただじっと、射抜くような眼差しでこちらを見ていた。
「……なにより」
言葉を探すみたいに、唇を噛む。
「尊さんを守れない自分にも、腹が立って…情けなくて」
視線を落としながら、それでも心の奥底にある熱い塊を、正直に吐き出す。
「俺、尊さんと付き合ってから、ずっと守られてばっかりで」
「尊さんはいつも物怖じしなくて、強くて、どんな困難も跳ね除けるかっこいい人だなって……ずっと、憧れに近い気持ちで思ってました」
少し間を置いて、尊さんがぽつりと、自分に言い聞かせるように返す。
「……最近の俺は、お前の想像よりずっと、かっこ悪いかもしれないな」
その自嘲気味な一言が、胸に鋭く刺さって、思わず弾かれたように顔を上げた。
「そんなこと、ないです……っ!」
勢いのまま、言葉が溢れる。
「でも……尊さんから過去のことを聞いて。成田さんを前にして、本当は怖いはずなのに…それなのに俺のことばっかり心配して、矢面に立とうとする尊さんを見て……」
声が、熱を帯びて少しだけ詰まった。
「……今度は、俺が守る番なんじゃないかって、思えてきたんです。強くならなきゃって」
尊さんの視線が、微かに揺れる。
「だから……自己満かもしれないですけど」
震えながらも、逃げずに、はっきりと言い切った。
「少しでも……尊さんのこと、俺が守りたいんです。支えたいんです」
その場に、静かな沈黙が落ちる。
昼時の店の喧騒が遠のき、世界には俺と尊さんの二人しかいないような錯覚。
尊さんはすぐに何かを返すことはせず、ただじっと俺を観察するように見つめていた。
けれど、そこにあるのは冷たさではなく
まるで俺の本気度を測り、そしてその熱を確かめるような、慈しみに満ちた眼差しだった。
やがて、尊さんは深く、長く、溜め込んでいたものを全て吐き出すように息をついた。
「……お前」
低く、静かな声。
「そんなふうに、考えてくれてたのか」
呆れでも困惑でもない。
むしろ、少しだけ声が掠れていることに気づいて、俺の心臓が跳ねる。
「怖かったはずだろ。あいつに無理やり手まで踏まれて、あれだけ圧をかけられて。普通の奴なら、関わりたくないと思うはずだ」
そう言われて、あの日手の甲に感じた痛みを思い出し、胸の奥がきゅっと縮む。
「それでも俺のことを優先して、今度は守る番だなんて……。強いな、恋は」
その一言が、承認の証のように胸の深くにまで落ちた。
尊さんはゆっくりと、テーブルの下で俺の手を握ってきた。
力強く掴むというよりは、壊れ物を扱うように、けれど確かな体温を伝えるように包み込む掌。
コメント
1件
恋くんかっこよい、ときめいちゃうわドキ(〃° □ °〃)ッッ…
ねむ