テラーノベル
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ニンルシーラの空気は、やはりどこか澄んでいた。
エルダン駅から馬車でしばらく走り、見慣れた城門が視界に入った瞬間、リリアンナの胸が大きく跳ねる。
――ヴァン・エルダール城。
離れていた期間はそんなに長くなかったはずなのに、もう帰ってこられないと思ったりしたからだろうか。
懐かしさに似た感情が、じわりと胸に広がった。
馬車が止まると同時に、邸外まで出迎えていた家臣たちが一斉に頭を垂れる。
「お帰りなさいませ、旦那様。お帰りなさいませ、リリアンナお嬢様」
懐かしい面々からのその声に、思わず頬が緩んだ。革鞄を持つ手にキュッと力がこもった。
ランディリックはただ黙って皆を見回し、小さく頷く。
「荷は手筈通りに。ディアルト、後の指示は任せる」
短くそう告げると、控えていた従者が一礼して動き出した。
後方では、幌馬車から次々と旅箱が降ろされ、兵たちが手際よく運び込んでいく。
リリアンナの傍らにはナディエルがそっと寄り添い、クラリーチェも少し離れて様子を見守っていた。
「ただいま、戻りました!」
そう返した瞬間――。
城門の脇から、ひときわ大きな影が現れる。
「……っ、ライオネル!」
革鞄を取り落とすようにして、リリアンナは思わず駆け出した。
ダップルの毛並みを揺らしながら、愛馬がこちらへ顔を向ける。
鼻を鳴らし、一歩、また一歩と近づいてくるその姿に、胸の奥が熱くなる。
リリアンナは、たまらずその首筋に腕を回した。
「会いたかった……」
温かい。
生きている温もりが、腕の中にある。
そのすぐ後ろで、手綱を引いていた男が、静かに口を開いた。
「寂しそうにはしていましたが……いい子でしたよ」
短く、それだけ。
ライオネルに頬を寄せたまま見遣ると、カイルの姿があった。
「カイル……!」
リリアンナがその名を呼ぶと、彼はわずかに視線を逸らし、それからいつもの調子で言う。
「リリー嬢の帰還を察したライオネルが待ちきれないって騒ぐから」
間を置いて、
「……連れてきちゃいました」
相変わらず馬第一主義が滲む言い方に、リリアンナは思わず笑みをこぼした。
「ありがとう、カイル。ライオネルにすぐ会わせてくれて……本当に嬉しい!」
そのやり取りを、少し離れた場所からランディリックが見ている。
ナディエルはその背後で静かに控え、クラリーチェもまた口を挟まず見守っていた。
ランディリックは何も言わない。
ただ、じっと。
紫水晶の瞳が、カイルがリリアンナを〝リリー嬢〟と呼んだ瞬間だけ、ほんのわずか、細められた。
とても久々の更新になってしまいました。すみません!
やっと! 水面下で取り組んでいたことが(恐らくは今度こそ)終わったので、これからはまた毎日更新していけたらと思っています。
よろしくお願いします🥰
鷹槻れん
(2026/03/22)
コメント
1件
やっと帰って来れたね! 更新有難うございます!待ってました!
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