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第九話→まきぴよさん
あれから1時間も経たず、俺と阿部ちゃんは揃って目が覚めた。
隣では岩本くんと、見慣れた姿のしょっぴーが眠っている。阿部ちゃんも自分の姿を確認して、戻ってる!と静かに喜んだ。
「めめ、お風呂」
「うん」
悪夢の露天風呂に迷いなく足をつける阿部ちゃんは、やはり昨夜ここで溺れた事を忘れているのだと確信したのだが。
「昨日は、めちゃくちゃな一日だったね。子どもになるし、死にかけるし」
そう話題を振られて、ドキッとした。
「覚えてるの?ここで溺れたこと」
「?…覚えてるよ?」
「あんな事があったのに平気そうだから、忘れてるのかと」
阿部ちゃんは『んー』と間を置いてから、話し出した。
「溺れた後、 知らない景色とか人の夢をたくさん見て。女将さんの話してた伝説に、実は間違いがあるんじゃないかって思い始めたんだ」
「間違い」
阿部ちゃんは断片的な夢の内容を元に自分なりの真実を推測して聞かせてくれた。
海に子どもを落としたのは神様の意志でなく、夫の入れ知恵。
夫は村に住む別の娘に手をつけて、神様とその子どもが煩わしくなった。
子どもたちが亡くなって、神様も気がふれた事にして命を奪い、石に封じたと嘘をついた。
神様は自分の悲しみと子どもたちの無念を晴らすために、男の血を継ぐこの土地で水難をもたらし続けていたのではないか……
「そうなると、随分と捉え方が変わるね」
「うん。それに起きる前、女の人と二人の子どもに『ありがとう』って言われる夢を見たからなんか確信あって。しかも、子どもたち双子って言われてたけど、小さい頃の俺と翔太にそっくりでさ。さすがにできすぎかなって思うけど」
だからもし、神様が真実を知って欲しかったんだとしたら溺れた事も怖くなくなった、と話す阿部ちゃんは相変わらずのリアリストだ。
それからしばらく露天風呂を堪能し、ふと、忘れかけていた話を思い出して阿部ちゃんに肩をくっつける。
「どしたの」
「阿部ちゃん的に、幸せを見せつける話はどう思う?」
「あれは女将さんの言う通り、神様の親心…って、めめ」
「ん?」
「今、変な事考えてない?」
横目で睨まれたので、阿部ちゃんの身体を持ち上げて膝に乗せ対面でぎゅっと抱きしめる。水中なので抵抗されたとて、成人男性も軽々持ち上がった。
「ちょっと!」
「真実がどうであれ、俺ほんとに心配したんだから」
風呂で熱くなった首に口づける。それから、目の前の鎖骨を甘噛み。
阿部ちゃんが吐息を漏らす。
「ねぇ、だめ…こんなとこで」
「だめじゃないの」
神様も悲しかったんだろうけど、俺だって不安だったからこれくらいのワガママは聞いてもらう、と頑固に押し通した。
部屋の方からアラームの音がする。
「二人が起きる…」
「それなら大丈夫、岩本くんはほぼ一睡もしてないから多分起きないししょっぴーもこんな時間から活動しないだろうから」
でも、と言い出しそうな唇を奪って見つめると、阿部ちゃんはついに観念したように溜息をついた。
「ん、ん…っ、ふぁ…」
「声出していいのに」
「やだ…っあ」
部屋は一棟だけの離れだが、露天で声や姿が誰にも聞かれない、見られない保証はないのでさすがに屋内風呂に移動した。
今、阿部ちゃんは床に四つん這い。ボディソープを塗りたくって全身ぬるぬるの中、硬く主張する胸と阿部ちゃん自身がいやらしくて可愛すぎる。後ろを解しながら、あちこち触るとその度に腰がびくっと跳ねた。
「挿れるよ?」
「はぁ、はぁ…きて…」
最初はそのままバックで、馴染んできたら騎乗位に。
阿部ちゃんが真っ赤になって恥じらっているけど、下から優しくとん、とんと突くと刺激が足りないのか自分で動き始めた。
「あ、あ、んっ…あぁ…」
「ふふっ、声出ちゃってるね。すげぇエッチ」
お風呂で、すぐそこに二人いるとこで、こうやって俺とするの、気持ちいいね?
身体を起こして耳元でそう囁くと、中がきゅんと締まった。
「言わ…ないで…ぁ」
「そう?」
そのまま抱きしめて下から突く。阿部ちゃんも夢中で動く。
身体が密着して、中途半端に泡立ったボディソープが粘液質の音を立て、時々胸が擦れて阿部ちゃんが情けない声を上げる。
「ひゃ!」
「ほんと胸弱いよね、神様の子とそんなとこまで似てたりして」
「ばか…あんっ」
「ほら、腰止まってるよ?ちゃんと動いて」
煽られるままに阿部ちゃんが肩にしがみついて動き始めた。抑えているようで、恥じらっているようで、実のところ快楽に正直で貪欲な所がたまらないなと思う。
「あ、あ、もう、いく……」
「はぁ、俺もイキそう。一緒にいこ?」
「あんっ、めめ、めめ…好き…」
「俺の方が好き」
世界の誰より、それこそ子どもを思う神様よりも。
声を抑える事も忘れて夢中で喘ぐ阿部ちゃんにキスをして同時に果てたけど、もうどれが精液でどこからがボディソープなのかわからないくらいぐちゃぐちゃだった。
シャワーで流して身体を拭いていたら『あ、あっちに二人いたんだった』と思い出す。
それに気付いたのも、何やら声が聞こえたから。
真っ赤になる阿部ちゃんに軽くキスをして小声で誘う。
「どうせ今出られないんだから、もう一回しよ?」
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コメント
14件
覚えてるよ?という透かし方が阿部ちゃんぽくて好き💚
解決したのは良かったけど まきみちがそれぞれ推しを書くのは 凄いね🤣 好きだけども💖大好物だけども🤣🤣