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人気が上がっていく中で、あたしは、「七瀬リオ」って、誰なんだろう?と、いつもぼんやりと思うようになった。
売れるために、自分の中に「七瀬リオ」という虚像のアイドルを作り上げた結果、あたし自身が七瀬リオがいったい誰なのか、まるでわからなくなっていた。
カメラを向けられると、自然と笑顔を作っている自分がいた。
あたしではないあたしの顔で、あたしではないあたしのしゃべり方で、カメラの前でただニコニコと笑っていた。
その人は、誰なの?
と、画面に自分の姿を見つける度に思った。
カメラに笑いながら話す、その自分のそばには、それを冷めた目で見つめるもう一人のあたしの姿が、ずっと変わらずにあった。
ファンの前にだけ、存在する”あたし”
メイクを取って、衣装を着替えてしまえば、もう七瀬リオなんていう女の子は、どこにもいやしなかった。
いもしないリオしか、みんなが見てはいないことに、あたし自身は耐えられなかった。
すぐそばに本物のあたしがいるのに、どうして誰も見てくれないの?
いつからかあたしはそう思うようになり、次第に自分の創り出した虚像のアイドルに、自身が押しつぶされて、売れれば売れるほど息苦しく感じるようにもなっていった……。