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さすがにいいね少なくて凹んだので再喝させてください
いいねを恵んでください…😭
いいねは投稿の活力なのに…。゚(゚´ω`゚)゚。
。⚪︎夜が明けるまで手を繋いで
窓の外が、じわじわと不気味な黒に染まっていく。
冬の日は、驚くほどに落ちるのが早い。
「あー……クソ、もうこんな時間かよ」
時計の針はまだ五時を回ったばかりだというのに、オフィスの窓から見える景色はすっかり夜の帳が下りていた。
デスクの上の書類を片付けるオレの指先が、微かに震え始める。
胸の奥からせり上がってくるのは、あの忌まわしい記憶。冷たいコンクリートの感触と、身体中に這っていた、汚い男の手。
呼吸が浅くなるのを自覚して、オレは強く奥歯を噛み締めた。
大丈夫だ、ここは会社だし、まだ電気だって煌々とついている。
そう自分に言い聞かせても、一度始まった動悸はなかなか収まってくれない。
(……冬弥が、隣にいてくれてよかった)
視線を横に向ければ、いつもと変わらない冷静な相棒がオレを見つめていた。
冬弥のその真っ直ぐな瞳を見るだけで、喉の奥に張り付いていた恐怖が、少しだけ解けていくような気がする。
あいつはオレの過去も、この情けない弱みも全部知った上で、決して否定せずに寄り添ってくれる。
「わりぃ、冬弥。ちょっと待たせたか?」
バッグのジッパーを閉めながら、オレはわざとぶっきらぼうな声を出す。
弱っているところを、これ以上あいつに見せつけたくないっていう、オレのくだらないプライドだ。
それでも、オレが早くここから、あの暗い夜道へ踏み出さなきゃいけない現実は変わらない。
一人じゃ一歩も歩けなくなる暗闇を、こいつと一緒に歩くために、オレはコートを深く羽織り直した。
「俺も来たばかりだ。…ただ、冬は暗くなるのが早いな。」
「あぁ……本当に、それだけは毎年慣れねぇわ」
コートの襟を少しだけ引き上げながら、オレは小さくため息を漏らした。
オフィスの自動ドアが一歩ごとに近づいてくるのが、今はひどく恐ろしい。
ガラスの向こうに広がる景色は、完全にあの忌まわしい黒に支配されている。街灯の光さえ、オレにとってはあの日の路地裏を思い出させる不気味なスポットライトにしか見えなかった。
(外、めちゃくちゃ暗いじゃねぇか……)
無意識のうちに、冬弥のすぐ隣へと足が動く。
少しでも距離が空けば、あの暗闇に引きずり込まれてしまいそうな錯覚に陥る。
肩が触れ合うほどの距離に冬弥がいてくれることで、ようやく引きつりそうになる呼吸を繋ぎ止めていられた。
情けねぇよな、大人にもなって、たかが暗闇にここまで怯えるなんて。
心の中で自分を罵倒しても、体の震えは止まらない。
「……悪い。……すぐ、行くから」
冬弥がオレの欲しい言葉をくれるのを、どこかで期待している自分がいる。
その優しさに甘えてばかりじゃダメだって分かってるのに、差し出される救いの一手を、オレの心は必死に求めていた。
「手、繋ぐか?」
「……っ、」
喉の奥で、短い息が詰まった。
冬弥の口から出たその言葉が、今のオレにどれだけ救いになるか、あいつはちゃんと分かってて言ってる。
(手、なんて……ガキじゃねぇんだから。オレは、男で、もう大人で……)
頭の中の理性が、そんなの格好悪いだろって必死にブレーキをかけようとする。
だけど、ポケットの中で汗ばみ始めたオレの右手の指先は、恐怖で今にも凍りつきそうだった。
視界の端に映る、オフィスの外の真っ暗な街並み。あそこへ一歩踏み出せば、またあの日の感覚がオレを襲うかもしれない。
そう思ったら、プライドなんて一瞬でどうでもよくなった。
「……あー、クソ。……わりぃ、頼む」
ぶつぶつと文句を溢すように呟きながら、オレはポケットから右手を引き抜いた。
自分から手を伸ばすのは、やっぱり少しだけ恥ずかしくて。
差し出された冬弥の手を、すがるような気持ちで、だけど少し強めに握りしめる。
男同士で手を繋いで歩くなんて、周りから見たら変かもしれないけれど、今のオレにはこの温もりだけが、暗闇の中で正気を保つための唯一の命綱だった。
「それにしても、今日の先輩は酷かったな。自分のミスを彰人に押し付けるなんて」
「……あぁ? あいつのことか。ホント、思い出しただけでも胸クソ悪ぃわ」
冬弥の手を握ったまま、オレは吐き捨てるように言った。
昼間のオフィスでの出来事が脳裏に蘇り、恐怖とは別の、苦い苛立ちがふつふつと湧き上がってくる。
(自分の立場が悪くなったら、すぐに後輩のせいかよ。やってらんねぇよな……)
あいつがオレに書類を押し付けて、周囲に言い訳を並べ立てていた時の顔が、今でも鮮明に思い出せる。
言い返してやりたかったけれど、会社の人間関係とか、これ以上面倒なことにしたくないっていう思いが働いて、結局はオレが泥をかぶる形になった。
あんな理不尽な仕打ち、まともな神経の奴がすることじゃねぇ。
「まぁ、オレがもっときっぱり断りゃよかったんだけどよ。……でも、冬弥がそうやって怒ってくれるだけで、なんか少しスッキリしたわ」
繋いだ手に少しだけ力を込めながら、オレは冬弥の横顔を見つめた。
あいつは自分のことみたいに、真っ直ぐな目でオレのために憤ってくれている。
会社の理不尽な人間関係にすり減った心が、冬弥のその一言だけで、じんわりと温かいもので満たされていくのが分かった。
「あ…そういえば、明日、帰りが遅くなりそうなんだ。だから、彰人は早く上がらせてもらえ」
「……は? 明日、遅くなるって……」
冬弥の言葉が頭に染み込んできた瞬間、繋いでいた手のひらが、急激に冷たくなっていくのが分かった。
(冬弥がいない……? 明日の夜、オレ一人で帰らなきゃいけないのか……?)
視界の端にある街灯の光が、急に歪んで見える。
頭の奥がツンと痛くなり、心臓が嫌な音を立てて跳ね上がった。
会社には無理を言って、夕方には上がれるようにシフトを組んでもらっている。だけど、冬の夕方はもう、夜と変わらない暗闇だ。
一人であの薄暗い道を歩くところを想像しただけで、足の震えが止まらなくなる。あの路地裏の、男のニヤついた顔が、暗闇の中から這い出てくるような錯覚に襲われた。
「っ……あー、いや、気にするな。仕事なら、しょうがねぇだろ……っ」
引きつりそうになる呼吸を必死に隠しながら、強がりの言葉を絞り出す。
冬弥に迷惑をかけたくない。あいつの仕事を邪魔するわけにはいかない。
そう自分に言い聞かせるけれど、繋いだ冬弥の手を握る力は、オレの意志に反してどんどん強くなっていった。
「…遅くなる前に、夕方のうちに帰ってくれ。そうしたら怖くないと思うから」
「……冬弥」
その言葉が、耳の奥からじわじわと心臓に染み渡っていく。
あいつのどこまでも優しい声が、今にもパニックを起こしそうだったオレの頭を、ゆっくりと冷ましてくれた。
(あいつ、オレのそんなことまで考えて……)
夕方のうちに帰れ、か。
確かに、まだ完全に日が落ちきる前の薄暗い時間なら、会社を出てすぐに駅へ駆け込めば、ギリギリ一人でも耐えられるかもしれない。
冬弥はオレの恐怖を、決して馬鹿にしたりしない。
ただこうして、オレが少しでも楽に息ができるような道を、一緒に探してくれるんだ。
「……あぁ。そうだな。そうさせてもらうわ」
繋いだ手に込めていた無駄な力が、すっと抜けていく。
喉の奥のつかえが取れて、ようやくまともな呼吸が戻ってきた。
まだ外の闇は深くて、相変わらずゾッとするほど恐ろしいけれど。
冬弥がくれたその一言のおかげで、明日の見えない恐怖に、少しだけ立ち向かえるような気がしていた。
「…一緒に帰れなくてすまない」
「……おい、なんでお前が謝るんだよ。馬鹿じゃねぇの」
オレは繋いだ手を少しだけ強く握り直して、冬弥の言葉を遮るように言った。
こいつのこういう、すぐに自分のせいにして背負い込もうとするところは、昔から本当に変わらない。
(謝らなきゃいけないのは、オレの方だろ……)
いい大人にもなって、一人の夜道すらまともに歩けない。
お前の仕事の予定を狂わせそうになって、いらない心配までかけて。
情けなくて、申し訳ないのはオレなのに、冬弥はいつだってオレの欲しい言葉をくれて、最後にはこうして自分を責める。
「お前は自分の仕事をちゃんとやってこい。オレは、夕方のうちにさっさと帰って、家を明るくして待ってるからよ」
少しだけぶっきらぼうに笑ってみせる。
まだ胸の奥には明日への不安が渦巻いているけれど、冬弥にこれ以上の荷物を背負わせたくなかった。
オレの恐怖にどこまでも寄り添ってくれる相棒が隣にいる。それだけで、十分すぎるくらい救われているんだ。
「…怖くないか?」
「っ……怖くねぇっつったら、嘘になるけどよ」
冬弥にまっすぐ見つめられて、オレは誤魔化すのを諦めて視線を落とした。
やっぱり、こいつには全部見透かされてる。
(怖いよ、めちゃくちゃ怖い。一人であの闇の中を歩くなんて、想像しただけで吐き気がする)
あの日、路地裏の暗闇で男に掴まれた腕の感触が、今も皮膚の裏側に張り付いているみたいだ。
明日、冬弥のいない夕方の道を歩く時、オレはまたあの絶望を思い出すんだろう。
だけど、心配そうな冬弥の顔を見ていたら、これ以上あいつを不安にさせたくないって強く思った。
「でも、お前が夕方のうちに帰れって言ってくれたろ。だから大丈夫だ。……お前がオレのこと考えて、そうやって言ってくれた言葉があるから、乗り切れる」
握りしめた冬弥の手のひらの温もりを、記憶に焼き付けるように力を込める。
明日、一人で暗闇に飲み込まれそうになったら、この温もりと、冬弥がくれた言葉を絶対に思い出す。
だから、そんなに申し訳なさそうな顔すんな、と心の中で願いながら、オレは冬弥の手をしっかりと握り続けた。
【東雲彰人】
Age:
大人。若め。
Occupation:
会社員。音楽の会社ではない。
About the Akito:
幼い頃と学生時代に一度ずつ、強姦にあった。
二回ともおじさんに騙され、路地裏に連れて行かれてその場でレイプされた。
そのせいで、たとえ街灯のある夜道ですら恐れてしまうほど、極度の暗所恐怖症に。
寝る時も電気はつけっぱなしにするほど。
冬弥と相談し、朝早くから働き、暗くなる前に帰れるよう掛け合った。
打たれ弱い。
【青柳冬弥】
Age:
大人。若め。
Occupation:
会社員。音楽の会社ではない。
About the Toya:
彰人とは高校生になってから出会った。
その時から彰人のトラウマについては理解している。
もしものときのために、彰人は知らないがGPSを付けている。
彰人に対する愛が重く、それを彰人も冬弥も認知していない。
歪みかけた愛。
next…♡50(到達しなくても気分で出すかも)
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