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【めーや視点】
アベレージは、泣かない。どころか、弱音ひとつ吐かないし、笑顔以外の表情もほとんど見せない。
施設にはお金が無くて、俺たちは決して満足な生活を送れているわけじゃなかった。だからこそ、アベレージのそれが無理をしているように見えた。
アベ「無理?なにが?みんなで色んなことできて楽しいじゃん!」
最初は、脳天気なやつだな、としか思わなかった。でも次第に、俺はアベレージが怖くなってきた。
病死のニュースが流れた時は
アベ「苦しみ続けるより死ぬほうが楽だよね〜、よかったねぇ」
強盗が捕まったというニュースが流れた時は
アベ「自分の中で楽しいことしただけなのに捕まっちゃうんだね」
俺はその時、改めてアベレージのことを脳天気なやつだなと思った。
俺も多分、倫理観はどっか飛んでるけど、こいつの方がタチが悪いんじゃないか?
アベレージの全てに対してプラスに、楽しむ思考は、貧相な暮らしに疲弊した他の子にとって格好のサンドバッグだった。
雑用は全部アベ任せ、酷い時には唾を吐かれ、それでもアベレージは笑っていた。
たぶん、痛いとか苦しいとか、そういう感情は二の次で、人に尽くせるのが楽しい、とか、人のためになっている、とか考えてるんだと思う。俺には到底理解できないけど。
あの日、アベレージが泣いた。
この施設はお金が無い。病気になった子供を入院させることも出来ないほどに。だからこそ、義務教育が終わった子供は施設を出る。俺は中三になったタイミングで知らされたから分かっていたが、アベレージは知らなかったらしい。
今まで、中学を卒業するまでこの施設に居続けた子供はいなかった。俺が初めて、のはずだった。
泣きじゃくるアベレージを見て、かわいそう、と他人事のような感情をおぼえた。
昔から、人に可哀想だと思うことが好きだった。好き、と言うとなんか違う気もするけど、可哀想な人が生きているのを見ると、自分も生きていていいんだと思える。
それに、誰にもなんとも思われない死体に同情を抱くことだってある。病気で死んだ子供に、アベレージは
アベ「苦しむ前に楽になれて良かったね」
と言ったが、俺はそうは思わなかった。苦しめば、心配される。もっとぐちゃぐちゃになって死ねば、もっと悲しまれる。
安らかに眠るように死んだ死体より、ぐちゃぐちゃで、誰が見たとしても死んだとわかるような死体の方が、可哀想に見えて、悲しむだろう。
人を殺したいと思ったことは無いけど、誰かを殺さないと行けなるなるのなら、俺はぐちゃぐちゃにして殺すだろう。
物心着いた瞬間からこんな性格だった覚えは無い。
ま、なんかあったんだろうな、と思うけど覚えてないから考えなくていいや。
俺じゃない人が可愛そうであればあるほど、俺に生きる意味が生まれるんだ。
アベ「めーやさんっ!」
めーや「ん?」
アベ「いや、なんかぼーっとしてたんで」
めーや「あ〜、アベ飴持ってない?」
アベ「えっ、飴ー?」
プテ「これでいい?」
めーや「ありがと」
昔のこと思い出すのやーめた、なんか苦しくなってきた。
こんな思考してる俺が、多分1番可哀想なんだって、人を下に見れるような人間じゃないんだって。