「……なにコレ?」
あまりにもの光景に咫穏(シオン)は絶句した。
数えきれないほどの空き瓶が散乱し、その張本人たちが畳の上で死屍累々となって伸びている。
「誰が介抱すると思ってるんだ──」
琉誓は大の字で寝っ転がり気持ちよく眠っていた。
「……ぐー…………」
「このバカが」
苛立ちを隠せず思いっきり“兄弟”の鳩尾(みぞおち)を踏んづけた。
琉誓は飛び起きのたうちまわる。
「……うぅ……」
「さっさと起きて。この現状を説明してほしいんだけど」
琉誓から連絡が来たとき、電話越しですでに出来上がっているなと確信していた。
(嫌な予感が的中だよ)
「まさか踏んで起こされるなんて、思わなかった……」
「想像以上に空き瓶が床を埋め尽くしてるなんて、私も思わなかったわ。
それに──」
チラッともうひとり伸びていた方に視線を向けた。
「なんで紅紫くんもいるの?」
「ボクが呼んだから」
「……まったくもう」
額を押さえ思いっきり吐息をする。
「かなり盛り上がっちゃってさ♪」
「飲みすぎ」
「楽しかったぁ〜」
陽気な笑顔を浮かべる。
「……本当に中忍?」
「中忍だよ〜。任務中のときはさすがに飲まないから」
「当たり前でしょ」
「それよりも紅紫くんを布団に寝かせないとね〜」
その場で立ち上がり足がふらつく。
(大丈夫なのか?)
「シオンちゃんはボクの部屋に行って布団を敷いてきて〜」
「……はいはい。あとで空き瓶も片付けるからね」
「りょうかーい★」
布団を敷くため咫穏は一足早く居間を出る。ふらつきながらも琉誓は泥酔した紅紫を背負った。
「酒くさ〜。まぁあんだけ飲めば仕方ないかぁ」
鼻歌まじりでその場をあとにした。
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