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妖狐のおふとん
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友だちにドッチボールの約束を取り付けようと待っている間に、迪くんが教室に戻ってきた。あたしがいるときに本に気付かれたら誤魔化せるのか不安になったけど、幸い迪くんは、先生に教科書の内容を質問していた。
「お待たせ澪ちゃん!かーえろ!」
友だちが駆け寄ってきたので、あたしもランドセルを背負う。
ぺちゃくちゃおしゃべりしながら(かつドッチボールの約束もしながら)あたしたちは歩いていく。誕生日についての愚痴も話そうとしたとき。
「あのね、あたし、今日誕生…」「あっ、おーい!」
突然、一緒に帰っていた友だちが走り出した。前方を、クラスメートの女子が歩いていた。さっきまで話していた子が、あたしを置いて帰って行った。
「…はぁ」
初めてじゃない。あの子は友達が多いし、あたしはなにも悪くない…
「ねぇ、澪ちゃん」
後ろから声をかけられた。
「何っ…あ…!」
苛立ちのにじむ返事を受け止めたのは、迪くんだった。右手に、赤い絵の具がはみ出した本。生唾を飲み、頭の中に言い訳を浮かべる。知らんぷりして、問いつめられても認めない。よし!
「何?あたしに用?」
迪くんは、少しうつむいてため息をついた。そして、あたしの目をまっすぐ見据える。
「澪ちゃん。君はこんなことをするような人じゃないでしょ?君は、本当はもっと素敵な人だよ」
くそ!あたしがやったってバレてるのかよ…!あたしは、迪くんを置いて走り出した。
「澪ちゃん」「黙れ!」
くやしい。くやしい!なんであんなやつに責められなきゃいけないの?あたしの何を知ってるっていうの!?
家の扉の前にたどり着いた。息を整えつつ、中に入る。あ、鍵置き場に鍵戻さなきゃ。
苛立ちを落ち着かせようと、ベッドに向かって布団をかぶった。
こんなことって、あたしだけが悪いみたいに。あんたが悪いのよ。あたしの人気を奪うから。告げ口なんかして…
あれ?迪くん本人が先生に言いつける姿は、見たことも聞いたこともない。ドッチボール中にあたしを応援してたのも、もしかして本心?
「…本当はもっと、素敵な人…」
心臓がやたらと音を立てる。迪くん。迪くんのことを考えると、心がざわざわする…この気持ち、なに…?
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