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はぁ、と小さいため息が聞こえる。遥人は観念したように口を開いた。


「結子さんって前の人ともこんな感じだったのかなって……なんていうか、嫉妬……みたいな?」


前の人って、貴文のこと?


「だから、思ったこと口にしてしまう俺の悪い癖なんですって。はい、怒ってくださいよ」


ぷいっと視線をそらす。

なんだかそれがとても子供っぽくて笑えてしまう。だけど遥人でも嫉妬するんだっていう意外な驚き。いつも淡々としているから、そういうことにあんまり興味ないのかなって思ってたから。


「自分の悪い癖、ちゃんとわかってるなら偉いじゃない」


「結局言っちゃいましたけど」


「バカだなぁ、遥人は」


本当にバカだよ。そんなことで嫉妬なんかしなくていいのに。同じ恋愛なんてあるわけないじゃない。遥人は貴文じゃない。全然違うもの。そう、全然違うのよ。


繋いでいる手をぐいっと引っ張った。少し前のめりになった遥人のコートの襟をガシッと掴む。近づいた彼にちゅっとキスをした。


「遥人だけだよ」


「……」


「私が甘えたくて甘やかしてあげたいのは遥人だけ。だから心配しないで」


「うん」


「それにさ、遥人入社して六年でしょ。毎日のように私と顔つき合わせてるじゃない。前の人と付き合ったのは五年だもの。遥人の勝ちよ」


五年付き合ったって、毎日会っていたわけじゃない。それに老夫婦みたいな落ち着いた付き合いだったから、実は甘えたりしたことがなかった。彼に合わせていたのか大人ぶっていたのかよくわからないけど、きっと本音を出せていなかったんだろう。


「手を繋いで歩くのも初めてなの。こういうこと、したかったんだよね」


ぎゅっと握ったら、さらに強く握り返された。それがまた嬉しい。そんな気持ちになったのも遥人が初めて。


でも、ああ、そっかって納得した。貴文が新しい彼女と手を繋いで見たこともないような笑顔で歩いてた。あのとき、貴文も同じ気持ちだったのかも。貴文もこういう恋愛、したかったんだよね、きっと。


「私、遥人とはいろんなことしたい」


「しましょう。とりあえず今日はラーメンデート」


「ラーメン屋さんも初めてなの。楽しみ」


手を繋いでコートのポケットの中、片方の手は手袋をひとつずつ。

少し見上げて視線が交わると、優しい笑顔でこたえてくれる。

とてもあったかくて幸せ。


私、遥人を好きになってよかった。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

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ユーザー

あっ、こっちに書けば良かったよ。何回書いてもええか。おめでとうございます~。

ユーザー

最高! ありがとうございました おつかれさまです!

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